↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『フールの大冒険 ~本の世界に消えた両親を探していたら、聖なるマップに選ばれました~』  作者: ☆☆アダム☆☆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/59

第6話 聖なるマップ

どれくらい泣いていたのか、分からなかった。

気づけば、街を包んでいた煙は薄くなり、遠くから兵士たちの声が聞こえていた。けれど私は、三匹のそばから動けなかった。

赤い子の手には、折れた骨付き肉の骨。

緑の子の胸には、表紙だけになった本。

黄色い子のそばには、中身のなくなったお金袋。

昨日までだったら、どれも少し変わった持ち物にしか見えなかった。

今は違う。

全部、三匹が生きていた証だった。

「……返さなきゃ」

私は黄色い子から預かった空の袋を握りしめた。

「お金持ちになったら返すって……約束したもん」

返事はない。

分かっている。

それでも、何か話していないと、本当に三匹がいなくなってしまう気がした。

やがて街の兵士たちが近づいてきた。

「君! 無事か!?」

鎧を着た男が駆け寄ってくる。

私は顔を上げた。

「この子たちを……助けて」

兵士の表情が曇った。

「お願い。回復魔法とかあるんでしょ? 薬でも何でもいいから……」

兵士は三匹の身体を確認した。

そして、ゆっくり首を横に振った。

「……すまない」

たったそれだけだった。

私は唇を噛んだ。

「まだ温かいよ」

「……」

「少し前まで喋ってた。笑ってた。だったら、まだ――」

「すまない」

もう一度言われた。

今度こそ、その意味が分かった。

私は下を向いた。

涙が地面へ落ちた。

その時、別の兵士が声を上げた。

「隊長! こっちを!」

少し離れた場所。

そこに倒れていたはずのNo.1の姿が消えていた。

残っていたのは、砕けた懐中時計と、黒い血の跡だけ。

「転移したのか……?」

「TIMEには回収用の術式があるという噂があります。瀕死になった構成員を、本拠地へ強制的に戻すものだと」

「つまり、生きている可能性があるのか」

私はその会話を聞いていた。

胸の奥に、熱いものが生まれる。

怒りだった。

三匹は死んだ。

なのに、あいつは生きているかもしれない。

「……許さない」

気づけば声に出ていた。

でも、すぐに三匹の顔が頭に浮かんだ。

赤い子は「パパとママに会うでぷ」と言った。

緑の子は「絶対に一人じゃないでぷ」と言った。

黄色い子は「ちゃんと幸せになるでぷよ」と言った。

三匹は、私に復讐してほしくて命を懸けたんじゃない。

「……違うよね」

私は涙を拭った。

「私、やることがあるんだった」

お父さんとお母さんを探す。

それが、私がこの世界へ来た理由。

そして今は、もう一つ増えた。

三匹が守ってくれた命を、無駄にしない。

街の外れに、小さな丘があった。

大きな木が一本だけ立ち、その向こうには海が見える。

私はそこに三つの墓を作った。

兵士たちが手伝うと言ってくれたけれど、断った。

自分でやりたかった。

慣れない手で土を掘った。

何度も手の皮が破れた。

それでも止めなかった。

赤い子の墓には、折れた骨を。

緑の子の墓には、本の表紙を。

黄色い子の墓には、空になった袋を置いた。

「本当は……名前、ちゃんと聞けばよかった」

私は三つ並んだ墓の前に座った。

赤。

緑。

黄色。

ずっとそう呼んでいた。

もっと早く名前を聞いておけばよかった。

好きな食べ物も。

どこで生まれたのかも。

どうして三人で旅をしていたのかも。

何も知らないまま、別れてしまった。

「ごめんね」

風が吹いた。

木の葉がさらさらと揺れる。

「それと……ありがとう」

私は三つの墓へ頭を下げた。

「絶対に、お父さんとお母さんを見つけるから」

泣きそうになった。

でも、今度は堪えた。

「見つけたら、ここに連れてくる」

赤い子なら「お肉も持ってくるでぷ」と言うだろう。

緑の子なら「ちゃんと記録するでぷ」と本を開くだろう。

黄色い子なら「お金も返してもらうでぷ」と笑うかもしれない。

「だから……待ってて」

立ち上がる。

その時だった。

胸元から、淡い光が漏れた。

「……え?」

おばあちゃんから渡された羊皮紙。

慌てて取り出す。

真っ白だったはずの紙に、一本の線が浮かび上がっていた。

次に山。

川。

海。

街。

まるで誰かが目の前で描いているように、世界の姿が次々と現れていく。

「地図……?」

文字が浮かんだ。

【聖なるマップ】

私は息を呑んだ。

【所有者:フール】

【MAIN QUEST:両親を探せ】

その下に、新しい項目が現れる。

【世界に存在する特別な秘宝を確認しました】

星の印が並んだ。

【☆1】

【☆2】

【☆3】

【☆4】

【☆5】

「星……」

緑の子が教えてくれた。

この世界には、普通の道具とは違う特別な品があり、価値や力によって星が付けられている。

さらに地図の上へ、四つの光が灯った。

けれど。

名前がない。

ただ――。

【???】

【???】

【???】

【???】

「……何これ」

四つの光は、世界のまったく違う場所にあった。

北。

東。

南。

そして、遥か遠くの海の向こう。

そのうち一つへ指を触れる。

【情報不足】

別の光。

【情報不足】

どれを押しても同じだった。

「分からないことだらけじゃん……」

思わず苦笑する。

でも。

今までとは違う。

道ができた。

何もなかった白い羊皮紙に、世界が描かれた。

「聖なるマップ……」

私は地図を胸に抱いた。

これがあれば、進める。

お父さんとお母さんへ近づける。

三匹との約束も守れる。

「行くよ」

三つの墓を振り返った。

「私、ちゃんと進むから」

海から強い風が吹いた。

まるで三匹に背中を押されたような気がした。

街へ戻る途中。

私は聖なるマップを見ながら歩いていた。

「まず、どこへ行けばいいんだろう……」

地図には近くの街道や村まで描かれている。

けれど両親の居場所は表示されない。

【MAIN QUEST:両親を探せ】

それだけ。

「せめて矢印くらい出してよ」

ぶつぶつ言いながら歩いていると――。

ドンッ。

「わっ!」

誰かとぶつかった。

私は尻もちをついた。

「いたた……」

「おっと。悪ぃ悪ぃ」

聞こえてきたのは、少し軽い男の声。

顔を上げる。

そこにいたのは――猫だった。

いや。

猫みたいな獣人。

二本足で立ち、黒っぽい毛並みに長い尻尾。腰には小さな短剣を差し、頭には使い古した帽子をかぶっている。

金色の瞳が、細く笑った。

「前見て歩けよ、お嬢ちゃん」

「そっちがぶつかってきたんでしょ!」

「そうだったか?」

猫の男は肩をすくめた。

「まぁ、怪我なくて何よりだ」

そう言って、ひらひらと手を振りながら去っていく。

「変な猫……」

私は立ち上がった。

そして数歩歩いたところで、違和感に気づく。

腰が軽い。

「……あれ?」

さっきまでそこにあったはずのものがない。

黄色い子から預かった――お金袋。

「ない!」

慌てて振り返る。

猫の男も、ちょうど振り返った。

その手には。

見覚えのある袋。

私と目が合う。

猫の男はニヤッと笑った。

「勉強代ってことで」

「返せえええええっ!!」

男は走り出した。

「待てぇぇぇぇっ!!」

こうして。

三匹のゴブリンと別れた、その日のうちに。

私は次の旅の仲間になる男――。

盗賊猫、オラクルと出会った。

お読みいただきありがとうございます!

ついに登場した《聖なるマップ》。

そして地図に浮かんだ、正体不明の四つの【???】。

この四つが何なのかも、これからの冒険で少しずつ明らかになっていきます。

そして最後には、新しい出会いが……。

盗まれたばかりですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。