出会い
「なあ、『カルボナーラ』と『叶うことなら』って、似てねえ?」
「はあ? 似てるっていうか、寄せていってんじゃん」
「何だよ? 寄せていってるって」
「今、『叶うことなーら』って、語尾を伸ばして言ったでしょ?」
「ああ? 寄せちゃ悪いのかよ?」
「別に悪かないけど」
「じゃあ、その、寄せてるのはなしで、でも似てるだろ?」
「うん、まあ……」
「それから、『小松菜』と『困っちゃうな』も、似てねえ?」
「ええ?」
「あと、『五十二』と『ご自由に』も似てるだろ?」
「フフフ。何なの? それ。さっきから」
「すごい発見じゃねえ?」
「発見……まあ……」
「それとさ、『今日って木曜日だったんだー。なんか火曜日な気がしてたー』みたいなとき、ない?」
「あー、あるね」
「あれ、何なんだろうな? 祝日があったから、その日を日曜日の感覚にしちゃったせいだ、とかならわかるけど、特に何もないのにそうなったりするじゃんか。どういうことなんだよ?」
「いや、知らないよ。僕に言われても」
「なんか、あるんじゃねえの? そういうのの現象名が」
「えー? ないでしょ。あるのかな?」
「今はさ、そういう疑問はAIに訊けばすぐにわかるんだよ」
「それ、僕がいつもきみに言ってる台詞じゃん。なにかっていうとしょうもない質問をしてくるんだから」
「あ、そうそう、これも訊きたかったんだ。朝、起きると、決まって目やにが付いてるから、鏡を見ながら取るんだけど、そんとき、なぜか鼻の下を伸ばしちゃってるのに気づいたんだよ。あれは何なんだ?」
「フフフ。マジで? 何なの? それ」
「なに、笑ってんだよ。お前だって、きっとなるぞ」
「いや、ならないでしょ」
「なるって。目にゴミが入ったと思って、取ろうとしてみ」
「……あれ? ほんとだね」
「だろ? 何なんだろうな? これ。多分、現象名があるだろ」
「それ、『現象名』ってワードを口にしたいだけでしょ?」
「バ、バレたかー」
「フフッ。なに、その偉そうな言い方」
僕たちは、ともに通っている高校で、暇さえあれば、こういった具合に、いつもくだらない話ばかりしている。
しかし以前の僕は、ずっと独り、いわゆる「ぼっち」で、ほとんど誰とも何も言葉を交わさなかったのだ。
ところが、一年生から二年生に進級するのでクラス替えが行われ、一緒の学級になった一人の男子生徒が、大げさに表現すると僕の人生を変えた。
それが、今、行っていた会話の相手の、千堂雅樹である。
千堂は、僕と真逆で、社交的だ。男子とも女子とも気兼ねなくよくしゃべり、友達と呼んでいい生徒がたくさんいる。
だが、これまでの学校生活で見てきた経験上、そういう人間にかぎって、楽しいといった印象だけで、しっかり耳を傾けると、口にしている内容はたいしたことがない。はっきり言えば、つまらないものだ。
だけど、千堂は違った。周囲の生徒を頻繁に笑わせるのだが、本当に面白いのである。
へー、やるじゃん。こういう奴もいるんだな——。
僕は密かに感心していた。
そんなある日の放課後、自宅へ帰るために学校の校門を通過したところで、後方から誰かに呼び止められた。
「白川くん」
申し遅れたが、僕の名前は白川友哉だ。
振り返ると、声の主は千堂だった。
「いきなりで何だけど、きみは面白い奴だろ?」
「は?」
僕はぽかんとなった。
「わかるよ。なんとなく、雰囲気で」
その言葉に、僕は共感した。千堂がクラスの他の生徒たちを笑わせる発言を聞いて「やるじゃないか」と思ったと述べたが、実はそういった場面を見る前から僕も「こいつは面白い人間に違いない」となんとなく雰囲気で感じ取っていたのである。
「学校生活、楽しいほうがいいからさ。仲良くしてくれよ」
「……別にいいけど、そんな期待に応えられないかもよ?」
「大丈夫。普通に接してくれれば」
そうして、たったそれだけで、僕たちは友人関係になったのであった。




