掛け合い①
「この前、タブレット菓子を口に入れたら、なんか変なんだよ」
「え? 変?」
「ああ。で、ケースを見たら、グレープ味を買ったつもりが、グレープフルーツ味でやんの」
「ハハハ。マジで? ドジだねー」
「でも、紛らわしいだろ? その二つ。お前、なんでそんな似た名前なのか、知ってっか?」
「いや」
「今はさ、そういうのはAIに訊けばすぐにわかるんだよ」
「だからー、それは僕がきみにいつも言う台詞だっての」
「とにかくよ、調べたら、グレープフルーツの実の付き方が、ぶどうに似てるからなんだって」
「へー」
「だけど、それ、おかしくねえ? ぶどうが野菜とか別の種類のものだったら、ぶどうに似た果物っていうのでグレープフルーツでいいけど、ぶどうが果物なのに、ぶどうに似た果物って、訳わかんねーだろ」
「あー、確かに、言えてるね」
「カラスに似た魚は『クロウフィッシュ』でいいけど、カラスに似た鳥を『クロウバード』とは名付けねーよな、普通」
「んー、その例えはよくわかんないけど」
「そのおかしいのを放置してるせいでこっちは損害を被ってんだから、ちゃんとしろってんだ」
「誰に向かっての発言なの? それ」
「あとさ、日本語がテキトーすぎるのも腹立つよ」
「え? どこが?」
「例えば、柳ってあるじゃんか? 木へんで、しだれ柳とかの、柳」
「うん」
「あれを名前で使うとき、『柳沢』なんかはいいけど、下が『岡』だと『やなおか』で、『ぎ』が送り仮名じゃねえのになくなるじゃん。まあ、それはギリ許すとしても、上に『青』がくると『あおやぎ』で、『やなぎ』の真ん中の『な』を取るって、そんなのあり? めちゃくちゃだろ?」
「あー、言われてみれば。しかし、いろいろとよく気がつくねえ、きみ」
「ほんと、ちゃんとしろってんだ」
「だから、それ、誰に対して言ってんの?」
「責任者だよ」
「はあ? 責任者?」
「ちょっと、あんたたち!」
「は?」
「何ですか?」
「今、会議やってんのに、うるさいんだけど」
「あー、すみません、宮本さん」
「なるたけ小さい声で稽古します」
「何だ、ネタの練習だったの?」
「はい」
「やっぱ、うちの事務所、狭すぎですって」
「うるさいわね、余計なことは言わなくていいの。でも、ちゃんと練習してるんだ。よかった」
「何の安心ですか? それ」
「そりゃ、しますよ、稽古くらい」
「いや、二人とも、自分たちが天才だって、うぬぼれてるのかと思ってさ」
「そんなー。なあ?」
「うん。決まってるじゃないですか。もちろん、うぬぼれてますよ。それも、ものすっごく」




