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『フールの大冒険 ~本の世界に消えた両親を探していたら、聖なるマップに選ばれました~』  作者: ☆☆アダム☆☆


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第9話 真実を試す国

「盗むのはダメだからね」

王立カード保管庫を見上げながら、私はもう一度念を押した。

隣ではオラクルが腕を組み、見るからに不満そうな顔をしている。

「じゃあ聞くけどよ。正面から行って『☆3の秘宝ください』って言ったら、くれると思うか?」

「……思わない」

「だろ?」

「でも盗むのもダメ」

「面倒くせぇ奴だな、お前」

「普通です!」

私たちの目の前には、巨大な建物がそびえていた。

白と黒の石を交互に積み上げた外壁。窓はすべてカードの形をしていて、屋根の四隅にはハート、ダイヤ、クラブ、スペードの像が立っている。

そして正面には、さっき遠くから見えた巨大な《JOKER》のカード。

門の前には何十人もの兵士が立っていた。

どう考えても、盗みに入る場所ではない。

「まず話を聞こうよ」

「誰に?」

「受付とか」

「秘宝の保管庫に受付嬢がいると思ってんのか?」

いた。

「いらっしゃいませ」

建物の横にある小さな窓口で、女性がにこやかに頭を下げた。

オラクルが無言になる。

私は勝ち誇った顔で横を見る。

「いたね」

「……カードの国、意味分かんねぇ」

受付の女性は慣れた様子で尋ねた。

「本日はどのようなご用件でしょうか?」

私は聖なるマップを見せないよう気をつけながら答える。

「《真実のカード》について知りたいんです」

女性の笑顔が消えた。

周囲の空気まで変わった気がした。

「……真実のカードを?」

「はい」

「どこでその名前を?」

「それは――」

言いかけて止まる。

聖なるマップのことを簡単に話していいか分からない。

するとオラクルが横から口を挟んだ。

「旅の途中で噂を聞いたんですよ」

女性はオラクルを見る。

「噂、ですか?」

「ああ。どんな嘘も見破るすげぇカードがあるって」

受付の女性は、しばらくオラクルを見つめた。

そして机の下から一枚の白いカードを取り出した。

「では、確認させていただきます」

「何を?」

「今の言葉が真実かどうかを」

オラクルの尻尾がぴたりと止まった。

「……え?」

白いカードが光った。

次の瞬間。

【FALSE】

赤い文字が浮かぶ。

私はオラクルを見る。

オラクルは目を逸らした。

「噂じゃないんじゃん!」

「細かい!」

「細かくない!」

受付の女性が、少しも笑わずに言う。

「この国で《真実のカード》を求めるのであれば、嘘はおすすめしません」

「最初から試された……」

オラクルが頭を抱えた。

さすがカードの国。

入口から厳しい。

私は一歩前へ出た。

「私が探してるんです」

女性がこちらを見る。

「理由を伺っても?」

「お父さんとお母さんを探すためです」

白いカードが光る。

【TRUE】

「二人がどこにいるのか、私は知りません。名前も顔も分かりません。でも、この世界のどこかにいるって、おばあちゃんから聞きました」

【TRUE】

文字が一つずつ浮かぶ。

何だか妙な気分だった。

自分では分かっていることなのに、「真実だ」と目の前で示される。

「それで……《真実のカード》なら、何か手掛かりが見つかるかもしれないと思って」

カードがまた光った。

【TRUE】

受付の女性の表情が少し変わった。

「なるほど」

オラクルが小声で耳打ちしてくる。

「お前、本当に嘘つかねぇんだな」

「つく必要ないもん」

「人生しんどそうだな」

「泥棒に言われたくない」

女性は席を立った。

「少々お待ちください」

奥へ消えていく。

数分後。

戻ってきた彼女の後ろには、白いローブを着た老人がいた。

長い銀髪。

胸元には、ハート、ダイヤ、クラブ、スペード――四つの紋章が重なった徽章。

「この少女か」

老人が私を見る。

「はい」

「名は?」

「フールです」

「フール……」

老人は何か考えるように目を細めた。

ほんの一瞬だった。

でも、確かに。

私の名前に反応した。

「私のこと、知ってるんですか?」

「いや」

老人はすぐに首を振る。

「珍しい名前だと思っただけだ」

白いカード。

反応しない。

さっきのカードは受付の女性が持っている。

今の言葉が本当なのか、確かめることはできなかった。

なぜだろう。

胸の奥に、小さな違和感が残った。

老人は杖をつき、私たちに背を向けた。

「ついて来なさい」

「入っていいんですか?」

「《真実のカード》を欲する者には、挑戦する権利がある」

オラクルの耳が立つ。

「挑戦?」

老人が振り返った。

「真実のカードは、盗めぬ」

オラクルが固まった。

「別に盗もうなんて――」

受付の白いカードが光る。

【FALSE】

「もう喋らない方がいいよ」

「そうする……」

王立カード保管庫の内部は、想像していた場所とまるで違った。

宝箱や金庫が並んでいると思っていたのに、長い廊下の左右に浮かんでいるのは無数のカード。

炎を封じたカード。

剣が描かれたカード。

小さな竜がカードの中を動き回っているものまである。

「全部、秘宝なんですか?」

「いや」

老人が歩きながら答える。

「この国では、魔法、契約、記録、財産。あらゆるものをカードという形で管理する」

「すごい……」

緑の子がいたら、絶対に目を輝かせただろう。

分厚い本を抱えて、「全部読みたいでぷ!」なんて言ったかもしれない。

胸が少し痛む。

でも、私は前を向いた。

長い階段を下りる。

一階。

地下二階。

地下三階。

どんどん深くなっていく。

オラクルが周囲を観察していた。

「兵士がいねぇな」

「必要ない」

老人が答える。

「ここから先は、嘘をつく者には進めぬ」

階段の先に、一枚の巨大な扉が現れた。

扉には文字が刻まれている。

【真実を望む者よ】

【まず己を偽るな】

老人が扉の前で止まった。

「ここより先へ行けるのは、挑戦者のみだ」

「俺も行く」

オラクルが一歩前へ出る。

老人は首を振った。

「一人だ」

「でも――」

私はオラクルを見る。

少し怖い。

何があるのか全く分からない。

それでも。

「行くよ」

三匹のゴブリンが守ってくれた命だ。

怖いからって止まっていられない。

オラクルはしばらく私を見ていたが、やがてため息をついた。

「分かった」

「うん」

「危なくなったら逃げろよ」

「オラクルがまともなこと言ってる」

「お前なぁ……」

少し笑った。

それだけで緊張が軽くなった。

老人が扉へ手を置く。

ゴゴゴゴゴ……。

巨大な石扉が開いた。

その向こうは、真っ暗だった。

一歩入った瞬間。

背後の扉が閉じた。

「えっ!?」

完全な暗闇。

「ちょっと!?」

返事はない。

次の瞬間。

パッ。

床に光が灯った。

円形の部屋。

中央には椅子が一つ。

そして正面に――巨大な鏡があった。

鏡に映っているのは私。

「これが試練……?」

どこからともなく声が響いた。

『座れ』

私は辺りを見回す。

誰もいない。

仕方なく椅子へ座った。

鏡の中の私は、不安そうな顔をしていた。

『これより三つの問いを行う』

『嘘をつけば、失格』

『己すら欺く嘘であれば――代償を支払う』

「代償?」

答えはない。

鏡の表面が揺れた。

最初の文字が現れる。

【第一問】

【お前は、なぜ両親を探す?】

「そんなの……」

簡単だと思った。

「会いたいから」

鏡が光る。

【不十分】

「え?」

不正解ではない。

でも、十分でもない。

『真実を答えよ』

「会いたいからだよ!」

【不十分】

「じゃあ何なの!?」

私は苛立った。

でも。

鏡に映っている自分の顔を見た。

泣きそうだった。

ずっと、心の奥にあったもの。

お父さんとお母さんに会いたい。

それは本当。

でも、それだけじゃない。

私は膝の上で拳を握った。

「……聞きたいから」

鏡が静まる。

「どうして私を置いていったのか」

胸が痛い。

今まで誰にも言わなかった。

おばあちゃんにも。

三匹にも。

「私のこと、いらなかったのかなって……ずっと思ってた」

声が震える。

「もし会って、『お前なんか知らない』って言われたらって考えると……怖い」

涙が一粒落ちた。

「でも、それでも知りたい」

私は鏡の中の自分を見た。

「私が愛されてたのか。それとも……本当に捨てられたのか」

長い沈黙。

そして。

【TRUE】

文字が金色に変わった。

胸が締め付けられる。

でも不思議と、少しだけ軽くなった。

第二の問いが現れる。

【第二問】

【三匹のゴブリンが死んだのは、お前のせいか?】

息が止まった。

「……」

頭の中に、三匹の最後が蘇る。

私を守るために。

逃げろと言って。

三人でNo.1へ向かっていった。

「私の……」

言葉が出ない。

「私のせいだよ」

鏡が光る。

【FALSE】

「……え?」

私は目を見開いた。

「だって、私がいなかったら三人は――」

【FALSE】

「でも!」

声が響く。

『真実を答えよ』

涙が溢れた。

「分かんないよ!」

私は立ち上がった。

「じゃあ誰のせいなの!?」

鏡の中の私が揺れる。

赤い子。

緑の子。

黄色い子。

三匹の姿が鏡に映った。

『フールちゃんは、パパとママに会うでぷ』

『絶対に一人じゃないでぷ』

『ちゃんと幸せになるでぷよ』

「……」

私は口元を押さえた。

三匹は自分で選んだ。

私を守ると。

戦うと。

命を懸けると。

それを「私のせい」と言うことは。

三匹の選択まで否定することなのかもしれない。

「……私のせいじゃない」

震える声で言った。

「でも……私のために死んだ」

鏡は静かだった。

「だから忘れない」

私は涙を拭った。

「私が悪かったことにして終わらせない。三人が守ってくれた理由を、無駄にしない」

光が広がる。

【TRUE】

鏡の三匹が笑った。

そして消えた。

私は目を閉じた。

「ありがとう……」

最後の問いが現れる。

【第三問】

文字を見た瞬間。

背筋が冷たくなった。

【真実を知れば】

【今まで信じていたものを失うとしても】

【それでも、お前は真実を望むか?】

長い間。

答えられなかった。

おばあちゃん。

お父さん。

お母さん。

もしかしたら。

知りたくなかったことまで知るかもしれない。

両親が私を捨てたのかもしれない。

悪い人なのかもしれない。

もう会いたいと思えなくなるような真実かもしれない。

「怖いよ」

私は正直に言った。

鏡は何も示さない。

「すごく怖い」

それでも。

私は顔を上げた。

「でも、知らないまま勝手に決めつける方が嫌だ」

おばあちゃんにも秘密がある。

両親にも。

TIMEにも。

この世界にも。

何かが隠されている。

「私は――」

胸へ手を当てる。

「真実を知りたい」

鏡が眩しいほど輝いた。

【TRUE】

その瞬間。

鏡が砕けた。

「えっ!?」

無数の破片が宙へ浮かぶ。

その中心。

一枚のカードが現れた。

純白の縁。

中央に描かれた、開いた瞳。

その下に刻まれている。

【☆3】

私はゆっくり手を伸ばした。

カードへ触れる。

聖なるマップが強く光った。

【秘宝を確認】

【☆3 真実のカード】

「これが……」

手に取った瞬間。

カードの瞳が開いた。

そして。

私を見た。

ぞくり。

頭の中へ直接、知らない声が流れ込む。

『フール』

「……え?」

『お前には――』

カード全体が激しく震えた。

『すでに一度』

その瞬間。

バキンッ!

何かがカードの力を遮った。

真実のカードから光が消える。

「一度……何?」

返事はない。

聖なるマップには、赤い文字だけが浮かんでいた。

【ERROR】

【対象の過去に、強力な干渉を確認】

私は動けなかった。

「私の過去……?」

なぜ。

生まれた時のことすら覚えていない私の過去に。

《真実のカード》さえ読み取れない何かがあるのか。

そして――。

カードが最後に言おうとした。

『すでに一度』

その続きは。

何だったのだろう。

最後までありがとうございます!

今回は《真実のカード》を手に入れるための試練でした。

「真実を知る」ということは、必ずしも良いことばかりではありません。

それでもフールは、自分の両親を探すために前へ進みます。

そして最後、カードがフールに伝えようとした言葉。

「すでに一度――」

その続きは、まだ秘密です。

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