番外編:可愛いだけじゃダメなんです ~アイリーン視点~
またまた書いてしまいました。
リゼの友人、アイリーン視点のお話です。
良かったらお付き合いくださいませ。
「アイリーンお願い、力を貸して‼」
婚約者との誤解が解け、ここ最近は惚気話ばかりだったリゼがアイリーンの顔を見るなり、すがるような目で懇願してきた。
細かな経緯は知らないが、なんと国王陛下まで巻き込んでの大演壇を繰り広げ、めでたくお互いの思いを伝え合えたというリゼと政務補佐官ヴェルナス。
それ自体は友人としてとても喜ばしいことだけれど。
ヴェルナスの友人であり、アイリーンの婚約者でもあるギルバートに何があったのか聞いても、苦笑いをしてお茶を濁すばかりで詳しくは教えてくれないし、当のリゼも聞いてもいないヴェルナスとのやり取りは事細かに報告してくるのに、肝心なことは答えてくれなかった。
……でもまぁ、リゼが幸せならいいか。そんな風に思えるようになっていた矢先のことである。
「アイリーン、どうしたらあなたみたいな大人の色香漂う女性になれるのかしら⁉」
「ぐふッ!」
口にしたばかりの紅茶をゲホゲホと吐き出しそうになって慌ててナプキンで口元を覆う。
「……またどうして急にそんなことを⁉」
「ヴェルナス様は私のことを可愛いって言ってくださるけど……妻になる以上、それだけじゃダメだと思うの」
……大真面目に言ってるのよね
ほんと、この子のこういうところ好きだわ
以前も……まだ二人がお互いの思いを伝え合う前にも、こうしてリゼは一生懸命にヴェルナスの心を捕まえようとあれやこれやと趣向を凝らして真っすぐな気持ちをぶつけていた。
ギルバートによると、それらはヴェルナスにとっては劇薬なみの効果があったそうで。むしろ効果てきめん過ぎて逆にすれ違いの原因になってしまったようだが。
そんなリゼが今度はヴェルナスのために“大人の色香漂う女性“になりたいとは……。
「ふふ」
「アイリーン、笑わないで、私は本気よ」
「ごめんなさい、あなたがあまりにも可愛らしくて」
「アイリーンまでそんなこと言って。可愛いだけじゃダメなの!色っぽくなりたいの!ヴェルナス様のために」
これだから……
婚約者がこんなに愛らしいなんて、補佐官様も大変ね
「お化粧を変えてみようかしら?アイリーンみたいにゆったりと『うふふ』って首をかしげるように話すとか⁉それとももっと“こう”胸元を強調するようなドレスを着てみる?」
「あはっ」
至極真面目な顔をしながら自身の胸を持ち上げて寄せるリゼに、思わず口を開けて令嬢らしからぬ声を漏らしてしまった。
目尻に涙を浮かべて笑うアイリーンに、胸元からそろりと手をおろしながらリゼが非難めいた目を向ける。
「真面目に聞いているのに、笑うなんてひどいわ」
「ほんとにごめん。でもリゼは今のままで充分魅力的よ」
その証拠に……。
毎日毎日、恍惚の表情を浮かべたヴェルナスから、いかにリゼが可愛らしかったか、どんな仕草をして何を語り、その時の瞳が、微笑みを浮かべた唇がいかに美しかったかを、嫌というほど聞かされているというギルバートのうんざりした表情を思い出す。しかも最後には必ず『あ、でも僕の天使リゼに惚れるなよ』と釘を刺されるとか。『勘弁してほしいよ』と言いつつ、友人ヴェルナスがようやく掴んだ幸せを喜んでいるギルバート……。
「ふふ……」
「もういい。もともと色香がそなわっているアイリーンには、どうせ私の気持ちは分からないわ」
「ごめんって。……そうね、こんなのはどうかしら?」
ちょっとした悪戯じみた大人の色香作戦を思いついた私は、リゼの耳元に口を寄せ、そっと耳打ちする。
「……アイリーン‼さすがだわ‼そんな大胆な事、私にできるかわからないけど……ヴェルナス様にもっと好きになっていただくために頑張るわ‼」
拳を握りしめて気合いを入れるリゼに、治まったはずの笑いがまた顔をだす。
ごめんなさいね、ギル
リゼの新たな魅力にあてられた補佐官様に、また嫌というほど付き合わされてしまうかも……
穏やかな日差しの中、真摯でひたむきな愛すべき年下の友人の奮起する姿を、慈愛に満ちた笑みを浮かべながら眩しそうに眺めるアイリーンだった。
お読みくださりありがとうございました。
アイリーンたら小悪魔♡
リゼ、何をさせられるんだろう……。
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*hana*




