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4GB USB 〜29歳既婚者が過去に戻って一攫千金を狙ったけど現実は結構厳しそう〜  作者: ナカモリトマト


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22話 田植え

 朝の空気はまだ冷たかったが、日が昇るにつれて一気に暖かくなっていく。

水を張った田んぼは空を映し、風に揺れていた。


「今日は田植えだ。遅れんなよ」


「はい」


 ハウスで育てた苗箱を軽トラから降ろす。

青々とした苗を見て、少しだけ実感が湧いた。


(ちゃんと育ってるな……)


「ぼーっとしてんでねでぇ運べ」


「すみません」


 苗箱を抱えて田んぼ脇に並べる。

見た目より重い。


 準備が終わると、北大路さんが田植え機に乗り込んだ。

エンジン音が響き、ゆっくりと動き出す。

泥の中を滑るように進みながら、一定の間隔で苗が植えられていく。


(すげぇな……)


 まっすぐに揃っていく列は、見ていて気持ちがいい。


「おーい、来たよー」


 振り向くと、近所のおばさんたちが手を振っていた。


「おはようございます」


「若い子入ったんだってねぇ」


 遠慮のない視線に少し苦笑する。


「ちゃんと働いてる?」


「なんとか……」


「最初はみんなそう言うのよ」


 くすっと笑われた。

おばさんたちは慣れた手つきで田んぼに入り、機械が入れない端を手で植えていく。


「こうやるんだよ」


 教わりながら真似するが、うまくいかない。


「深すぎ」「もっと軽く」


 すぐに直される。

泥に足を取られながら続けると、いつの間にか膝下は泥だらけだった。


「いいねぇ、それでいいよ」


 笑われる。

嫌な感じはしない。

むしろ、少し楽しかった。


「苗!」


「はい!」


 減ってきた苗箱を差し替える。

田植え機は止まらず進み続ける。

単純だが、気が抜けない。


 気づけば汗が滲んでいた。

昼前、一枚の田んぼがほぼ埋まる。

整然と並んだ苗が、水面に揺れていた。


「いい感じだな」


「今年は揃ってるねぇ」


 その言葉に、少しだけ胸が軽くなる。

そのとき。

ふと、視線を感じた。

顔を上げる。

あぜ道の向こうに、人影が立っていた。

作業着姿で、じっとこちらを見ている。


(……誰だ)


 距離があって顔は分からない。

だが、確かに視線が合った気がした。


「どうした?」


「いや……」


 北大路さんに声をかけられ、目を逸らす。

もう一度見たときには、そこには誰もいなかった。


(気のせいか……)


 そう思うことにする。

だが胸の奥に、わずかな引っかかりが残る。


「午後もやるぞー」


「はい」


 笑い声も、風も、何も変わらない。

それなのに......


 この穏やかな一日のどこかに、

ほんの少しだけ“違和感”が混じっていた。

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