スグル、これからもずっと
「というわけで、合格しました!」
それから月日が経ち、ついにスグルの合否発表の日が来ていたのだが・・・。
「聞く前に言われたな・・・」
スグルは俺が尋ねるよりも前に、合格通知表を見せてきていた。
これでは詮索する余裕も何もないのだが・・・。
しかしそんなスグルから手渡された合格通知表。
そこに書かれていた大学の名前は・・・。
「おいっ、東大なのかよ!」
まさか本当に同じ大学に入ってくるとは。
「ふふん、せっかくなら学校でも楽しく過ごせたら最高じゃん?」
スグルはワクワクした目つきを向けて来るが、スグルが入ってきた後の大学生活のことを考えると焦りもある。
もちろん楽しそうだとは思うが、どうなることやら・・・。
「大学に入ったら、先輩としてボクを導いてよね!」
そんなことを言われ、苦笑いを漏らすことしかできない。
導くというか、スグルならがんがん真っ直ぐに進んでいきそうなものだけれど・・・。
そして月日が経つと言うことは、朱莉も大人に近づいていくという事だった。
「お兄ちゃん、ちゃんと毎日カウントダウンしてる?」
アプリを開かれ、ちゃんと日数がカウントされているかをチェックされる。
「ふふふ、やっぱりドキドキしてきたんじゃない?」
くすくすと笑いながら言われ、俺も日に日に緊張感が高まって来た。
そしてスグルが合格となれば、お祝いにやってくる人物もいるわけで・・・。
「スグル、合格おめでとう! 私と同じ大学に入ってこられたのね!」
家に突如として突撃してきたのは、スグルのお母さんのヒビキさんだ。
「あら、突然来ちゃってごめんなさいね。ただ、いろいろお土産も持ってきたから上げてもらっていいかしら?」
ヒビキさんは仕事の合間を縫ってやって来たらしく、どうにも慌ただしそうな雰囲気だ。
しかし両手に持った紙袋にはケーキやら何やらを持っているらしく、完全にお祝いムードでもある。
しかも同じ大学と言っているということは・・・。
「ヒビキさんも、もしかして、東大出身で・・・」
「そうなのよ! あなたは後輩ってことになるわね」
なんとヒビキさんも俺と同じ大学を出ていたようだった。
というか、スグルの家はどれだけエリート一家なんだ・・・。
とまあそんな話は置いておいて、家の中が騒がしくなってきた。
「あっ、スグルくんのお母さんだ!」
前回の件もあってか、陸斗はすっかりヒビキさんのことを認知したらしい。
「ケーキもある!」
ヒビキさんからケーキをもらい、ゆかりと陸斗はテンションが上がったようだ。
「じゃあスグルさんの合格をお祝いして、みんなで夕食にしましょうか」
朱莉は夕食の準備を済ませてくれていたらしく、それからみんなで食事をとった。
「スグルが大学に行ったら、いろいろ凛斗くんにお世話になるでしょうから、今の内から先にありがとうって言っておくわ」
「ははは、そりゃ、ありがとうございます・・・」
これからスグルが同じ大学に入ってくるだけあり、ヒビキさんはそこからの生活を見越して挨拶に来てくれていたらしかった。
「でもそうなると、家庭教師ってのも形が崩れるかな・・・」
夕食を口にしながら、ふとスグルがそんなことを口にした。
確かに、家庭教師と言うのはそもそもは学習を目的としたものであって・・・。
まあスグルは家事だとかを習う家庭教師だったから、少し毛色は違うような気はするのだけれど、そこはどうなるのだろうか。
しかしその時、ヒビキさんが笑顔で口を開いた。
「うーん、もし凛斗くんたちが良ければだけれど、これからもスグルと過ごしてあげてほしいわ」
「・・・家庭教師としての形じゃなくても、いいですか?」
「ええ、前にも家族として過ごしてほしいと言ったように、これからもぜひ仲良くしてほしいわ」
「・・・ありがとうございます・・・!」
これからスグルと一緒に大学に行くとなればいろいろ騒々しくはなりそうだが、それはそれで面白そうだなとも想像する。
「それもこれも、みんながボクと一緒に過ごしてくれたからだよ」
スグルは嬉しそうに微笑んだ。
そう言われて、俺は今までスグルと過ごしてきた日々のことを思い返した。
そもそもは、塾長に誘われたことがこの件の始まりだった。
今となってはすっかり忘れそうになっていたが、俺は給料の良さにつられてスグルの仕事を選んでいたのである。
だがスグルと出会ってから、お金ではないものにいろいろと気付かされた気もする。
ゴミだらけだったスグルの部屋を一緒に掃除して、ベーグルを朝から買いに走ったり、途中でスグルが洗濯機を壊して俺の家に転がり込むことになったり。
それから文化祭ではスグルと朱莉が火花を散らしだしたこともあっただろうか。
だが、それらも今となってはすべていい思い出になっている。
「・・・これからも、一緒に過ごしていこうな、スグル」
俺がそう声を掛けると、スグルは一瞬ハッとしたような顔になった。
だがそれからすぐにはきはきとうなずいて、笑顔を見せた。
「もちろんだよ、こっちこそよろしくね、凛斗たち」
そして、月日は流れ、スグルが大学へと入ってくることになった。
さらに、四月を越したということは学期が切り替わるという事・・・。
「ねえお兄ちゃん、カウントダウンのアプリ、見てみた?」
朱莉の誕生日は、ついに今日になっていた。




