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最近のお笑いはつまらない? だったら俺/僕たちが面白くする  作者: 柿井優嬉


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10/10

俺のほうが

 俺は今、唐沢あずさと二人でいる。

 それは、『まだ』のお笑いライブを観にきたからで、一緒に劇場で鑑賞した。


「え? 二人だけで?」

「ああ」

 学校の廊下でその誘いをしたとき、唐沢は露骨にためらった。まあ、当然だ。俺たちは単なるクラスメイトの間柄なのだから。

「俺は必要最低限しかしゃべらないから、そのほうが集中して観られると思ったんだけど。嫌なら、別の奴と行くから、まったく構わない。どうする?」

「こいつ、本当にお笑い、それに『まだ』のことが好きなんだよ。そんで、唐沢も『まだ』のファンだって俺が小耳に挟んで、柴田に教えてやったんだ」

 西留がそうアシストしてくれた。

「うーん……じゃあ、どうするか、予定も含めて、ちょっと考えて返事するね。断っちゃうかもしれないけど、誘ってくれてありがとう」

 それから少しして、唐沢は「行く」と言ってきたというわけだ。


「やっぱり『まだ』が一番面白かったね」

 終演となり、隣に座っている唐沢が俺に話しかけた。

「ああ」

 本当は「まだ」の単独ライブが良かったのだが、申し込みの倍率が高すぎて、とてもチケットを入手することはできないのである。しかし、テレビのレギュラーは一本だけで、動画配信もやっておらず、劇場でネタをやる活動は頻繁に行っていて出演するステージは多いために、別のコンビやグループと合同のなら購入は可能であり、今日は所属事務所「まっとう」によるライブで、そこの他の芸人たちと一緒のものを観たのだった。

「じゃあ、あの二人がここから出ていくところを見にいこうぜ」

「え? でも、さっき、出待ちは禁止って」

「一応そう言っとかないと、たくさん集まりすぎちゃうからで、平気だよ」

「……」

「俺、ここの劇場にしょっちゅう来てるから、どこに行けばちゃんと見られるかわかってるからさ。ちょっと話したりできるかもしれないし、このまま帰ったらもったいないよ」

「……じゃあ」

 唐沢は、しょうがなくという様子で、小さくうなずいた。


「ねえ、話が違くない? 他に見にきてる人、誰もいないよ」

 俺たちは今、路上を歩いている。

「たまたまっしょ。それに、他の出待ちがいないほうが、しっかり見れるし、会話できる確率がさらに高くなるんだから、いいじゃんか」

「……それはそうだけど……」

 !

「ほら、早く来いよ」

「な、なに? 急に強気に」

「だって、もたもたしてよ。せっかくのチャンスをそのせいで逃しちゃったらどうすんだよ!」

「そんな……」

「だから、早くしろって!」

「おい」

 少し離れた地点から声をかけられて、俺たちはその方向へ視線を注いだ。

「なに、女のコに乱暴な態度をとってんだ? やめろよ」

 話しかけてきた人物である、「まだ」の白川が言った。

「あ、ちょっと、こいつ、とろくって、ついカッときちゃいまして。高校のクラスメイトなんですよ。暴力は振るってませんので。すみませんでしたっ!」

 俺は思いきり礼儀正しくおじぎをした。

「……そうか? 本当に大丈夫? きみ」

 白川は、唐沢に問いかけた。

「あ……はい。ありがとうございます。ほんとにクラスメイトなんで、問題はないです」

 唐沢は緊張の面持ちでそのように返した。

「そ。じゃ」

 安心したようで、そう白川は言い残し、近くにいた千堂と、おそらく事務所の車に乗り込み、去っていったのだった。


「へー。優しいじゃん、白川」

「ね。言った通りだったでしょ?」

 休み時間の教室で、唐沢がクラスの別の女子に、嬉しそうにしゃべった。

 そんな笑顔のあいつと、俺は目が合った。

 すると、向こうは、にらむような表情になって、プイッと横を向いた。

「勝った」

「え?」

 俺のつぶやきに、目の前にいる西留が疑問の声を発した。

「白川は、隠してても、実は優しいってのが見抜かれてる。でも、俺はバレてない。本性を見せない部分で上回ったって話だよ」

「ふーん。だけど、いいのか? 唐沢に嫌われたままで。お前が白川と言葉を交わさせてやったわけで、正直に話せば、それこそ付き合うところまでいけるかもしれないのに」

「いいんだよ。卒業したら、本丸のお笑いでも『まだ』の上をいくんだから、それだけで。人生、欲張るもんじゃねえんだ」


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