美少女(?)と義妹の邂逅
俺が家庭教師を初めて四日目の夜、まさかこれほどまで早くなるとは思っていなかった帰宅を果たすことになった。
家から持って来ていた大きな荷物を抱え、自宅のインターホンを押す。
「すごい、凛斗の家って二階建てなんだね」
スグルから興味深そうに言われ、苦笑いを返すことしかできない。
まあ確かに二階建てだが、築年数は恐ろしい長さを誇っている。
しかも家族がいたるところにいるから、広いはずなのにやけに狭く思える。
「はい、おかえり・・・」
インターホンを押してからしばらくして、扉が開いた。
出迎えてくれたのは朱莉。
料理中だったのか片手にはミトンがはまっている。
そして朱莉は俺を見ると微笑んだが、それからスグルを見て目を見開いた。
「ええっ⁈」
ひっくり返ったような声が飛び出し、朱莉は驚愕したようにスグルを見る。
もしかして・・・と何か冷や汗がこぼれる。
「あ、あなたって三年生の新堂さん・・・っ」
ああやっぱり、知り合いだった!
「ああ、君は二年生の安藤朱莉ちゃんだよね。覚えてるよ」
ハローと言いながら、スグルはお気楽そうに手を挙げた。
まるで朱莉の動揺など目に入っていないような平静さだ。
だが朱莉はやはり驚きが隠せないようで、ただひたすらにスグルを見つめている。
「お、お兄ちゃん。まさか生徒って・・・」
「そ、そうなんだ。えっと、この子。スグル・・・、朱莉は知り合いなのかな?」
「知り合いって言うか、私が一方的に知ってるだけだと思うけど・・・。だって、新堂さんって言ったら、学園じゃ知らない人もいないくらいの有名人よ?」
そうだったのか、お兄ちゃん何も知らなかった・・・。
だがともかくスグルをここまで連れてきてしまったからには、もう家に上げるしかない。
朱莉の動揺は仕方がないだろうが・・・。
「まあ、でもさ、朱莉、ここでたむろしてても仕方ないから、とりあえず家に上がってもいいかな」
「い、いいけど・・・でも待ってよ、私だって動揺してるのよ・・・!」
どたばたと慌ただしく家に戻る朱莉の後を追い、俺たちも家に上がった。
「お邪魔しま~す」
スグルは呑気に家の中を見渡しているが、一方の朱莉は顔を赤くしたり青くしたり。
おそらく相当に気が動転しているのだろう。
まあ、高校の知り合いが突然家に上がって来たら誰でもそうなるか・・・。
靴を脱いでリビングに入ると、陸斗とゆかりが駆け寄って来た。
二人はまだ小学生だ。
「わあ、凛斗のきょうだい?」
スグルは興味深そうに二人をのぞき込んで、こんにちはと告げた。
陸斗とゆかりは見たことのない相手に少し緊張しているようだ。
ゆかりは逃げてしまったが、陸斗は比較的直ぐに慣れた。
「ちょっとお世話になります、よろしくね~」
スグルは楽しそうにそう言って、リビングのソファに腰かけた。
「結構広いじゃん」
もうすでに自分の家かのようにくつろいでいるスグル。
慣れるのが早いのは悪いことじゃないけどさ・・・。
「お兄ちゃん、ちょっといいかしら」
俺がぼーっとスグルの方を向いていると、廊下の方からすねたように朱莉が手招きをしてきた。
何かは言われると思っていたが、怒られませんように・・・。
「お兄ちゃん、私今すごい混乱してるんだけど。まずは状況を説明してもらってもいいですか?」
頬を膨らませて、明らかに不満そうな朱莉。
まあそりゃ、本当に突然のことだったので仕方がないとは思うが。
「えっとな、ちょっと落ち着いて聞いてくれ。まず俺も、スグルが朱莉の高校の同級生だとは知らなかったんだ」
「・・・本当かしら」
「本当だよ。俺が今までに朱莉に嘘ついたことあった?」
そう聞いてみれば、朱莉はまた機嫌を損ねたように腕を組む。
俺と目を合わせてくれないのも、彼女なりの反抗なのだろう。
「ないけど・・・」
「でしょ、だから俺もスグルが朱莉の同級生だなんて思ってなかったんだ」
「そう・・・それなら仕方ない・・・とは言えないわよ!こんなに突然のことだし、それにこれからここに住むってどういうことなの?」
朱莉はある意味でこの家を取り仕切っていると言ってもいい立場だ。突如として現れた刺客、それもその人物が同級生となれば動揺は止まらない。
俺も朱莉を落ち着けようとしたが、彼女の饒舌さは止まらない。
「だってご飯もその分増やさなきゃいけないでしょ、それにお風呂も混みあうし、寝る場所はどうするの、それに、それに・・・」
朱莉の顔はすでに真っ赤だ。
思いつく懸念点を言い出したらキリがないのだろう。
ぷるぷると両手を震わせて、頬を膨らませている。
怒っているわけではないだろう、それ以上に困惑が強いのだ。
しかしその時、リビングのドアが開いた。
「それならば、ボクもここに住ませてもらう側として、解決策を考えさせていただきましょう。礼儀ですからね」
姿を現したのはスグル。
すでになつかれているのか、スグルの足元にはゆかりと陸斗がいる。
「解決策?」
朱莉が首をかしげると、スグルは俺たちをリビングへ呼び込んだ。
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