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BIG DREAM(1)  作者: えふわん
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4/12

お兄ちゃんの意気地なし!

大夢の妹、あゆみは東京で行われた女子ソフトの全国大会から帰ってきた。


結果は初戦敗退、といってもまさかのサヨナラ負けを喫したのである。

前評判では優勝候補の一つに数えられていた。

強力な投手陣と例年にない攻撃力、例年以上の安定した守備。

優勝した関東大会では失策ゼロで勝ち上がってきた。

むしろ投手陣が強力過ぎて前に飛ばすバッターが中々いなかっただけかもしれない。

全国では容赦なく積極的に振ってくる。あゆみも県大会や関東大会以上のレベルに動揺を隠せなかった。

しかし、関東大会で様々な局面を抑えてきた自信を背負っているため、少々のことではへこたれない。

3ー2の1点リードで迎えた7回裏、先発のあゆみに代わって別のピッチャー。あゆみはセカンドに回る。

さすがに緊迫した中で6回も投げたせいかあゆみの腕は限界に達していたのだ。

「もう今日は投げられない・・・あとの2人には頑張ってもらうしかない・・・この試合取ったら次の相手は間違いなくコールドで勝てる、それなら今日は私投げなくても良い・・・」

7回表と裏の間にこう考えていた。

「本当はスローイングの負担の軽いファーストを守ったらいいけど、他にセカンド守れる子がいないからなぁ・・・最悪下級生に出てもらうしかないとリスクあるし。投手は揃ってるけど守備はできる人が限られる。優勝したとはいえ、ある意味ごまかしてこれたのかもしれない。意外とうちのチームは層が薄いのよねー・・・」

一つアウトを取った直後だった。あゆみの腕に激痛が走る。

「もう投げるの無理かも・・・でも私打たなきゃ、今日の3点全部私の打点だもの。」

セカンドの深めのゴロを逆シングルでさばくものの、投げずして内野安打になった。

「ふぅ、助かった・・・トスくらいならできるでしょ、ゲッツ-狙いに行こう」

しかし、次のバッターを四球で歩かせワンナウト1、2塁。次のバッターの時だった。

初球を狙われライト線ギリギリをフェンスにダイレクトする、長打になった。

あゆみは中継に・・・入らなかった。むしろ途中から投げたピッチャーが入ってくれた。

あゆみは、もしかしたらばれたのかもしれない・・・と思った。

2塁ランナーはホームイン、サヨナラを狙った1塁ランナーは辛うじてアウトに出来た。

結果オーライだったが、あゆみが中継に入っていったら間違いなくサヨナラになった。

次のバッターを三振に取り、2アウト3塁に。

ここを抑えればタイブレークの延長戦に入る。

しかし、すっぽ抜けの暴投でサヨナラ負け。

あっけない終わり方ではあったが、あゆみ自身も、あゆみの同級生自身もこの悔しさは中学で晴らそうと約束した。


という話をあゆみは延々と力説したのだが、大夢は、

「全国行けただけいいじゃん、なんでそれ以上のことを欲張る?」と。

あゆみは「いやいや、普通悔しかったり情けなかったりしたらもっともっと上手くなろうとして精一杯努力するじゃん?」

「その普通が俺にはわからないんだよ」

「いやいやいや、あんなに好きでやってきたのに、私もお兄ちゃんとキャッチボールしてきたのに、一部のカスの為にそう簡単に終わらせるのはもったいないじゃん?」

「・・・」

大夢はしばらく黙った。

「いいじゃん別に。俺の人生だし。親父なんてさ、自分は陸上やって体操のおにいさんやって海外で経営学と林業学んできて野球とは無縁なのに野球続けてくれって言う意味がわかんない。とにかく今は学生としての仮面かぶっといて大人になったら好きなことして生きていくことにしてるから。誰に何と言われようと勝手にしてくれ。」

あゆみはぶち切れた。

「勝手にしろって言われて放っておくバカがどこにいんだよお前!」

大夢は、今までにないあゆみの怒っている姿に驚きを隠せなかった。

「そもそも自分が楽して生きてきたいだけじゃないの。この日のためにこれだけやってきたっていう人の苦労もわからないのか。」

「苦労も何も、今の俺にはそうするしかないんだよ。」

「あっそうですか。じゃあどうぞ勝手にして下さい。自分だけがつらいと思ってるなんてご冗談を。私はそれを乗り越えた人だから。」

あゆみはすっと立ち上がって、

「一つ乗り越えたとしても、まだ乗り越えなければならない壁がある。その悔しさは中学、高校で晴らす。私は今しかできないであろうことを一生懸命やる。」

と言い残し、部屋に戻っていった。


・・・。あゆみはソフトの実力だけじゃない。風格や観念も一流と呼べるのはまさに奇跡であろうか。

大夢は、ベッドの上で仰向けになり足を組んで考え事をしていた。

「この日のためにこれだけやってきた人の苦労」

「今しかできないことを一生懸命」

あゆみの怒号が頭の中をよぎる。

大夢の中で何かが変わりそうだ。

とりあえず、大夢は陸上部に転部しながらも親譲りの運動能力を活かして、

冬期の記録会と駅伝の大会に専念する。

その一方で、松葉先輩と息抜きにキャッチボールやノックを受けてもらうことにしている。

家族には内緒だ。見えない努力が冬越した時に結果になって現れるだろう。

今は、大夢はそのペースでいい。野球に疲れているだけかもしれない。

野球部の再転部も視野に入れながら今できる全てのベストを尽くそうとしていた。

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