くすぐり合いっこ・中
「ど、どうだ・・・!」
俺はばらばらと指を動かして、朱莉のわきばらをくすぐった。
「ひゃっ・・・!」
朱莉は笑いを我慢しようとしているのか、とっさに口元を手で覆った。
しかしそれがスグルの目に留まったらしく、すぐに注意が飛んでくる。
ホントどこから監視してるんだ。
『ちょっと! 今口抑えたよね! ルール違反になっちゃいますよ!』
「ええっ、だって・・・!」
朱莉はスグルに文句を言おうとしたようだったが、どこからともなくスグルの鋭い視線を感じてしまう。
「ホントどこから見てるのよ・・・!」
朱莉も困ったように言ったが、もう一度体勢を立て直す。
「ほら、どうだ・・・」
「んっ・・・!」
朱莉は慌てて唇を噛んだ。
「血が出ちゃうよ、朱莉」
「だけど、こうしないと・・・」
俺たちはどうもとことんくすぐりに弱い兄妹のようだ。
しかしこうしてくすぐっていると、俺もなんだか罪悪感のようなものを感じそうになる。
だってそもそも、メイド服の妹を家庭教師の生徒の前でくすぐるってどういう状況なんだよ!
傍から見たら完全に俺がヘンタイ扱いされちゃうだろ、こんな光景!
『ほらほら~、手加減なしだぞ~』
「お兄ちゃん、あと三十秒だからっ・・・!」
そうは言っても時間は過ぎる。
タイマーは三十秒の位置をすでに越していた。
「よし、朱莉、このまま我慢できそうか?」
「え、ええ、がんばるわ・・・」
だがここで俺の鼻が不穏な動きをした。
そう、くしゃみである。
鼻がムズムズしたと思った次の瞬間、俺はくしゃみをかましてしまった。
それと同時に朱莉のわき腹を両手で掴んでしまう。
「ひゃああっ! きゃははっ!」
『あーっ! 笑った! あとちょっとだったのに、二人してどれだけ下手なの⁈』
俺はくしゃみをした拍子に手に力を込めてしまい、そのせいで朱莉が笑ってしまったようだった。
本当シンプルに申し訳ないとしか言えない・・・。
タイマーは四十五秒の表示で止まっていた。
ああ、あと十五秒我慢できればよかったのか・・・。
しかしこうなって本当に追い詰められてしまった俺たち。
するとスグルが今度は新たな提案をしてきた。
『お二人さん・・・君たちはボクが提案したゲームをとことん失敗しているわけですけれども』
画面の中から呆れたように言われ、俺たちはへなへなと謝ることしかできない。
「ご、ごめんスグル・・・」
『まあ、もうこうなったら仕方がないね。二人が同時にお互いをくすぐって、一分間笑わなかったら特別にセーフだったことにしてあげるよ』
そう言われ、俺たちは目を見合わせた。
「お互いにくすぐり合うの?」
想像してみたが、なかなかシュールな光景のような気もする。
『やるなら、特別にもう一回タイマーセットしてあげるけど?』
スグルに問われ、俺たちはお互いに頷き合った。
「まあもらったチャンスはもらったものだし、やろうか・・・?」
「え、ええ、そうね・・・というか、私に関してはあの紙が・・・」
ああそうか、とスグルに回収された紙のことを思いだした。
『それじゃあお互いに向き合って、わき腹に手を添えてね?』
スグルの指示に従って、俺たちは向き合った。




