おてんばソフトガールとその父親の日常
父、拓造は日に日に不良になってく我が息子を心配していた。
野球が好きで好きでしょうがなくって、
プロを目指して日々白球を追いかけていた大夢のことを。
ある日のこと。拓造は市内のソフトボール場まで車を走らせていた。
決しておじさんの集まりではない。娘の迎えだった。
彼女の名は坂上杏悠実。下の名前は難読なのであゆみと平仮名表記する。
大夢の2学年下で、小学女子ソフト関東大会の優勝投手でもある。
あゆみは小学2年から大夢と一緒に野球を始めている。
運動神経は抜群だったが小柄だったため、
野球だと試合に出してもらえないのを理由に、
小学5年からソフトボールに転向した。
本当は大夢が中学に上がるのに伴って信頼できるキャッチボール相手が居なかったからなんだけどな・・・。
ソフトボールチームに入団早々あゆみは結果を残す。
当初は下位打線だったがヒットや長打を量産するごとに気がつけば先頭バッターに固定されていた。
ポジションはセカンドが主だ。新人チームではピッチャーも任されるようになった。
3枚の強力な看板投手陣の1人として、最終学年では関東大会の頂点に昇りつめた。
元々特別なセンスはなかったがとにかく飲み込みが早く、根気強かった面もあり、数多くの実践によってメキメキと上手くなっていった。
あの陸上バカで筋肉バカだった拓造も、あゆみの頭の回転の良さに驚いていた。
全国を見据えた強豪との練習試合であゆみは無失点に抑えてきたようだ。
拓造はご褒美にあゆみの好きなハンバーグ屋に連れていった。
拓造は若々しく見えて、あゆみは高校生に見えるもんだから、
店員さんにカップルと間違えられておすすめメニューを紹介されてしまった。
父はふざけて「俺このかわいいの食べるから、あゆみはこのゴージャスなやつ食べていいよ」
娘は「も~、そう言うんなら一緒のやつ頼もうよ~」
「そんなことしてたらマジで太るぞ~(笑)」
「別にいいよ~。体当たりして突き飛ばしてやるから~(笑)」
「や~め~ろ~よ~www」「いいじゃん別に~www」
親子揃ってバカやっていた。
まぁ結局グランドメニューから選んだんですけどね。
もちろん大夢の話になって、
「あゆみ、大夢に何かガツンと言っておいてくれ。俺が言っても手遅れな気がするんだ。頼む、この通り!」
「お兄ちゃんもしょうがないやつだなぁ。わかった。私、何とかしてみる。」
あゆみは引き受けた。
大夢は、再び野球を志してくれるだろうか。
拓造は食が細くなったが、あゆみはがっつり食べてきた。
ハードな試合をしてきたはずなのに言葉もハキハキしていて食欲も旺盛で、
彼女がまだ小学六年生だとは、この店に誰一人知る由もなかった。




