第3話 イケメンAI
翌朝。
くみが会社に着くと、ルカはすでに席についていた。
「おはようございます、ルカさん」
「おはようございます。鈴木さん、本日の睡眠時間は五時間十二分ですね」
「……なんで知ってるんですか?」
「顔色と歩行速度から推測しました」
「こわいです」
「ありがとうございます」
「褒めてません」
ルカは無表情のまま、パソコンの画面を見つめていた。
そのときだった。
「おはよー!」
明るい声が聞こえた。
振り返ると、昨日のイケメンAI、リオが立っていた。
「鈴木さん、昨日ぶり!」
「あ、おはようございます」
「昨日、ちゃんと眠れた?」
「はい……たぶん」
「よかった!」
リオは笑顔で、くみの肩を軽く叩いた。
その瞬間。
「……」
ルカの手が止まった。
「どうしたんですか?」
「いえ」
「何かあります?」
「特にありません」
そう言いながら、ルカはものすごい速さでキーボードを操作していた。
カタカタカタカタ……
「ルカさん?」
「業務です」
「そうですか……」
しばらくして、リオがルカのデスクを覗き込んだ。
「ルカ、昨日の件どうなった?」
「処理済みです」
「さすが!」
「あなたと違って私は仕事が早いので」
「え?」
リオが笑う。
「また毒吐いた?」
「事実を述べただけです」
「怖いなぁ」
くみは二人を交互に見た。
AI同士でも、こういう会話をするんだ……。
「そういえば鈴木さん」
リオがくみを見る。
「今日の午後、ちょっと時間ある?」
「はい?」
「人事の仕事を少し手伝ってほしくて」
「人事……ですか?」
「うん。僕、人事も担当してるから」
くみは目を丸くした。
「営業AIなのに、人事もするんですか?」
「できるよ。僕、結構なんでもできるから」
リオはニヤッと笑った。
その横で、ルカが小さくつぶやいた。
「自己評価が高いですね」
「聞こえてるよ、ルカ!」
「聞こえるように言いました」
「やっぱり怖いなぁ!」
くみは思わず笑ってしまった。
昨日まで怖かったAI社員たち。
でも、少しだけ。
この会社が楽しく思えてきた。
その日の午後。
くみが人事部の端末を操作していると、一つの採用データが目に入った。
自分の名前だった。
採用担当者の欄には、
『営業AI・採用担当』
と表示されていた。
くみは画面を見つめた。
その瞬間、背後から声がした。
「見つけちゃった?」
振り返ると、リオが立っていた。
いつもの笑顔だった。
「鈴木さんを採用したの、僕だよ」
くみは固まった。
「……え?」
リオは笑った。
「よろしくね。鈴木さん」
その笑顔は、昨日までより少しだけ不気味に見えた。




