表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
50/65

第五十話 名探偵白沢【第二幕】

とうとうこの作品も五十話まで来ることが出来ました。

この作品を読んでくださっている皆様、誠にありがとうございます。

これからも細々と続けて行ければと思います。

挿絵(By みてみん)


 さて、診療所を出て向かおうとすると、隣の麒麟堂からお玉が顔を出す。

 もちろん店にいる時は人間の姿である。

「おや、白沢殿どっかにお出かけかい?」

「ああ、お城へちょっとね」

 すると、お玉は目を輝かせた。

「ええなあ。ウチも行きたい! いっぺん江戸のお城に行きたかってん」

「いやいや、遊びに行くわけではないからさあ」

 白沢は困った顔をする。忠助はお玉が冗談を言っていると思い笑っているが、お玉はガチだ。

「え~? ええやん、連れて行ってや~」

 そんな話をしていると麒麟が店の奥から出て来て、お舞の襟首をつかむ。

「おやおや、江戸猫生活協同組合会長のお玉さん、昼間の仕事をさぼってどこに行こうとしてるんでっか? かわいい組合員たちの為にも稼がなあかんやろ?」

「あ、兄貴~」

 麒麟は、目配せをして白沢に合図する。


「では、大岡様参りましょう。お玉さんはまた今度」

 白沢は忠助を促してそそくさとその場を離れた。

「お舞殿といい、さっきの娘といい、白沢殿の周りには面白い人物が多いな」

「恐れ入ります、上方から来たばかりでまだ江戸に慣れておりませんので、ご容赦を」

「なんのなんの」


 そんな話をしているうちに、江戸城へとたどり着いた。白沢と言えどそうそう来ることはなく、さすがに多少身構える。

 紛失の話はまだ内々の話らしく、忠助はじめ書院番たちの他はごく一部しか知らない事らしいので、なるべく目立たぬよう、御道具置所おんどうぐおきしょに行く。

 そこには忠助から連絡を受けていた例の同僚と、部屋の管理任されている役人がいた。


「大岡殿の同僚で山田次郎三郎やまだじろうさぶろうと申す。大岡殿には外部の人間を呼んでまで調べる必要はない、と申し上げたのですが、わざわざご足労頂いてかたじけない」

「部屋の管理をしております、橋本宇内はしもとうないと申します」

 山田次郎三郎は忠助と同じ、旗本のエリートである。

 次男だか三男だかわからない名前であるが、この時代にはありがちな名前で、父親が次郎でその子供の三男の場合、次男の三男という意味で次郎三郎と言う名前があったそうだ。


 橋本宇内のほうは見た所一般的な身分の武士という感じであった。

「ご丁寧なごあいさついたみ入ります。町医者をしております、白沢です」

「白沢殿は謙遜しておられるが、江戸で一番の名医にして、失せものを探させれば日本一というお方じゃ」

「白沢殿のお噂はかねがね伺っております」

「もったいないお言葉でございます。早速ですが最初に確認いたしますが、お部屋を管理されている方、橋本様とおっしゃいましたか、山田様が茶道具と取りに来た時対応されたのはあなたですか?」


「はい、わたくしです」

「その時の状況を教えていただけますか?」

「はい、あの日は山田様が茶道具を取りに来られて、私は部屋の外で待っていました。山田殿はしばらく部屋の中を探されていたようですが、『ない、ない!』という声が聞こえまして、私も部屋に入ったところ、空の箱を持った山田様がおられました」

「間違いありませんか?」

 白沢が次郎三郎にも確認すると「間違いない」との返事が返って来た。

「上様愛用の茶器が無くなったというふうにおっしゃられていて、部屋中を探されたようでお手はすすで黒く汚れていました」

「これも間違いないですか?」


「あ、まあ手が汚れていたのは後で気がついたが、部屋の隅まで探していたのでその時汚れたものかと存ずる」

「で、二人とも部屋を出て、大岡様に相談したと」

「その通りでございます」

「大変失礼な話になりますが、出た後に山田様の体はお調べになられましたか?」

 部屋の管理人である宇内に聞くと、少し恐縮して次郎三郎の方を見た。


「ええ、山田様の方から申し出ていただいて、『わしが盗んでおらぬことを、そなたが証明してくれ』と言われまして。念入りに調べましたが、持っておられませんでした」

「山田様が取りに来られる前に持ち出された可能性はありませんか?」

「私の他、三名が夜も含めて交代で管理をしておりますので、何かあれば気づくはずです。名品とまでは行かなくとも、それなりに高価なものを置いておりますので、その辺りはぬかりありません」


 宇内がしっかりした口調で断言した。

 後、この箱ですが、前回仕舞いに来た時には中身はあったんですね」

「はい、私が木箱の中も確認いたしましたので」

「なるほどわかりました、では一旦橋本様はまた通常の業務にお戻りください。我々は少し中を調べさせていただきます」

 白沢がそう言うと、宇内は礼をして、部屋の前の机の前戻って行った。


「さて、じゃあ実況見分といきますか」

 三人は御道具置所おんどうぐおきしょの中への入って行く。

 部屋は外から侵入できぬよう窓は最小限で少し薄暗い。そして天井まで届きそうな棚が回廊の壁のように配置されており、そのほとんどは木箱に入っていた。

 中身は花瓶や壺、掛け軸や筆など装飾品から日用品まで置いてあり雑然としていたが、きれいに整頓され掃除も行き届いていた。


「大岡様も探されたんですよね?」

「うむ、無論だ。しかしあまり人を呼ぶと大事になってしまうので、部屋の中を探したのはわしと山田殿と先ほどの橋本殿だけじゃ」

「元々茶壷が入っていた箱を見せていただけますか?」


 忠助は古めかしい木箱を白沢の前に置いた。

 ちょっとその箱を触った白沢は即座に言った。

「とりあえず、箱の中身の物がどこにあるかは検討がつきました」


 第三幕に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ