第84話「本物」の差身君最強説wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
竜巻のように全てを蹴散らしながら僕に向かって駆け込んでくるガルム。
そのガルムに向かって撃ち放たれた戦車をも爆破する現代兵器RPG、沙織が言うところのリア充パーフェクト殺し。
そんなに命中率が高くはないリア充パーフェクト殺しが動く標的であるガルムに当たるかどうか心配だったんだけど、運命の女神は僕に微笑んでくれた。
発射したリア充パーフェクト殺しの弾をガルムは敵とみなしたのか、逆にガルムは弾に噛みつきその動きを止めたんだけど、それと同時にガルムの口の中でリア充パーフェクト殺しの弾が物凄い轟音とともに炸裂した!!!!
ガルムの首から上は全て吹っ飛び、しばらく体だけが苦しそうにバタついていたんだけど、それもそんなには長くは続かなかった。
やった…また何とかなった…また生き延びた…
そういや、犬ってボールとか投げると本能的に追いかけて行って咥えてくるよね…
偶然にもあの原理が働いたんだな…
僕は小机城阯公園の斜面を駆け下りると、全く動かなくなったガルムのそばに行った。
あー、だけどこれ、ガルムには悪いことしたなあ。
ガルムも急に呼びだされて、しかも呼びだされた理由が沙織が分けわからないことを言ったからで、それで殺されたらたまったもんじゃないよなあ…
でもこうしないと、逆に僕が死んでたんだよな…
しかし天使は何なんだ?
実際に魔獣を召喚してるし、もはやオカルトマニアの範疇を超えて魔術師だよな。
かわいい女の子だし、魔女というべきか。
かなり急角度な斜め上からやってきた新たなる「本物」だね。
赤いネコのキグルミを着た天使も全く表情を変えずガルムの元へやってきた。
天使は首が吹き飛んだガルムの体をなでてあげた。
表情は変わらないんだけど、優しいところがあるんだね。
「ガルム、ハウス」
天使がそう言って魔法陣の方を指差すと、ガルムの全てが蒼い光と化し魔法陣の中へ飛んでいき、そして消えた。
天使にも悪いことしちゃったな。
ガルムは天使の友達だったんだもんな。
うちの飼いねこも、目の前で首から上が吹っ飛んだら、めっちゃショックだもんね。
僕は天使のそばに近づくと、ぽんと肩を叩いた。
「ごめんね、天使。ガルムを殺しちゃって…」
僕がそう謝ると、天使は感情が感じられない目で僕を見上げた。
「弱肉強食。ガルムの方が弱かった。どうして差身君が謝るのかわからない」
天使は僕の気持ち、いや自分の気持ちすら見えていないように思えた。
でもそれは決して残酷なものではなくって、非常に純粋なもののように感じる。
小さな子供が永遠にこの世の中が変わることなく、自分自身もずっと子供のまま生きていくように感じてしまうのと似ている。
まさに確固たる永遠性の中で天使は生きているように思えた。
「そうだね…僕は天使が好きだけど、天使のことがまだ良くわからないし、天使も僕のことがよくわからないと思うんだ。だからこれから少しずつ色んなことを話して、今日みたいに殺しあうようなことをしないようにしよう。僕は天使と仲良くしたいんだ」
僕は自分で考えていることがうまく伝わるかどうかわからなかったんだけど、今はそう言うのが精一杯だった。
天使はただじっと僕の顔を見上げていた。
「私も差身君と仲良くなりたい。初めて他人と仲良くなりたいと思った。でもどうしたら良いのか分からない…」
「僕もわからないよ。でも一緒にいれば、そのうち自然に仲良くなると思うんだ。だから天使は何も心配しなくて良いんだよ」
「うん、わかった。私、沙織みたいにして欲しい…」
天使は僕から目線を逸らすと、僕の腕を掴み自分の方へ引っ張った。
それはとても小さな力で、ちょっとしたことではあったんだけど、天使の気持ちが伝わってきた。
この子は感情が読み取りにくいけど、とても純粋でキレイな心を持ってるんだなって僕は思った。
そう思った時、誰かがこちらにかけてくる足音が聞こえた。
いつも聞いてるあの声とともに…
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおいっ!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww見たかツインテール!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwww私の差身を殺すのは大変なことなのだ!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwww差身は最強の生物wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私ですら殺すことができないのだwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織はめっちゃ興奮した様子で僕に飛びつくと、なぜか自慢気に天使に大騒ぎしながら言うのであった。
天使は勢いに押されたのか僕から手を離すと、そんな沙織をじっと見上げた。
「差身君がこんなに強いと思わなかった。差身君最強説は正しかった」
「そうだろうそうだろうwwwwwwwwwwwwwwwwww差身は凄く強いんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwツインテールもおとなしく差身不可侵条約にサインするんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwうひひひxhぃhぃひっxひxひxひwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は狂ったように笑い出したが、天使はじっと沙織を見上げているだけだった。
「沙織、サインする。今、差身君に触っても良い?」
天使がそう言うと沙織はちょっと驚いた顔をして動きを止めたが、僕から離れて病んだ笑みを浮かべた。
「ああwwwwwwwwwwwwwいっぱい触ってくれwwwwwwwwwwwwwwwwwwあとでちゃんとサインするんだぞwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「わかった」
天使はポツリとそう言うと、僕の右腕を両手で抱きしめた。
「差身君の腕、気持ちいい…」
天使は僕の腕を枕にするように顔を押し付け、眠たそうな顔をして目を閉じた。
いつも通りその横で大騒ぎしている沙織。
どうやら沙織と僕にまた新たなる「本物」の友達ができたようだ。
このどう見てもバラバラな3人を、深夜の小机町の闇が優しく包んでくれた。




