第五十五話 名探偵白沢【第七幕】 このエピソードの最終話
偽の茶壷が入ったお札を受け取ったお玉は、任務を達成したことで足取り軽く、来た道を戻って行く。
危ない場面もあったが、首尾よく任務を果たしたことで、今度は江戸城の中にも入ることが出来る。お玉は鼻歌を歌いながら、屋根から屋根へ帰路を急いだ。
しかしそうした中、空から急に雨が降り出してきた。にわか雨の様だ。
基本的に猫は雨が嫌いである。さっきまでの楽しい気持ちが急にしぼんでいくお玉であったが、雨宿りするのは城外にでてからだと思い、先を急ぐ。
来た道を順調に辿って行き、ほどなく一番外側の塀までたどり着いた、そしてお玉は入った時と同じようにお堀を飛び越そうとしてジャンプする。
塀の高さがある分、入る時よりも余裕で岸につくはずであったが、何故か途中で自分が失速していることにお玉は気づく。
猫が雨を嫌う原因は毛皮が濡れるからだと言われている。猫の毛はふわふわで湿ると体が重くなってしまい動きが制限されてしまう可能性があるのだ。
お玉は入った時と同じように跳んだつもりであったが、体は雨で水を含んだ分重くなっており、お玉の体は失速していく。
お玉は必死で手足を空中でこぐが、重力の方が強い。
猫が雨を嫌う理由はもう一つ、清潔好きな猫は雨で汚れるのを嫌う。
しかしお掘に落ちたら、雨どころではない。江戸城の生活排水が流れ込む堀の水は決して清潔ではないことをお玉は知っていた。
「あかん!」
お玉は向こう岸まであと三メートルという所で水没を覚悟したが、落ちた場所はは水ではなかった。
なにやらフワフワした雲のようなものに乗っている。
お玉が顔をあげると、向こう岸には白沢が立っていた。
「一応迎えに来ておいて正解でしたね。どっちかというとお城を壊して警護の者に見つからないかと心配で来てみたのですが、逃走用の浮雲が役に立ちましたね」
この雲は壺を格納するお札と一緒に白沢が作っていたものだ。
お玉が何かやらかして場内から逃げられなくなった時に、お札から雲を出現させて、お玉を回収するつもりであった。
「白沢殿~♪」
お玉は雨でずぶぬれなことも忘れて、雲から跳んで白沢に抱きつくので白沢もずぶぬれになってしまった。
「ま、どっちにしても長居は無用です。早く帰りましょう」
そうして二人は家へと帰って行った。
そしてその翌日、白沢は大岡忠助の屋敷にいた。
屋敷には竹中光春と山田次郎三郎それに橋本宇内もいた。
「さすが、白沢殿。信じておったぞ!」
忠助が開口一番に叫ぶ。
一同は大いに喜んでいたが、次郎三郎と宇内はどうやってすり替えたのか信じられない様子であった。
逆に付き合いの長い光春と忠助は白沢の不思議な力のことも何となく感じ取っていたため、そこには触れない様、他の二人にはきつく言い含めた。
白沢が不可思議な技を使うなどいう噂が立ったら、白沢が江戸に居られなくなってしまうかもしれないと考えたからだ。
とにもかくにも目的が達成されたのだから、このことはここに居るものだけの秘密にすることで、話はまとまった。
そして肝心の茶会では案の定、綱吉が自慢げに茶壷を諸大名に自慢してご満悦だったそうだ。
余談ではあるが、「たまには犬の首輪に付けられて外に出るのもいいか」という、鈴竹姫の想いが通じたのかどうかわからないが、また綱吉は犬を連れてお忍びでの散歩を再開し始めたという。
さすがに犬につけるのはやめて印籠に鈴をつけているそうだが、少しは外の空気を吸えるようになった鈴竹姫は喜んでいるだろう。
もちろん警護役の忠助は渋い顔をしている。
尚、役目を果たしたお玉は幕府の重役である竹中光春の力でお城の中を見学することが出来て大満足だったが、今度はお城に行けなかった麒麟が、「わしもお城見学について行きたかった」と駄々をこねているが、今回は何もしていないのだから放っておくとしよう。
このエビソードは終わり 次回に続く
過去最長の七話構成お付き合いいただいてありがとうございました。
少し他の作品にも手を付けたいので、
次回はちょっと間を開けて週末辺りに更新できればと思います。




