【閑話】君の名前
次回から本編がんばりたいです
スープを飲んでお腹を満たし、カータに抱きしめられ、一晩ぐっすり眠った小さな狼の幼体は、翌朝には見違えるほどすっかり元気を取り戻していた。ぎゅうと抱き合いながら寝ている姿に私は思わず悶絶した…。
「くぅ〜ん、きゃんっ!」
「あははっ! 待って、くすぐったいよ〜!」
朝の柔らかい光が差し込むアジトの中で、元気いっぱいの高音があたたかく響き渡っている。
すっかり体力を回復させた小さな狼は、短い足を一所懸命に動かしてトコトコと走り回り、カータの後を片時も離れずについてまわっていた。カータが歩けば後ろをトコトコ、カータが止まればその足元にぽてんと座り込む。どうやら自分の「親」と認識しているようだった。
「ご主人様、見てください! 僕が動くほうにちゃんとついてくるんです!」
カータが嬉しそうに報告すると、狼ちゃんは「きゃん!」と同意するように短く鳴き、カータの足首にすり寄ってしっぽを千切れるほどぶんぶんと振り回した。さらには、猫人であるカータのふさふさしたしっぽが気になって仕方がないらしく、小さな前足でぽかぽかとじゃれついている。
「あぁあぁ……。カータ、しっぽを噛まれないように気をつけなさい」
呆れ顔を装いつつも、アジトの木椅子に腰掛けながら、目の前で繰り広げられる「子猫と子狼のじゃれ合い」というあまりにも平和で愛くるしい光景に、自然と目を細めていた。
「大丈夫です! 痛くないですよ。……あ、そうだ! ご主人様、この子のお名前、考えてもいいですか?」
「名前か。……ああ、お前が名付けてやるといい。お前が命を救ったんだからね」
「え……本当ですか!?」
カータはパッと表情を輝かせると、膝の上にすぽっと抱き上げた狼ちゃんと目を合わせた。狼ちゃんもカータの鼻先をペロッと小さな舌で舐め返し、鼻を鳴らす。
「んーとね……元気いっぱいで、毛並みがもこもこしてて……よし、『ルーク』! 君の名前は今日からルークだよ!」
「きゃんっ!」
名前を理解したかのように、ルークと呼ばれた子狼はカータの腕の中で誇らしげに胸を張った。
「ルークか。いい名前だな」
立ち上がり、大きな手をすっと差し出すと、ルークは一瞬だけモルガンの巨躯と鋭い目つきに「くぅ……?」と耳を寝かせたものの、すぐにその手から漂う香草と美味しそうな肉の匂い、そして温かさを感じ取ったのか、恐る恐る私の指先に小さな鼻を押し当てた。
「よしよし……。カータ、ルークの朝飯も準備してやるぞ。昨日余った骨のスープに、少し肉を細かく刻んで混ぜてやるか」
「はいっ! 僕、お皿洗ってきます!」
元気になったルークが加わったことで、薄暗かった隠れ家はまるで本当の家のように賑やかで温かな空間へと変わっていく。
身寄りのなかったカータ、そして森で途方に暮れていたルーク。傷を抱えた者同士が集まり、美味しいご飯を分け合いながら、小さな家族の日常がまた一歩、良い方向に進んでくれたらいいのだが…。
【モルガンの日記】
ルークがアジトに来てからカータ表情が少し晴れた気がする。元々私を心配させまいと無理をしていたのだろう…不甲斐ない保護者だ。しかしあの魔物は何なのだろうか。知能が高い…カータにもよく懐いている…
そろそろほとぼりも覚めた頃だろう。…アルカディアに向かおうか。資料を読み解くことはある程度できたが、ここでは材料を工房の裏手には罪に行くことはできない…信用に足る人物でもないから穏健派にすら場所を教えたくもないし…。とりあえずヒルダに紹介してもらった貴族に会いに行くことにする。




