人付き合い
壁に背中を預けて頭を抱える。
(っ〜〜〜〜〜!!? なんだあの破壊力は…!? )
廊下で一人、顔を真っ赤にして階段を踏み外さないようゆっくりと降りて、階段を踏み外さないよう足元に注意しながら、1階の食堂へ向かった。
日が落ちた食堂は、さっき通ったときよりも大勢の客で賑わっている。
席に腰を下ろし、考えを巡らせる。
熱で体力が落ちている時は、固形物は胃に負担がかかる。水分と適度な糖分、それにミネラルを補給させなければ……。
「いらっしゃい! おねえさん、ずいぶんと美人ね!」
「……すまないが、熱を出した小さな子でも食べられるような、柔らかくて温かいスープはあるかい?」
「うーん!…それならこの、カボチャと羊乳の甘いポタージュが一番だ! 体が温まるよ」
「それを一ついただこう」
「はーい!500リラね。」
「おつりはいい」と小銀貨と大銅貨を渡すと、給仕の少女は嬉しそうに裏手へ走っていった。
「随分と景気が良さそうじゃねぇか」
「横からぬっと現れた男が、馴々しく私の肩に手を置いてきた。
「……あぁ?」
「ひっ……!?」
低い声で振り返ると、男は私を見上げて悲鳴を上げた。
自分より背の大きい相手が、まさか女だとは思わなかったのだろう。
そして明らかに私を見る目が変わったのがわかる。
「な、お前……名前は?」
「教える気はない。悪かったな」
「まぁまて。ちょっと顔を見せてくれよ」
席を立とうとすると、男は鼻の下を伸ばしながら私の体をジロジロと見て、再度しつこく手を出してきた。その手首を掴み、胸ぐらを引き寄せて鋭く睨みつける。
「……もう少し、女の口説き方を学んできたらどうだ?」
静まり返った周囲を無視し、男を突き放すように手を離す。
カウンターで温かいポタージュを受け取り、私はそのまま廊下へ出た。
人付き合いは苦手だ。
昔から人と仲良くなるのが下手で、関わりといえば仕事上の最低限の会話ばかり。だから人との正しい距離感というのが、今でもよくわからない。カータとの関わり方も難しいことばかりだ…。さっきの対応も、アレでよかったのだろうか……。
はぁ、ダメだな。しっかりしなければ。
私は頭を振り、手に持ったポタージュが冷めないよう、カータの待つ部屋へと急いだ。




