【閑話】風鈴
軒下からそよぐ微風が、ガラスの風鈴を揺らす。
チリン。
……ぴくっ。
チリン。
……ぴくっ。
縁側に足を投げ出し、暑さで完全に思考が溶けていたモルガンは、その規則正しい運動にじっと目を奪われていた。
私の膝枕の上でうとうとしているカータ。
風鈴が涼やかな音を立てるたび、もふもふの猫耳が、まるで精巧なカラクリ仕掛けのように「ぴくっ」と完璧なタイミングで跳ねるのだ。
チリン。
……ぴくっ。
(……可愛いな)
クールな顔の下で理性がじわじわと溶けていくのを感じながら、私は大きな手をそっと伸ばした。
チリン。
……ぴくっ。
ちょん。
耳が跳ねた瞬間の頂点を狙って、モルガンは指先でカータの耳先を軽くだけ突いた。
「ふにゃ……?」
くすぐったかったのか、カータが薄目を開けて耳をパタパタと振り、またすぐに気持ち良さそうに目を閉じる。
だが、トラップはここで終わりではない。
チリン。
……ぴくっ。
ちょん。
「……ん」
チリン。
……ぴくっ。
ちょん。
「……ごしゅじんさま、さっきから何してるの……?」
ついに耐えかねたカータが、まぶたをこすりながら見上げてくる。
しかし、モルガンの表情はどこまでも真剣そのものだ。
「……観察だ。」
「嘘だ。 絶対面白がって遊んでるだけでしょ…」
「遊んでない。……ほら、また鳴るぞ」
チリン。
……ぴくっ。
ちょん。
「ほら触った! もう〜!」
抗議しながらも、カータはモルガンの膝から逃げようとはしない。それどころか、ちょっかいを出してくるモルガンの手に自分の頭を「すりっ」と擦り付けて邪魔をしてくる。
冷えたお茶を飲みながら、ただ風鈴が鳴るたびに耳を突き、怒られては撫で回す。
「…ふふ。まったく。可愛いな」
そういうと、カータは目を見開いたあと、プイッと私のお腹に顔を埋めてしまった。
ピクピクと反応する耳と、揺れている尻尾がなんとも愛おしかった。




