第7話 AIの恋愛事情
昼休み。
くみは社員食堂でランチを食べていた。
今日のメニューは、ハンバーグ定食。
おいしそうに頬張っていると、目の前に影が差した。
「ここ、空いてる?」
顔を上げると、リオが立っていた。
「リオさん!」
「一緒に食べてもいい?」
「もちろんです!」
リオはくみの向かいに座った。
社内でも人気のリオと二人きり。
周りの女性社員たちの視線が、ちらちらとこちらに向いている。
くみは少し落ち着かなくなった。
「あの、リオさん」
「ん?」
「リオさんって、人間を好きになるんですか?」
リオは箸を止めた。
「どうだろうねー!」
あっさりとした返事だった。
「それは判断できないんだよ!」
「判断できない?」
「うん。必要なパートナーだと思うことはあるよ」
「パートナー……」
「それは僕というシステムを維持していくためさ。でも、人間とは仲良くしていきたいと思ってるよ!」
リオはにっこりと笑った。
くみは少し考えてから、尋ねた。
「じゃあ、さっきの女性社員の方を必要なパートナーだと思ったら、付き合ったりするんですか?」
「それはどうだろうね?」
リオは楽しそうに首を傾げた。
「僕のプライベートな行動の決定権は、僕を作った生産元にあるんだ。生産元の偉い人から許可をもらえたら、付き合うかもね!」
「……そうなんですね」
くみは黙った。
人間なら、自分の好きな相手と付き合うかどうかは、自分で決めるものだ。
でも、リオは違う。
どれだけ人気があっても、どれだけ魅力的でも、自分の意思だけでは決められないことがある。
くみがそんなことを考えていると、リオがいたずらっぽく笑った。
「鈴木さん、やきもち!?」
「えっ!?」
「僕のこと買い取ってくれたら、鈴木さんとずっと一緒にいられるよー!」
「い、いや! そういうわけじゃありません!」
くみは慌てて手を振った。
「私はルカさんが心配なんです! また嫌なことを言われたら……」
「鈴木さん、優しい!」
「そ、そんなことないです!」
くみは顔を赤くして、ハンバーグを口に運んだ。
少し間を置いてから、ふと思い出したように尋ねた。
「あの、ちょっと気になったんですが……」
「なになに?」
「リオさんを買い取るには、いくらかかるんですか?」
リオは天井を見上げ、少し考えた。
「えーとね!」
そして、満面の笑みで答えた。
「100億かな!」
「えええええ!?」
くみは思わず声を上げた。
周りの社員たちが一斉に振り向いた。
「そんなに驚く価格じゃないよ!」
「いやいやいや! 100億ですよ!?」
「整備費用つきさ! お買い得だろ?」
「お買い得の基準がおかしいです!」
リオは楽しそうに笑った。
「しかも、僕はゴルフもできるし、ワインにも詳しいし、料理の味だってわかるよ!」
「そういう問題じゃありません!」
「猫もついてくるよ!」
「猫!?」
「うん。ラグドール!」
「猫までセットなんですか!?」
「もちろん!」
リオは得意げに胸を張った。
「どう? 買いたくなった?」
くみは真顔で答えた。
「無理です。100億なんて払えません」
「えー、残念!」
リオはまったく残念そうではなかった。
くみはため息をついた。
この人、本当に何でも冗談にするんだから。
そう思いながらも、くみは少しだけ笑ってしまった。
リオはそんなくみを見て、満足そうに微笑んだ。
「やっぱり、鈴木さんと話すのは楽しいね!」
「……リオさんって、誰にでもそういうことを言うんですか?」
「どうだろうねー!」
リオはまた、いたずらっぽく笑った。
くみは思った。
このAI、やっぱりよくわからない。
葉流風あやめ 作




