演出
「へー、あずさ、『まだ』が好きなんだ」
「うん」
「特にどっちが?」
「そりゃあ、千堂でしょ」
「違うよ」
「え? 白川なの?」
「うん」
「どこがいいの?」
「優しそうじゃん」
「そうかなー? 頼りなさそうだし、ムッツリスケベって感じもするけど」
「ひどーい」
「うそうそ。からかうのでわざと言ったんだよ。そんな、漫画みたいに可愛らしくほっぺたを膨らませないの。さっすが、モテる女は違うねえ」
「もー」
「だから、ごめんって」
「それにしても、『まだ』って、基本的にフリーでしゃべる番組に全然出ないから、本当の人間性が謎だよね。どんな性格なんだろう?」
「今はさ、そういう疑問はAIに訊けばすぐにわかるんだよ」
「千堂の言い方、誇張しすぎ! ウケるー。キャハハハハハ」
……。
「おい」
「ん?」
「昨日の『まだなの?』、観た?」
「わかりきったことを訊くなよ」
「悪い。コント、めちゃくちゃ面白かったな」
「まあな」
俺の名前は、柴田公平。今は、自分が通っている高校のクラスの教室で、休み時間であり、話しかけてきた相手は西留直樹という男だ。
「なあ、あの女子たちの会話、聞いた?」
西留は、少し離れた位置でしゃべっている本人たちには聞こえないように、声のボリュームを落として俺に尋ねた。
「……ああ、聞こえたけど、それが?」
「前から思ってたけど、お前って白川に似てるよな。顔も雰囲気も、何より、お互いに笑いの才能があるし」
「えー? 似てねえだろ、別に」
「似てるって。つーことは、唐沢が白川のことを好きなんだから、お前も脈があるってことじゃん。よかったなー。おめでとう」
「なんで俺が唐沢に好かれておめでたいんだよ?」
「とぼけたことを言うなよ、わかってるくせに。付き合えたら嬉しいだろ?」
「別に」
「嘘言えよー。ああ、うらやましい」
「付き合ってねえのに、うらやましがられてもな」
「しかし、ほんと、『まだ』って、実際はどんなキャラなんだろうな? 芸人なのにしゃべるのが苦手だから、フリーのトークが中心の番組に出ないらしいけど」
「それ、嘘じゃねえかな」
「え? 何が?」
「しゃべるのが苦手っていうの。フリーで話すのが基本の番組に出ないのは、どういう人間なのかを見せない、演出の一環なんだと思うぜ」
「ええ? そんなことをする意味ある?」
「あるだろ。よくキモいキャラで登場して人気になったのに、フリーでしゃべる番組に出まくって、普通の善い人だっていうのがバレちゃうから、消えていく羽目になるんだよ。『何かまだみんなが知らない引き出しがあるな』って思わせて、世間に興味を持たせ続けるのがミソで、それを『まだ』の二人はわかってるゆえに、プライベートもまったく見せないし語らないんだ」
「へー。そっかー」
「って、そうじゃないかっていう、俺の予想だぞ」
「でも、合ってるよ、多分。俺、すげえ納得したもん」
「……」
「ん? どうした?」
「いや、それを確かめてみるのも面白いかなと思って」
「はあ? それって?」
「あいつらの本性をさ」




