タオル一枚は許されない!
「じゃ、じゃあ、一口どうぞ」
朱莉は緊張しながらも、ヒビキさんにカレールーを小皿に乗せて差し出した。
ヒビキさんは嬉しそうに小皿を受け取ると、上気した様子で試食していく。
試食、試食・・・試食?
「お、おかわりいただけないかしら」
「も、もうひと口だけ・・・」
「もうちょっとだけ食べさせて・・・!」
ヒビキさんはすっかり朱莉のカレーにハマってしまったらしく、何度も何度もおかわりをくれと頼んできた。
「こ、これじゃあ一食分食べているようなものな気もするけど・・・」
朱莉はおかわりを差し出しつつ、そんなことを言っていた。
確かに、こんなにハイペースでお代わりをしていたら、普通に一食分食べきっていてもおかしくない。
「あ、あの、ヒビキさん」
それなので朱莉はとあることを提案するつもりらしかった。
「よければ今晩はうちで食べていきますか?」
そしてそれを提案すると、ヒビキさんは待っていましたと言わんばかりに飛び跳ねた。
「まあ、嬉しいわ! じゃあお言葉に甘えてそうさせてもらおうかしら」
というか、本当に狙っていたのかもしれないけど。
そんなこんなで一緒に夕食を食べることになった俺たち。
食卓をここまでの大人数で囲むことは初めてのような気がした。
「それじゃあ、いただきます」
みんなでカレーを一緒に食べる。
「う~ん、とっても美味しいわ!」
ヒビキさんは頬に手を当てて、いかにも満足そうな様子だ。
相当カレーが好きなのだろう、それからもなんどもお代わりをしていた。
「ヒビキさん、カレーがお好きなんですね」
俺がそう声を掛けると、ヒビキさんは「ええ」とうなずいた。
「辛口もいいけど、甘口だからこその美味しさがあるのよね・・・」
「わかる!」
陸斗はヒビキさんに同意した。
なんか、陸斗は新堂家と共鳴しやすい何かでも持っているんだろうか。
そうしてカレーを食べ終わった俺たちだが、ヒビキさんは何やら時計を見ながら不安そうにしていた。
「どうしたんですか、ヒビキさん」
「いえ、もうこんなに遅い時間になってしまったわ、と思って・・・いつもこの時間ならもうお風呂に入っているから・・・。美容にとって、夜更かしは大敵なのよ」
「ああ・・・」
確かにヒビキさんほどの美貌ともなれば、普段からその容姿に気を遣っていてもおかしくはないだろう。
「あの、凛斗くん」
するとヒビキさんは急に俺の方へ寄って来て、何か頼みごとをするかのように俺の方を見つめてきた。
しかし、こう、至近距離から見るとやはりデカい・・・すべてが・・・。
圧倒されていた俺だったが、ヒビキさんはすぐにお願いを伝えてきた。
「あのね、お風呂を貸してもらえないかしら」
「お、お風呂。まあ、いいですけど・・・」
「やったあ、ありがとう。私、どうしてもこの時間にはお風呂に入っておきたくって・・・」
それじゃあ案内してもらえるかしら?と言って、ヒビキさんは俺の腕を引いた。
それから俺は浴室を案内してやって、一応ヒビキさんでも着られそうなくらいのサイズの替えの服を用意しておいた。
「ヒビキさん、シャンプーやリンスとかは分かりますか?」
「あら、そう言えば分からないわね・・・」
「ああ、それだったら、入って右がシャンプーで・・・」
俺は扉越しに説明を始めたのだが、その次の瞬間に脱衣所の扉が開いた。
タオル一枚の状態でそこに立っているヒビキさん。
「ちょ、ちょっとーーーーっ!」
流石に目に毒過ぎるというか、情報量が多すぎる!
俺は慌てて目を覆ったが、対するヒビキさんが隠そうとしてくれない。
確かにスグルもタオル一枚で出てくることがあったが、スグルはまだ子供だったし、どこかきょうだいがふざけているような微笑ましさもあった。
だが相手がヒビキさんとなると話は違う!
とんでもない美貌と、とんでもないデカさから繰り広げられる視界の暴力・・・!
「ヒ、ヒビキさん! 扉閉めて・・・!」
俺は慌てて頼み込んだのだが、ヒビキさんは自分が何も悪いことをしていないと思っているのか、ぽかんとした顔のままだ。
それどころか。
「こっちまで来て説明してくれない?」
「いや、それは・・・!」
なんでスグルもヒビキさんも、親子そろって恥じらいと言うものを知らないんだ・・・!




