夕飯のお手伝い
「僕…ご主人様のお手伝いがしたいです」
「…というと?」
「ご主人様……! 僕、これ、切ってみたいです……!」
夕食の準備中、トントンと軽快に野菜を刻む私の手元を、カータが背伸びをしながら目を輝かせて見つめていた。小さな手で私のエプロンの裾を握り締め、やる気満々で猫耳をピンと立たせている。
「包丁を使いたいのかい? ……うーん、カータにはまだ少し大きいし、危ないかもしれないよ」
「僕、がんばります! ご主人様のお手伝い、したいです……!」
潤んだ瞳でまっすぐ見上げてくるカータ。その一生懸命な眼差しに押し切られ、私は溜め息混じりに小さく微笑んだ。
「……分かった。ただし、絶対に私の言うことを聞くこと。いいね?」
「はいっ!」
私はカータの後ろに回ってかがみ込み、彼をすっぽりと抱え込むような体勢を取った。
小さな手に子ども用の小さなナイフを持たせ、その上から私の大きな手を優しく重ねる。包丁の刃先が直接手や身体に向かないよう、細心の注意を払う。
ふわりと漂う、カータの日向のような甘い匂い。
首筋に当たる小さな吐息と、緊張でこわばる愛おしい肩の感触。
可愛らしいその姿に心を乱されつつも、私は努めて冷静な「師匠」の声を作った。
「いいかい、カータ。野菜を押さえる方の手は……こうやって『猫の手』にするんだ。指先を丸めて、爪を隠すようにね」
「ね、ねこの手……? 僕、ねこ耳だから、得意です……!」
「ふふ、そうだね。そのまま刃をそっと当てて……押すのではなく、引きながら切るんだ」
トン、と引き締まったスープ用のスープ用根菜が綺麗に二つに割れた。
「……っ!! 切れた……! ご主人様、切れました……っ!!」
「上手だよ、カータ。じゃあ、もうひと片も切ってみようか」
トントン、トントン。
不器用で少し歪だけれど、私の手に添えられながら、カータは夢中で野菜を刻んでいく。
「ご主人様! 僕、もっと練習したら、いつかご主人様に朝ごはんを作ってあげられますか……?」
「あぁ、もちろんだとも。カータが作ってくれた朝ごはんなら、きっと世界一美味しいだろうね」
誇らしげに胸を張り、へにゃりと嬉しそうに微笑むカータ。
その他にも、台所の魔道具での火の付け方についてなど、一通りの機能を教えた。カータの笑顔が見れて…不器用なりに教えてよかったなと少しだけ…思った。




