初めての共同(?)作業
スグルは女の子でも男の子でもないとは言うが、生徒と先生が同じ部屋で寝るのは普通ありえないことだ。
「ス、スグル、それはさすがに・・・」
「なに? ボクは凛斗のことを信じてるからこれを提案するんだよ。信じてなきゃ、出会ったばかりの人を同じ部屋で寝かせたりしないもん」
ふふんと誇らしげに言われるが、喜んでいいのやら分からない。
「し、信頼してもらえるのは良いけど、スグルは同じ部屋に俺がいて嫌じゃないの?」
素直にそこが気になっていた。
スグルの性別がどうであるかは正直懸念事項ではない。
男だと言われれば男に見えたし、女だと言われれば女に見えるからだ。
だがそもそも今日初めて会った相手が寝室に上がり込んできていいものか。
「嫌じゃないよ。凛斗はもっと自分に自信を持ちなよ。だからボクは寂しいって言ってるんだ。同じ部屋で寝るくらい、友達としてやってみたいんだ」
「友達?」
友達と言われて、少しくすぐったいような気がする。
「と、友達って・・・俺とスグルは一応、先生と生徒だぞ?」
「むっ、冷たいこと言わなーい。確かに契約上はそうだけど、振る舞いとしては友達。これ、約束ね。敬語もダメだし、僕のことを呼び捨てにしないのもダメ。友達として振る舞ってね?」
スグルは友達に飢えているのだろうか。
どこか口調には必死さがある。
「友達、いいでしょ?」
スグルがずいっと小指を突き出してくる。
思わず妹の朱莉を思い出す仕草だ。
「ふふ、ちょっと俺のきょうだいに似てる仕草かも」
無意識に笑いを漏らすと、スグルがどこか嬉しそうな表情を浮かべた。
「へえ、それすごくいい。ボクも凛斗のきょうだいになれた感じするかも」
俺は生まれてこの方、ずっと下に弟妹がいるのが常識だった。
だから一人っ子の気持ちはそこまでよくわからない。
だが嬉しそうなスグルを見るのは悪い気はしなかった。
「じゃあ、今日はもう夜遅いから、料理を作る練習をしたら寝よう」
明日にはスグルを高校に送り届け、俺も大学に行かなければならない。
「わかった! 料理作るの楽しみ!」
見た目からするとクールそうなスグルだが、はしゃぐと可愛らしい。
ハスキーな声が少しかすれるのも、嬉しさをしっかり表している感じだ。
「じゃあ今日の夕飯だけど、何がいいかな」
「ボクオムライスが好きなんだ! 凛斗、オムライスって作れる?」
「ああ作れるよ。だけど、今日からは一緒に作っていくんだ。料理の練習をしなきゃ意味がないからな」
昔からきょうだいの食事を作って来たから、料理のレパートリーはそこらの料理人に引けを取らないくらいある。
だがこれは家庭教師。
スグルと一緒に作らなければ意味がない。
「わかった、じゃあボクもがんばるよ」
俺とスグルはキッチンに向かって行って、料理の準備をすることにした。
先程リビングの掃除をしたついでにキッチンもきれいにしておいてよかった。




