耳元ささやき脱出ゲーム・急
時間をミスしたので再投稿です!すみません!
明日は12:00,14:00,20:00更新予定です!
朱莉はまだ顔を真っ赤にしているが、ゲームを進めるしかなかった。
俺はそっと耳に口を寄せ、できるだけ朱莉に負担がかからないようにささやく。
タブレットの画面に表示されていたのは〈返事はいつほしいかな?〉だった。
返事とは何なのだろうかとは思うが、やっていくしかない。
「じゃあ、朱莉、いくよ・・・?」
耳元に話しかけると、朱莉はまたびくっと肩を跳ねさせた。
うーん、これではどうもささいていられる様子でもないような気がするが・・・。
「・・・へんじは・・・」
できるだけ息を殺してささやいたのだが、朱莉は体を震わせる。
「っ・・・!」
朱莉は体を小さくして、頬を真っ赤に染めて目を閉じている。
「・・・いつ・・・」
「うぅっ・・・」
だが声量としては聞き取りやすいくらいの大きさになっているはずだ。
俺はこのままならクリアできると見込み、続けて囁いて行ったものの・・・。
「ほしい・・・」
この〈し〉という発音の時に息が漏れてしまったらしく、朱莉が目を見開いた。
「ひゃあっ!」
「わっ、ちょっ、朱莉っ!」
朱莉はびっくりしたのか、それとも反応してしまったのか、大きく飛び跳ねてしまった。
おかげで彼女の肩が俺の顎をかすめ、少し痛い・・・。
「ちょ、朱莉、大丈夫・・・?」
「だ、大丈夫、だけど・・・」
彼女は乱れた呼吸を整えようと深呼吸をした。
それからこちらを向いて、どこか潤んだ目ですねたような顔をした。
「お、お兄ちゃん、一応聞くけど、わざとやってないよね・・・?」
「ま、まさか・・・! ごめん、もしそう思われたなら申し訳ないけど・・・」
俺としてはできるだけスムーズにクリアできるように取り組んだつもりだったのだが、それが朱莉にとって負担になっていたなら申し訳ない。
しかし謝ると朱莉は慌ただしく手を振った。
「あっ、違うの・・・! わざとじゃないならいいの・・・! っていうか、お兄ちゃんがこんな意地悪わざとやるわけないじゃない、あたしのバカっ・・・」
朱莉は目を潤ませたまま落ち込んでしまった。
するとタブレットがまた光り出す。
『ちょいちょい君たち、失敗しているではないですか・・・まあじゃあ次のブロックには特別に進ませてあげますから、次こそ成功してくださいよ? 次失敗したら、今度こそ秘密をばらしちゃいますからね?』
画面の中のスグルはそう言って俺たちを次のブロックへ促した。
「だって。朱莉。特別に進ませてくれるんだってさ」
「甘いわねえ・・・」
朱莉はぶつぶつと言いつつも、次のブロックへと進んでいった。
次のブロックに到着すると、またそこにはタブレットが置かれていた。
その画面が明転すると、またもやサングラスをかけたスグルが現れる。
『さてさて、一つ目のミッションを失敗してしまったお二人さん。次のミッションはクリアしていただかなければなりませんなあ』
スグルは疑わしげに俺たちの方を眺めた後、まあいいやとでも言いたげにゲームの説明を始めた。
『次のゲームは耐久ゲームですよ』
「耐久ゲーム?」
『その通り。お互いにミッションを課されても、それを我慢できるかどうかをチェックしましょう』
耐久、と聞いて良い予感はしない。
俺からすれば耐久と言えばマラソンだとかの体力勝負のイメージがあるからだ。
「耐久って何なんだよ」
俺が半ば不安になりながら尋ねると、スグルはサングラスをくいっと上げてから答えた。
『ふふん、それはカンタン。くすぐりあいっこです。子供でもできることでしょう。ルールだって簡単、一分間お互いに笑わなければいいだけです』
「「くすぐり~?」」
俺も朱莉も素っ頓狂な声を出し、お互いの目を見つめ合った。
「何よそれ、それが脱出ゲームに必要な事なの?」
「俺多分相当にくすぐりに弱いぞ・・・」
脱出ゲームというにはあまりにも王様ゲームのバツのような内容に思える。
「王様ゲームじゃないんだぞ?」
そう俺がスグルに言うと、スグルはやけにぎくっという様子を見せる。
・・・なんか怪しいか?
「なあ、他のお客さんにも同じようなこと・・・」
『はーい、そこまでそこまでー! 早く始めないと、脱出失敗の扱いにしちゃうよ? せっかくボクの優しさで一つ目のステージをクリアにしてあげたんだから、それがなしになっちゃうのはもったいないんじゃないのかな?』
スグルに話を打ち切られ、俺は一つ前のステージの方を振り返った。
確かに俺たちは一つ目のステージをお情けでクリアさせてもらっていることになっているはずだ。
そうなると、スグルに逆らうのは望ましくないだろう。
「じゃあ、朱莉、や、やる・・・?」
おそるおそる声を掛けると、朱莉は動揺したままの顔で振り返って来た。
「え、えっと、いいけど、その・・・」
完全にお互いに照れてしまっている。
そりゃ耳にささやくくらいなら直接触れ合わないからいいものの、くすぐるとなったらお互いの手が触れあうことになってしまう。
「あ、朱莉、ちょっと手が触れることになるけど、それでもいい・・・?」
一応断りを入れておかないといけないと思った。
朱莉は女の子だし、いくら兄妹とはいえ触られることに抵抗があるかもしれないし。
だが朱莉は少し違う部分を恥じらっているように見えた。
「・・・い、いいのよ、触れるのは良いの・・・だけど・・・一分も耐えるのは・・・」
「ああ、それは確かに・・・」
ルールの中では一分間笑うのを我慢することになっている。
一分間というのはくすぐりを我慢するにはなかなか長い時間だ。
「朱莉、我慢できそう?」
「が、がんばるけど・・・お兄ちゃんこそ、笑わないでいられる?」
朱莉から不安そうに問われ、俺もうーんと唸ることしかできない。
正直言って俺もくすぐりには弱いのだ。
だがトライしてみない事にはどうしようもないだろう。
「朱莉、まあとりあえずやってみるか?」
真っ直ぐに声を掛けると、朱莉は腹をくくったようにうなずいた。
「え、ええ、やってみましょうか・・・」
くすぐりという子供のようなミッションなのに、俺たちはこれから負けられない戦いに挑むかのような顔をしていた。
まだまだ続く、まさかのゲームたち…




