再会
「ご無沙汰しております。バルガス殿」
「リオン殿。いやいや…王都からようこそおいでくださいました。して、このような土地にどのようなご用件で」
「モルガンだ。わかるだろう?あいつを穏健派の奴らの仲間にされるわけにはいかないのでな。貴殿にも協力を仰ぎたい。」
「モルガン?あぁ…あの薬師ですか。父親は偉大なお方でしたが、そこまでの脅威では…」
「フルポーション…というものの存在をご存知かな?」
「…!?ぉ…お前ら。リオン殿と話がしたい。外に出ていてくれ」
夜風が草木を揺らす音と、二頭の馬が踏みしめる蹄の音だけが、パビリオンの外壁に静かに響いていた。手綱を握るモルガンの隣で、カータは警戒を怠らず周りの闇に目を配っている。巨大な城壁の影、巨大な石造りの壁が夜の闇に沈むその一角に、ぽつりと小さな温かい光が揺れていた。ランタンの明かりだ。
光の傍らにたたずんでいた影が、馬上の二人を見上げて小さく動き、煙管から細く紫煙をくゆらせた。
「……遅かったじゃないかぁ、モルガン…キシシ」
どこかかすれたハスキーな声。
ランタンの光が下から照らし出したのは、口元に笑みを浮かべたヒルダの顔だった。
モルガンは馬を止め、軽やかに地面へと降り立つ。
「途中で少し迂回した。何やらきな臭くなってきたというのは本当らしい」
「強硬派の犬どもさ。先王が身罷られてからというもの、尻尾を振って街中を嗅ぎ回ってるよ。あんたという『極上の獲物』を捕まえようと必死でね」
ヒルダは煙管をトントンとランタンの枠に押し当てて灰を落とすと、モルガンの隣に立つ若い存在──カータへと視線を向けた。鋭い眼光が、一瞬でカータの立ち振る舞いやモルガンとの距離感を観察する。
「また会ったねぇ。坊や…?」
「……カータだ」
モルガンが頭を撫でながら短く紹介すると、ヒルダは「へぇ」とニヤリと口角を上げた。
「随分とまた仲が良さそうじゃないか。カータ。あの時あげたペンダントは持ってるね?」
「は…はい。」
「いい子だね❤️」
そう言って笑うヒルダの目は、かつての教え子に対する深い慈愛が入り混じっていた。
「で? 手紙に書いてあった『父さんの蔵書』……本当にあのパビリオンの城内図書館にあるんだね? あそこは今や強硬派の完全な監視下だ。入り込むには、それ相応の覚悟と……」
ヒルダは一歩踏み出し、モルガンの顔を覗き込んだ。
「……顔色が悪いね。追伸に書いてあった通り、本当に体調を崩していたかい」
「問題ない」
「まったく、強がりなところも昔のままだ。……安心しな、裏の抜け道はきっちり確保してある。先生を頼ってきた出来のいい生徒のために、とびっきりのルートを用意したよ」
ヒルダはランタンを持ち上げ、城壁の暗がりに隠された古い隠し扉を指し示した。




