なんでもいいから服を着ろ!
校庭の辺りまでやってくると、そこには様々な出店が並んでいた。
フランクフルトや射的、チョコバナナだとか綿菓子もある。
この様子ではだいぶ縁日に近く思えるけれど・・・。
すると手を繋いでいた様子を目撃したらしい他の生徒から声が飛んできた。
「え、あれどういう状況・・・?」
そんなの俺が一番疑問に思っている事ではあるのだけれど・・・。
「てか、あれってスグルさんだよね・・・あれって彼氏? それとも家族・・・?」
俺との関係が探られているらしい。
というか、スグルは本当にこの学校では有名人らしい。
まあこの頭の良さと美貌を兼ね備えているのならば当然なのかもしれないが。
そうやって歩いていっていると、射的のコーナーまでやって来た。
「二人とも、射的だよ! やってみない?」
スグルからそう言われ、せっかくだからということでやっていくことにした。
射的などいつ振りにやるだろうか。
子供の頃の縁日でやったっきりのような気もする。
「じゃあ誰からやる?」
「せっかくならお手本見せてよ、凛斗!」
スグルに言われたので、まずは俺から射的を行うことにした。
おもちゃの銃を構えて、並べられている景品を撃ち抜いていく。
「頑張れ、凛斗!」
「頑張って、お兄ちゃん!」
二人からの応援を受け、出来はそこそこと言ったところだった。
八発撃って、当たったのは四発。
手に入った商品はよく分からない駄菓子数個だった。
「あはは、ごめん・・・そんなに参考にならなかったかも」
駄菓子を二人に分けてから告げると、やけにスグルが意気込んだ様子で銃を持った。
「凛斗のかたきはボクが討つよ! 任せて!」
スグルは銃を構えたままめちゃくちゃに撃ち始め、四方八方にコルクが飛んでいく。
「・・・あれ、弾なくなった?」
スグルはカチカチと引き金を引いていたが、どうもあっという間に弾が切れたようだった。
なんと一発も当たっていない。
どれだけエイムが下手なんだ・・・!
前に運動神経が下手だと言われて動揺していたが、それが如実に出た結果のような気がする。
「もう、仕方ないわね・・・貸してちょうだい」
朱莉はツンとしたままスグルから銃を受け取ると、肩に担いで商品たちを狙い始めた。
まさにプロのスナイパーのような表情だ。
そして一気に引き金を引いたかと思うと、見事なまでに景品たちを撃ち落としてしまった。
「あ、朱莉・・・すごい・・・!」
「えーっ! 朱莉ちゃんこんなに上手なの⁈」
スグルは跳ねあがって喜び、朱莉の肩をバンバンと叩いた。
「まあ、このくらいなら平気かしらね」
朱莉はすまし顔のままだったが、俺の方を向くと得意げな表情を見せてきた。
それから景品を受け取ったが、その中にペアリングが入っていた。
「・・・あのさ、今日だけでいいから、これ着けてみない・・・?」
朱莉にそう問われ、俺は喜んでリングを受け取った。
「いいよ。ほら、どうかな」
リングの大きさが男性用ではないようなので、着けられたのは小指にはなってしまったが、朱莉は自分とおそろいのリングが着いたことに嬉しさを覚えてくれたようだった。
「よし、それじゃ他のところも廻ろうよ!」
そう言ってスグルは俺たちの腕を引き、俺たちは三人で文化祭の様々なところを見て回った。
段々と太陽が傾いて夕方になっていったが、それでも楽しく過ごすことができた。
そして一通りの巡回を終えると、光莉たちと再会した。
「お兄ちゃんたち、楽しめた? って・・・ふふ、三人で手つないじゃってどうしたの?」
光莉と再会したころにも、俺たちはまだ手を繋いでいる状態だった。
妹にその光景を見られたのが恥ずかしかったのか、朱莉は慌てて手を離す。
「え、えっと、はぐれないようにってことだっただけ・・・! 別に他の意味はないから!」
「ふふふ、大丈夫。わかってるよ」
光莉は微笑んだ。
「さて、そろそろ帰らないとね。もう陸斗とゆかりが眠たいって言いだしちゃったの」
ふとゆかりと陸斗の方に目をやると、彼らは目を擦ったりあくびをしたりしている。
これじゃあこのまま寝てしまってもおかしくないだろう。
「そうだね、早く帰ろうか」
ゆかりと陸斗が寝てしまわないうちに家に帰ることにした。
そうして俺たちは帰宅し、まず陸斗とゆかりが寝てしまわないうちにお風呂に入ってもらうことにした。
「ボクは二人がお風呂から出たら入るよ!」
スグルはそう言ってリビングでゲームを始めた。
朱莉とスグルは文化祭の片付けなどがあったので帰ってくるのが遅くなるはずだったが、どうもものすごい勢いで仕事を終えて帰宅してきたらしかった。
俺はリビングのソファでくつろいでいたが、ふと朱莉が傍に寄って来た。
「あ、あのさ、お兄ちゃん・・・」
何か息を飲んでいる様子に俺も姿勢を正す。
「どうしたんだ?」
「その、スグルさんと私のクラスの出し物を比べるって言う話・・・。どっちのほうが好きだった?」
ああ、そうか、そういえばそんなことを言っていたなと今になって思い出した。
しかしどうしようか、二人の間に優劣を付けるなんてどうにも気が引けてしまって・・・。
「・・・お兄ちゃん、答えないのはナシだよ?」
朱莉にずいっと顔を近づけられ、逃げ場がなくなる。
困った・・・!
「そうだなあ・・・でも・・・」
「うん」
「二人のを比べるのは難しいけど・・・」
「けど・・・?」
「文化祭全体を通して一番かわいいなって思ったのは、朱莉だったよ」
素直な気持ちを伝えると、朱莉はしばらく複雑な表情をしていた。
それは喜びのようにも見えたし、悔しさのようにも見えた。
「・・・やっぱり、お兄ちゃんってずるい・・・!」
朱莉は俺の胸元に頭を付けて、小さくため息をついたようだった。
「ごめんな、でも二人に優劣を付けるのはやっぱり・・・」
俺が朱莉の頭をなでようとしたその時だった。
「あ、あの、どなたかシャンプーの場所をご存じの方はいらっしゃいませんでしょうか!」
どこからともなくスグルの声が響いてきて、俺は思わず顔を上げた。
するとそこにはタオル一枚で廊下の方からリビングに声をかけて来ているスグルがいた。
それもとんでもないことに、スグルはタオルを巻いているという状態ですらない。
体の前側をタオルで隠しているだけという状態だ。
「スグルーーーーーっ!」
俺が前にやめろと忠告したにも関わらずこれだ。
どうしたらいいんだ、本当に!
明日の投稿は10:00,14:00,20:00の予定です!




