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パンケーキ

使い込まれた真っ黒な鋳鉄(ちゅうてつ)のフライパンにバターを敷く。パチパチと小さな音を立てたそこに木製の大匙でハチミツと卵、そしてすり潰した木の実の粉を練り込んだ、ぽってりと重みのある生地をすくい上げ、真ん中に落とすと、「ジュワッ」という小気味いい音とともに、香ばしいバターの匂いが一気に部屋を満たした。鉄肌に触れた部分から、生地はまたたく間にふっくらと膨らみ。表面にぽつぽつと小さな気泡が浮き上がり、弾けるのを待って、私は使い慣れた薄い木ベラを差し込み、皿へと装った。


「ほら…できたぞ」


2階へと声をかけるとカータは急いで階段を駆け降りてくる。危ないな…。


そうして匂いを嗅いだ途端に目をキラキラと輝かせ、初めての甘さに尻尾と耳を今までにない速さで動かし続けている。


「どうぞ…」


パンケーキを頬張る姿をハーブティーを見ながら眺める。おいおい…そんなに慌てて食べなくても無くならないのに…


「それじゃあ私は、お仕事をしてくるから、好きなように今日は過ごしてくれ。…ゆっくり食べなさい」


そうして私は2階の仕事場へと向かう。前から注文を受けていた湿布を作るための薬草の乾燥が終わったため、薬研(やげん)のフネへと適量を取り、製粉する。幼少期から続けてきた動作はもうお手のものだ。そうして製粉した粉末を、羊皮紙へと取り出し、残った薬草を棚の木箱に保存しておく。そうして粉末が山になった羊皮紙に油を垂らし、丁寧に練り合わせていく。そうしてできたものを今度はヘラを使って手のひらサイズの全体がぽってりとした温かみのある白色の軟膏壺へと詰める。トントンと机で均して空気を抜き、上からルーンを施した羊皮紙で丁寧に密閉し、器の蓋を閉じる。


「はぁ…なんともまぁ丁寧な作り方だよなぁ」

父はもともと薬学に精通していたわけではなく、この田舎の民間療法での薬学師として生きていた。それが漁師や農業をする人たちの間で、腕の張りなどを治してくれる魔法のようなものとしてたちまち噂になり、王都での薬の第三者学術研究と評議会の結果、正式な魔術師として認められた結構すごい人なのだ。この世界では薬学というものは本当に人気がないもので、ほとんどの研究機関でも対象になることがない。なぜなら…お金にならないからだ。しかし、変人の父はそんなことおかまいなく「楽しいからやるのだ」といつもニヤニヤしながらこの丁寧な肯定を何度も何度も繰り返し王都ではなくこの工房で地道にお金を貯め続け、生涯薬の研究に身を投じ続けた。実際、尊敬している。そのおかげもあり私は王都で学術研究員として働かせて貰えたし…。

白い陶器の外側にある深い赤で告示されたモルガンの文字…これが父の子供であることの何よりの証拠でもあり…私の名前でもある…はぁ。


魔力を込めると…赤かった文字が少しずつ青色へと染まっていく。


「よし…1つ完成。あと…14個か…っよし」


そうして木箱に入れた薬草をまた取り出して、私は製粉を始めた。

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