選択肢のほとんどない質問
目玉焼きと食パンを用意して待っていると、ぶかぶかの服に身を包んだ彼が、猫耳をぴょこんと揺らしながら2階から降りてきた。
ちゃんと服を着られているのを確認して、私は微笑む。
「おはよう。朝ごはんを配膳するのを手伝ってくれるかい?」
「はいっ! ごしゅじんさま!」
尻尾をフリフリさせて近づいてくる彼にマグカップなどを手渡し、二人でテーブルへ運ぶ。
「ありがとう。それじゃあ、いただこうか」
手を合わせて朝食を食べ始める。
食べている最中も時折彼を見ると、口いっぱいに食べ物を詰めてリスのようになりながらご飯に夢中だ。耳もピコピコ動いていて、喜んでいるのが分かりやすすぎて心配になるほどである。
朝食を食べ終わり、食器を片付けると、私は彼に向き直った。
「君は……これからどうしたい?」
我ながらズルい質問だと思う。彼に選択肢などないに等しいのに、引き止めたい自分のためにこんな聞き方をしてしまっている。
すると彼は、まっすぐな目で私を見つめ――
「ぼくを……そばにおいてくださいっ!」
深々と頭を下げた。
「……! き、君がそれでいいなら。じゃあお手伝いさんとして、家事とかを手伝ってもらおうかな……」
「……っ! ありがとうございます! ごしゅじんさまっ!」
「その……ご主人様っていうのは?」
「そういえって……」
「……そうか」
私は彼の頭を優しく撫で、そのまま仕事の案内をするために馬小屋へ連れて行った。
「ここが馬小屋。今日の初めての仕事だ。ほら、あいさつしてごらん」
柵から出した老馬をカータの前へ引き寄せる。父の形見である老馬は、彼の匂いをスンスンと確かめると、親愛を込めるように頭を下げた。
「は、はじめまして……っ!」
馬に気に入られて嬉しそうに笑う彼を確認したのち、彼に仕事の内容を見せる。杭に馬の縄を縛り、馬の糞をスコップで取り、寝床の藁を鳴らし、納屋から新しい藁を持ってきて均す。水桶の水を変えてあげて、一連の作業は馬を戻せば終わりだ。
「……こんな感じだ。分かったかい?」
「ぼ、ぼくもきょうからてつだいしたい!」
「いいんだよ。今日はこの子と仲良くなっただけで十分だ。さ、戻してあげて」
「は、はい!」
「改めてこの家を紹介しよう」
二日目
自分が少し嫌いになった。普通であれば孤児院に連れて行くのが筋だろう。なのにあえて私は彼にどうしたいかと委ねて質問してしまった。理由は簡単だ。私が彼に…もう少しだけでもいてほしいと思ってしまったからだ…。私は自分が大人として恥ずかしい…。しかし、彼がこの家にいてくれることが決まった今、少しでも彼へ私が返せるものがあるだろうか…。




