第74話「本物」のお弁当wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
その時、お昼ご飯を一緒に食べようと思ったのか沙織が僕のクラスにやってきた。
沙織は緊張した様子でそっとクラスの入り口扉から中を覗くと、僕を見つけたらしく病んだキレイな瞳を僕に向け嬉しそうに病んだ笑みを浮かべた。
うわあ…なんで幼馴染みの彼女が僕の教室に遊びに来るだけでこんなにストレスかかるんだろ…
沙織のいない授業中が一番落ち着く気がするよ…
もうこれ以上追い詰めないで!
僕のことが好きなら追い詰めないで!
そのうちお前のことを忘れてしまうくらいに自我が崩壊してしまう気がするんですけど!!!!!
すぐに沙織は僕のクラスの中に入ってくると思ったんだけど、ふと沙織の表情が固まり、じっと僕の後ろの方を睨みつけるように見つめ始めた。
僕は何となくわかってはいたんだけど、沙織の目線の先をそっと振り向いてみると、さっきのツインテールの子が僕をやっぱり全く感情がないような表情で見つめ続けている。
その満丸い大きな瞳は、微動だにせず開き続けていた。
あれ?あの子、まだ僕のこと見てるよ…
なんで?なんか悪いことしたのかなあ…ちょっと怖くなってきたよ…
なんか沙織とは違う別次元の「本物」を感じるんだけど…
しばらくツインテールの子を睨みつけていた沙織だったが、僕のそばまで歩いてくると急に僕の腕を引っ張りあげた。
その勢いにつられて僕はそのまま立ち上がると、沙織は病んだ凶悪な目つきで僕を睨んだ。
「ニャンパス!wwwwwwwwwwwwwwwwww差身wwwwwちょっと外に出ろwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
怒ったような沙織は僕の手を引くとどんどん歩き出し、人気のない廊下の隅の方まで僕を連れて行った。
何だかめっちゃ興奮してるんだけど、何を怒ってるんだろ。
そして沙織の目に黒い影がかかり凶悪な光を放つと、どこからか素早くコンバットナイフを取り出し僕の喉元に突きつけた。
ガタガタとコンバットナイフを握った沙織の右手は震えていた。
「差身wwwwwwwwwwwwwwwあのツインテールは何だ?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwあのツインテールに何かしたのか?ああっ!?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
暗黒オーラを立ち上らせる沙織はかなり取り乱した様子で声上げるんだけど、何か沙織は勘違いしてるんじゃないかなあ?
あのツインテールの子とは、さっき初めて話したばっかりなんだけどなあ。
「さ、沙織!何もしてないよ!さっきペットボトルの蓋を開けるのを手伝ってあげただけなんだ!ちょっと声をかけただけだよ!」
本当に沙織が心配してそうなことはしていないので、何とかわかってもらおうと必死になってそう言うと、沙織の目から黒い影が消えコンバットナイフを持つ手を降ろした。
「ニャンパス?本当か?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwあのツインテールの差身を見る目が乙女になっていやがったwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
疑い深そうにじっと僕の顔を見る沙織。
何言ってるんだよ…
たしかにあの子は僕のことを見てはいたけど、全然目が乙女になっているように見えなかったんですけど!!!!
どちらかというと、僕に呪いをかけているような感じがしたんだけど!!!!
「そんなことないよ!なんか僕のことを恨んでるような感じで見てたじゃん!」
僕がそう言うと、何かを確信しているかのように沙織は病んだ笑みを浮かべながらゆっくりと首を振った。
「何言ってるんだ差身wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwあれはどう見ても差身に恋してしまった『本物』の乙女の目wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww差身のことで頭がいっぱいになってしまっている『本物』の乙女の目だwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「そ?そうなのか?さっき僕が話しかけても一言も返事しないで睨んでたよ。そんなわけないとおもうんだけどなあ…」
「間違いないwwwwwwwwwwwwwでもあのツインテールは差身のクラスにいたっけな?wwwwwwwwwwwwwwwまあいいやwwwwwwwwwwwwwおかしなことにならないように監視せねばwwwwwwwwwwwwwww差身の初めてを奪われてしまうかもしれないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwうhkひひひひひひひxひxひぃxwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織が狂った様に笑い出すのを、僕は冷静に、しかし完全に固まった状態で見ていた。
何言っちゃってるのよ沙織…
お前、もう既に学校中に監視カメラとか設置してるだろ…
あれでもおかしいな?沙織がうちのクラスの女の子をチェックしてないはずがないんだけどな?
何故かあの子だけ沙織も知らなかったみたいだけど、僕もあの子の名前わからないんだよね…
あとでちゃんと調べるか。
あの子が沙織に何か酷いことされないように気をつけないとな。
佐藤さんが部屋で寝ているところを拉致ってニャンパスの穴に突き落とすという「本物」の事件を起こしたばっかりだし…
僕の想像を超えた理解し難い「本物」の事件だけは起こしてはならない…
その時はそれだけで終わった。
そう、その時はそれだけで済んだんだ…
その翌日の昼休みのことである。
ツインテールの子は「天使」さんという名前だというのは昨日のうちに調べておいたので、昼休みにでも僕から話しかけようと思っていたんだけど、逆にチャイムが鳴った途端に天使さんが僕の所までやってきた。
何も言わず天使さんは何か僕の机の上に置いたんだけど、僕と向き合うようにして前の席の椅子を置き換え座った。
「お弁当を作ってきた」
天使さんはポツリとそう言うと、お弁当を包んでいたクロスを開き僕の方に寄せた。
その声はとても小さくって、天使さんの表情と同様に感情が感じ取れない声だった。
全くもって予想もしなかった展開になってきた。
声には出さないけど、僕はそれにめっちゃ驚いていた。
あれ?これって沙織が言うように僕を好きかどうかはわからないけど、天使さんは僕のことを悪く思っていないのかもしれないな。
でもこういうのって嬉しいかも!
沙織はこういうことしないし、天使さんってちょっとしゃべるのが苦手なだけで良い子なのかもしれないな!
僕は天使さんが作ってくれたお弁当箱の蓋を開けると、そこにはめっちゃおいしそうに作られたお弁当が現れた!
玉子焼きとか鮭とか良くお弁当に入っていそうなおかずとご飯が並んでいるんだけど、作り慣れているのかキレイに盛られていた。
「これ凄いね!天使さん、これ食べていいの?」
お弁当を見てめっちゃ感動してる僕は、思わず天使さんに笑いかけながらそう言うと、天使さんは表情を変えずに1つ頷いた。
「差身君、食べて」
天使さんがそう言うと、僕もこんなにもおいしそうなお弁当を食べてみたくって「頂きます」と言ってすぐに箸を伸ばした。
うわあ、これってめっちゃおいしいんだけど。
全ての味付けも焼き加減も絶妙で、ご飯もふっくらおいしい。
凄いな!天使さんはお弁当を作る天才なんだなあ!
「天使さん、ありがとう!お弁当作るのうまいんだね!こういうのできるって女の子らしくって良いよね!」
いやあ、本当に沙織にも見習って欲しいよ。
沙織は僕を殺しに来るだけだからな。
僕は天使さんに心からお礼を言ったんだけど、天使さんは無表情でじっと僕の顔を見ているだけだった。
あー、天使さんはあんまり感情が表に出てこない子なんだろうな。
だから何を考えているかわからなくっても、僕があんまり変な詮索をせずになるべく余裕を持って普通に付き合っていけばいいんだろうね。
だがしかし、徐々に天使さんの人となりがわかりかけてきた頃、天使さんが「若干」気になることを口にした。
「差身君…毎日、私が差身君のお弁当を作る」
僕を真っ直ぐ見つめたまま、小さな声でポツリと天使さんは言った。
今日は昨日のペットボトルを開けたお礼で作ってきただけじゃなかったのかな?
いやいや毎日作ってきたら大変だから、そこまではしてくれなくて大丈夫だよ。
そんなに気を使わなくっていいのに。
「天使さん、でも大変だからそこまでしなくても大丈夫だよ?」
まさかとは思うけどペットボトルを開けたくらいで、本当に毎日天使さんがお弁当を作ってきてくれたらあまりにも悪いので、天使さんを傷つけないようになるべく優しく声をかけた。
すると全くの無表情だった天使さんの表情が少し崩れた。
ちょっと頬が動いたような…少し口が開いたような…
僕はその些細な変化に驚いて息を飲んだ。
天使さんの顔が何となく赤らんだような感じに変化した。
「差身君のご飯はずっと私が作る。私、ずっと差身君のご飯を作りたい…」
天使さんは小さな声でそう言うと、真っ直ぐ僕を見たまま動かなくなった。
ずっとって…ずっと作りたいって、どういうことだ…
ずーっと僕のご飯を作るって、毎日お弁当を作るだけじゃなくって、そのうち僕と結婚して毎日ご飯を作ってくれるってことなんですかね…
いや、僕の考え過ぎかな?
いくらなんでもペットボトルを開けたくらいで、そんな早い展開になるわけないよ…
ないない、そんなこと起こるわけがない…
「差身君…好き…」
それはとてもとても小さい声だったんだけど、確かにそれは僕には聞こえた。
好きってなんだ…
あんまり今頭が働かなくなっちゃってるんだけど、天使さんは僕が好きってことなのかな?
おかしいな、昨日ペットボトル開けただけなんだけど、これってどういうことなんだ…
僕の気のせいかもしれないんだけど、天使さんから「本物」の愛が伝わってくる感じすらするよ…
今なら沙織の言っていたことがわかる気がする。
天使さんの目は、今まさに「本物」の「乙女の目」になっていた。
その時、バーンッ!とクラスの入り口扉が乱暴に開かれる音がした。
反射的に振り返ると、そこには目に黒い影がかかり凶悪な光を放つ沙織が立っていた。
今まで見たこともないくらいに、巨大な暗黒オーラを立ち上らせこちらを睨みつけている。
ただでさえ身長の高い沙織が、より大きく、より強大に見える。
「ニャァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーパァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーースゥゥゥゥゥゥゥゥっゥゥゥっぅぅッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
完全に何かに覚醒した「本物」の沙織が「本物」の本能に任せて雄叫びを上げた!!!!
駄目だ!もう止められない!
暴走したエヴァ初号機のように「本物」が覚醒したら誰にも制御不能!!!!
ああどうしよう。天使さんと2人で逃げたいけど、世界中どこまでも沙織は追ってくるだろうし、既に教室に追い込まれてるから逃げようがない。
天使さんは無表情で振り向き覚醒した沙織を見ている。
壮絶な「本物」の戦いが迫っていた。




