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いいものをあげる❤️

「おはよぉ……随分と大荷物じゃないかぁ」


ギルドについて店に入った途端に響いたねっとりとした声に振り向くと、そこにはヒルダが柱に寄りかかり、煙管の紫煙をくゆらせていた。


「お前には関係ないだろう」


「……冷たいねぇ。そっちの小さい君は、助手君だったかな? これからよろしくねぇ」


ヒルダは私の後ろに隠れるカータへ目線を合わせるように身を屈め、ひらひらと手を伸ばした。だが、カータは「ッ……」と警戒するように小さな身体をすくめ、その手をすり抜けて私の背中へと完全に隠れてしまう。


「なんだいなんだい……みんなして私を除け者かい? まぁいいや。ところでモルガン、あの老馬……そろそろ寿命が近いだろう。体にもガタが来ている。うちで引き取ろうか? 代わりの若い奴なら、安く手配してやるよ」


馬繋ぎ場で大人しく草を食む老馬を見やる。


口の悪さに反して動物や身内への情が深い奴だということは、昔からの付き合いでよく知っている…この提案も、あいつなりの気遣いなのだろう。だが、私は静かに首を振った。


「いい……。この子は最後のその時まで、私の手でお世話をする。……とは言っても、この二日間は世話になった。お礼と言ってはなんだが、保存食を含め日用品をいくつか買い戻したい。手配してくれるか?」


「……ふん、相変わらず頑固だねぇ。分かったよ、後日屋敷まで届けさせる。昔のよしみだ、手数料は負けておくよ……キシシ。で、いつ出立だい?」


「食材を調達したらすぐに出る」


「早いねぇ……。そうだ、小さい子。いいものをあげよう。ちょっと耳を貸しておくれ?」


胡散臭い笑みを浮かべるヒルダに、カータはおそるおそる耳を近づけた。するとヒルダは、その尖った猫耳の根本に唇を寄せ――

「フゥ~~~ッ……❤️」


「……ッ!?!?」


耳腔を揺らす湿った吐息に、カータの全身がビククッ!と跳ね上がった。

ぴーんと立った耳が真っ赤に染まり、毛を逆立てて後ずさる。


「キシシ……冗談さ。いいかい可愛い助手君…。ご主人様をしっかり守っておやり。そのために、こいつを……」


ヒルダが懐から取り出したのは、鈍い光を放つ小さなレリーフのネックレスと、一通の手紙だった。カータはそれらをひったくるように奪うと、脱兎のごとく私の腰元へしがみつき、太ももに顔を押し付けて震えていた。

相変わらず食えない奴だが、渡されたものに悪い意図がないことくらいは分かる。人付き合いが壊滅的な私とこうして変わらず接してくれるのは、世界中で片手で数えるほどしかいないのだから…困ったものだ。


「また会おうねぇ、助手君……❤️」


ひらひらと怪しく手を振るヒルダを尻目に、私たちはギルドを後にした。

市場で干し肉や堅焼きパンなどの食料品を買い込み、慣れ親しんだ山道へと馬車を走らせる。



──夕刻、黄金色の夕陽が深い森の木々を赤く染め上げる頃、私たちは無事に山奥の我が家へと辿り着いた。

久々の我が家を目にしたカータは、安堵したように「ふはぁ……」と大きな息を吐き出すのだった。

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