第77話「本物」の恐るべき新たなる愛wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
僕は魔法陣をなるべく忘れようと見なかったことにし、そのまま佐藤さんと学校へと向かった。
考えてみたら沙織が朝から襲ってこなかったことはあったけど、沙織と一緒に登校しないなんて初めてかもしれない。
少なくとも僕の記憶の中にはなかった。
どんな時でも朝早く沙織は震えながら、僕を探しにやってくるのだ。
そう言えば「朝起きて差身がいないのが怖いんだwwwwwww」とか言ってたよな…
以前と違い沙織のせいで「本物」になってしまった佐藤さんは、手のひらサイズの自動小銃オート25を振り回しながら僕の横で大騒ぎしている。
佐藤さんも良い子だし、こうして一緒にいると結構楽しい。
でも沙織とは違うんだよなあ…
なんでだろう?佐藤さんは確かにあんまり良く考えないところはあるんだけど、かわいいしどう考えても沙織よりまともな女の子だ。
だけど、佐藤さんは沙織ではないのだ。
高級な寝具よりいつも寝ているベッドの上が一番落ち着くように、ずっと小さな頃から一緒にいる沙織が僕には一番しっくりくる。
ご飯に例えるならば、調度良い味加減という感じ。
沙織という「本物」の味付けをされたご飯を、小さい時から何年も何年も毎日食べさせられてきた僕は沙織の味に慣れすぎていて完全には他を受け入れられないのかもね。
しかしどうやら沙織がいなくても「本物」の事件は僕を逃がさないようだった。
学校の近くまで来たんだけど、パトカーがいっぱい集まっていて、通学路を封鎖し検問していた。
めっちゃパトライトが回ってるんだけど、沙織がまたなんかやったのかなあ?
「のわあああああああああああああああああああっ!!!!差身君!!!学校の方に警察がいっぱいいるよ!!!!」
佐藤さんがめっちゃ慌てた感じで僕を引っ張るんだけど、どう見ても怖がっているというよりは喜んでいるようにしか見えないし。
「んー、何があったんだろうね?沙織じゃないといいんだけど…」
「沙織が警察と戦ってたら私も戦うよ!差身君!一緒にリア充を倒そう!」
「佐藤さん…ここは戦国時代じゃないから…ここは法治国家日本ですから…警察と戦ったら駄目だから…」
興奮が収まらない佐藤さんを、心が壊れそうになっている僕が何とかなだめながら歩いて検問を突破した。
佐藤さんが興奮した様子でめっちゃ僕を引っ張ったりしてるんだけど、心が崩壊しそうになっている僕はギリギリの状態だった。
検問を通過し歩いて行くと警察の人達が何かを囲んでいろいろ作業してて、そこには道路標識があって道路標識にめっちゃ巨大な藁人形のようなものが2体括りつけられていた。
あー、ずいぶん不吉なものがぶら下がってますね…
2~3mくらいありそうだな…
なんだか僕の家の魔法陣と何らかの関係性があるような気がして仕方ないよ!!!!!
「あの…今日は事件があったんですか?また爆発したりしたんですか?」
僕が警察の人に思わずそう聞くと、警察の人は鋭い目つきを僕達に投げつけた。
「そうだね。この間、あんなこともあったしね…今日は人形がぶら下がってるだけだから大丈夫だと思うよ」
そう言うと警察の人は自嘲気味に笑いながら僕達を見下ろしていた。
「そうなんですか。安心しました。ありがとうございます」
なーんだ、ただのイタズラか…
何人か死傷者が出てると思ったよ…
しかしこれは沙織の仕業じゃないな。
沙織とは違うタイプの「本物」を感じるよ。
沙織はメチャクチャに破壊するだけで、こういうホラーを感じるイタズラはしないもんな。
でもこれ僕の家に魔法陣を作った犯人と多分同じだな。
一体何が目的なんだ…
「ところで君は学校に行くのに、なんで銃なんか持ってるんだい?」
警察の人は佐藤さんの右手をじっと見つめていた。
佐藤さんの右手にはオート25がしっかりと握られていた。
うわあああああああああっ!!!しまった!しまった!完全に僕も麻痺してた!
どうする!!!警察に銃を持ってるのが見つかっちゃったよ!!!!
ヤバイっ!!!ヤバイって!!!
というか、なんで佐藤さんもパトカーでいっぱいなのに銃を隠さないの?!
いい加減そろそろ戦争の後遺症から目覚めた方が良いと思うんだけどなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
僕はとっさに佐藤さんの顔を見ると、佐藤さんは僕にくっつきながら楽しそうにニコニコしていた。
「これはこのあいだプレゼントしてもらったんです!」
全くこの危機を認識していないのか、佐藤さんは自慢げにそう言うと、警察の人は僕の顔とオート25を見比べた。
そして警察の人はおかしそうに笑い出した。
「そうかい、そうかい。最近、この辺は物騒だからね。そんなの持ってたら捕まっちゃうかもしれないよ」
そう言うと警察の人は元の仕事に戻っていった。
あー、これは手のひらサイズのオート25だから助かったのかもしれないね。
実弾が撃てる「本物」の銃だとはわからなかったのかもしれないな。
あぶない、あぶない…何にも悪いことしてないのに僕まで逮捕寸前だったよ!!!
多分、あの警察の人の頭の中では、僕が佐藤さんにおもちゃの銃をプレゼントしたと思ってるんだろうな…
「佐藤さん…これからは学校や通学路でオート25を隠さないと駄目だ…」
緊張でガチガチになっている僕がなんとか声を振り絞ってそう言うと、佐藤さんは全く緊張感がない様子で不思議そうな顔をして笑っていた。
「えー、どうして?リア充が襲ってきたら殺せないよ?」
「いや…佐藤さん…なんでもするから僕の言うことを聞いて下さい…」
駄目だ…説明のしようがない…
何故死にたくいないか?とか、何故ご飯を食べたくなるのか?とか、簡単なことというか人間が生きていく上で当然なことがわからないと言われると対処しようがない…
どうして…どうしてなの…どうして銃を他人に見せないということがわからないのかな…
「差身君がそこまで言うなら良いけど。リア充が襲ってきたら困るのになあ」
佐藤さんは納得いかなそうにしていたんだけど、僕の精神は崩壊寸前だった。
だから佐藤さん…リア充が襲ってくるなんてないから!!!
リア充な人達は幸せなので人を襲ったりしませんので!!!
どちらかというと沙織とか非リアの人達が逆恨みしてるだけなんじゃないのかなあっ!!!!
「でも差身君!あのぶら下がってた人形からも愛を感じるよ!多分魔法陣を描いた人と同じだね!差身君のことが好きだから人形をぶら下げたんだと思うよ!」
そうめっちゃや興奮して話す佐藤さんに、僕は1つ静かに頷いた。
「そうだね…遅刻しちゃうから学校に行こう…」
あああ…危ない…これは「真人間」だった佐藤さんじゃないんだ…
沙織によって狂ってしまった「本物」の佐藤さんなんだ…
まともに受け答えしてるとこっちのほうが狂わされてしまう…
気持ちを切り替えて落ち着かねば…
だがしかし、ホラーな「本物」の事件は続いたのだ。
僕と佐藤さんが学校の下駄箱につくと、僕の上履きが入ってるところの扉に見たこともない不思議なマークが描かれた紙が貼り付けてあった。
「のわあああああああああああああああああああっ!!!!凄いっ!凄いよっ!」
そのマークを見て佐藤さんは目を輝かせてるんだけど、僕は自分の心が崩壊しないように黙ってその紙を剥がすと下駄箱の扉を開けた。
するとその中に小さな祭壇のようなものが作られていて「長い角がある悪魔のようなどう見ても暗黒を感じる像」が祀られていた…
折れた…完全に心が折れた…
その「長い角がある悪魔のようなどう見ても暗黒を感じる像」を見たまま、全く動けなくなった僕の周りで佐藤さんはぴょんぴょん跳ねまわっていた。
「凄いね!『本物』の愛を感じるね!この人、差身君のこと大好きなんだよ!どうしよう!このままじゃ差身君が『本物』の愛でおかしくなっちゃうよ!」
佐藤さん…あなたなんでそんなに楽しそうにしてるの…
ああ、確かにここまで執拗に僕に対してこんなホラーな嫌がらせをしてくるってことは、もしかすると僕のことを愛している人が色々こじらせてやっちゃったことなのかもしれないね!!!!
でもさ!!!!僕だって人間なんだよ!!!!
沙織によって鍛えられているけど、何でもかんでも全て受け入れられるわけじゃないんだ!!!!
しゅーーーりょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!しゅううううううううううううううううううううううううううううううりょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
みんな僕を愛さないで!!!!もう苦しいいいいいっ!!!!いやだあああああああっ!!!
これ以上僕を愛するのは、しゅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーりょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!1
「本物」の愛にも様々な形があると身を持って知った僕。
新たなる「本物」の愛に精神を削られながら、しばらく僕は固まり続けた。




