船出
俺、千堂雅樹と、友人の白川友哉は、社交性の違いから、正反対のタイプと思われる。
しかし、重なる部分は少なくない。まず、容姿といい体型といい、どちらも見た目は平凡で、一回会った程度では相手に忘れられてしまうことも多い。
それから、俺は他人とわりあいすぐに仲良くなれるし、何でもそつなくこなせるほうなので、満たされた日々を送っているとよく思われるが、没頭できるものがなく、心にぽっかり穴が開いたような状態だった。白川も、おとなしい印象で無気力に見られがちだけれど、熱中できるものを欲していたのだ。
そして俺たちの一番の共通点は、大が付くほど、お笑いが好きなところである。
「最近のお笑いはつまらないって口にする人間がたくさんいるけど、お前、どう思う?」
あるとき、俺は白川に尋ねた。
「んー、コメディアンの数は昔と比べて圧倒的に増えてるんだから、競争が激しくなってレベルが上がるんで、普通に考えればそんなはずはないんだけどね。探せば、良いものはいっぱいあるよ。でも——」
その続きは、聞かなくても、俺はわかった。
「確かに、全体的にはあまり面白いと思えないんだよねー」
「だよな」
俺も同意見だったのだ。
必然的に、俺たちの進む道は決まった。尋常じゃないくらいに好きで、やると充実感が得られるものであり、「だったら自分たちがその世界を面白くしてやろうじゃないか」ということで。
俺は、周りにどう思われているのかわからないが、けっこう保守的な人間だから、白川とでなかったら、普通に会社勤めでもして、お笑い芸人にはならなかったに違いない。いつだったか、あいつもそう言っていた。
「所属する事務所はどうする?」
いよいよコメディアンとしての歩みを始めるというタイミングで、俺は白川に問いかけた。今はどこの芸能事務所もお笑いスクールをやっているから、入るところを選択すれば済む。その場所で見込みがあると認められれば、晴れてデビューとなるわけだ。
「どこでもいいよ」
「まあ、そうだな。俺も一緒。じゃあ、一番近くにあるとこでいいか?」
「うん」
すぐさまネットで調べて——。
「ここだ。『まっとう』? 聞いたことないし、変な名前だな」
「それでもいいよ、そこで」
「よし」
そうして俺たちは、行ってみたら小さすぎてとても学校とは呼べず、ほとんどかたちだけの、「まっとう」のお笑い養成所に申し込んで、芸人生活をスタートさせたのだった。
あ、そうそう、言い忘れてたけれど、俺たちはともに音楽も大好きだ。
聴くのはほとんどが邦楽なのに、一番好きなミュージシャンはビートルズなのも共通している。




