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『フールの大冒険 ~本の世界に消えた両親を探していたら、聖なるマップに選ばれました~』  作者: ☆☆アダム☆☆


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第33話 イカサマ王を暴け

第33話 イカサマ王を暴け

「やっぱりな」

オラクルが小さく呟いた。

目の前には、めくられたカード。

【2】

六より低い数字を当て、四連勝。

観客席から大歓声が上がっている。

「兄貴ぃぃぃ!」

布団ゴブリン――即席の舎弟が、誰よりも大声で叫んでいた。

「勝つでぷ! 俺のコインのために!」

「最後の一言いらねぇ!」

オラクルが怒鳴る。

私は客席から身を乗り出した。

「オラクル! さっき何に気づいたの?」

「あとで話す!」

司会者が金色のマイクを掲げる。

「挑戦者オラクル! 現在四連勝でぷ!」

目の前へ大量のチップが積まれていく。

「ここで降りれば、現在の獲得分をそのまま持ち帰れます!」

会場がざわめく。

「ですが!」

司会者がニヤリと笑った。

「次も当てれば――さらに倍!」

「行くでぷ!」

「降りろでぷ!」

「全部突っ込むでぷ!」

客席から好き勝手な声が飛ぶ。

オラクルはチップを見る。

そして。

「降りる」

会場が静まり返った。

「え?」

私も声が出た。

「オラクル?」

司会者まで目を丸くしている。

「本当にここで終了するでぷか?」

「ああ」

「まだ勝てるでぷよ!?」

「だからやめる」

オラクルが笑った。

「勝ってる時に立てる奴だけが、最後に金を持って帰れるんだよ」

「おお……」

ちょっと格好いい。

舎弟も感動した顔で頷いている。

「兄貴……!」

するとメリーが、私の肩の上で言った。

「前はできなかった?」

《真実のカード》。

【TRUE】

「昔の話を掘り返すなぁぁぁ!」

格好よさが一瞬で消えた。

第一ゲーム終了。

参加者の半分以上が脱落した。

オラクルは獲得したチップを抱え、私たちのところへ戻ってくる。

「すごいじゃん!」

「まあな」

「兄貴最高でぷ!」

舎弟がオラクルの脚へ抱きついた。

「離れろ!」

「一生ついていくでぷ!」

「今日だけでいい!」

「勝ったらコインもらうまで離れないでぷ!」

「契約だけは覚えてやがる!」

メリーは積み上がったチップを指差した。

「パン何個?」

「全部パン換算するのやめよう?」

私はオラクルへ顔を近づけた。

「それで」

「ん?」

「何に気づいたの?」

オラクルの表情が変わった。

金色の瞳が、会場の反対側を見る。

そこには。

紫色の派手なスーツ。

太い金鎖。

指いっぱいの宝石。

前回優勝者――《金喰いのバルジャン》。

当然のように第一ゲームを突破していた。

「さっき俺が六からLOWを選んだ時」

オラクルが声を落とした。

「ディーラーが山札を触る直前、あいつが右手の指輪を二回叩いた」

「それが?」

「次に出たのは二」

「偶然じゃない?」

「ああ」

オラクルが頷く。

「一回ならな」

舎弟が周囲を確認してから、小声になる。

「兄貴。実は噂があるでぷ」

「何だ?」

「バルジャンは、勝負の前日に必ずディーラーの誰かと会ってるらしいでぷ」

「そんな大事な情報、先に言え!」

「今思い出したでぷ!」

「情報屋向いてねぇ!」

私はバルジャンを見る。

「じゃあ、カジノ側と組んでるの?」

「まだ分からねぇ」

オラクルが答える。

「証拠なしで騒げば、俺たちが追い出される」

「《真実のカード》で聞けば?」

「無理だろ」

「なんで?」

「バルジャン本人に『イカサマしてる?』って聞いて素直に答えると思うか?」

「……確かに」

カードは嘘を判定できる。

でも。

質問する相手が逃げれば終わりだ。

オラクルが口元を吊り上げる。

「だから」

「だから?」

「現場を押さえる」

その顔。

完全に盗賊だった。

「オラクル」

「何だ?」

「楽しんでるでしょ」

「全然」

【FALSE】

「楽しんでる!」

「このカード、カジノに持ってきちゃダメだろ!」

ゴォォォン!

第二ゲーム開始を告げる鐘。

中央の床が開く。

現れたのは――。

巨大な円盤だった。

赤。

黒。

金。

銀。

そして中央には、小さな王冠。

「第二ゲーム!」

司会者が叫ぶ。

「《死ぬほど回るでぷ! キング・ルーレット!》」

「名前怖くない!?」

私が叫ぶ。

司会者は気にしない。

「参加者は一人十枚ずつチップを置くでぷ!」

普通のルーレットに見える。

しかし。

円盤の外側には。

なぜか椅子が並んでいた。

「……あれ何?」

嫌な予感。

「そして!」

司会者が続ける。

「挑戦者本人も椅子に座って回ってもらいます!」

「やっぱり!」

「玉と一緒に!?」

「人まで回す必要ある!?」

観客席は大喜び。

ゴブリン王国。

娯楽への情熱がおかしい。

参加者たちが椅子へ固定された。

オラクルも。

バルジャンも。

私は客席から心配していた。

「オラクル、大丈夫かな」

メリーが答える。

「猫、目回る?」

「知らない」

舎弟は拳を握る。

「兄貴なら吐きながらでも勝つでぷ!」

「応援として最悪!」

司会者が腕を振り上げる。

「スタート!」

ゴォォォォォッ!!

円盤が回転した。

「うおおおおおっ!?」

挑戦者たちの叫び。

オラクルの黒い尻尾が。

遠心力で真横に伸びる。

「オラクルーーー!」

「止めろおおおおお!!」

「始まったばっかりだよ!」

「もう十分だあああ!」

メリーは楽しそうだった。

「速い」

「遊園地じゃないからね!?」

ルーレットの玉が跳ねる。

カラン。

カラン。

カラン。

参加者は回りながら、自分が賭けた色を見なければならない。

「無茶苦茶!」

でも。

バルジャンだけは。

平然としている。

「……?」

私は目を細めた。

何か変。

回転しているのに。

バルジャンは酔っていない。

そして。

右手を。

膝の下へ。

何かを触った。

キラッ。

小さな光。

「オラクル!」

聞こえるはずがない。

でも。

次の瞬間。

回転中のオラクルの耳が。

ピクッ。

動いた。

見ていた。

バルジャンを。

玉が落ちる。

【黒・17】

歓声。

バルジャン。

的中。

チップが増える。

次。

再び回転。

バルジャンの手。

また膝の下へ。

小さな光。

玉が。

不自然に跳ねた。

【赤・8】

また。

バルジャンの的中。

「……二回連続」

私は真実のカードを握った。

「偶然?」

反応しない。

問いが曖昧すぎる。

三回目。

回転。

バルジャンの指が動く。

その時。

オラクルが。

椅子の拘束を――外した。

「え!?」

どうやったの!?

盗賊だから?

回転する円盤の上。

オラクルが立ち上がる。

「危ない!」

遠心力で吹き飛ばされそうになりながら。

一歩。

二歩。

バルジャンへ向かう。

司会者が叫んだ。

「何してるでぷぅぅぅ!?」

オラクルが笑う。

「ちょっと忘れ物だ!」

「何を!?」

「証拠!」

バルジャンの顔色が変わった。

「来るな!」

右手を隠そうとする。

オラクルが飛んだ。

ぐるぐる回る円盤。

空中。

黒い猫の身体が一回転。

バルジャンの腕を掴む。

「離せ!」

「嫌だね!」

二人でもみ合う。

その拍子に。

ポロッ。

何かが床へ落ちた。

小さな金属片。

丸い。

鏡のような薄い板。

そして。

その表面には――。

ルーレット内部の魔力回路が映っていた。

オラクルが掴む。

「何だこれ?」

バルジャンが青ざめる。

「返せ!」

「それ、答えみたいな反応だな」

円盤が止まった。

二人がその場へ転がる。

「ぐえっ!」

「でぷっ!」

司会者。

警備員。

観客。

全員の視線が二人へ集中する。

私は走った。

「オラクル!」

「フール、これ見ろ」

渡された金属片。

聖なるマップが反応した。

【魔導具】

【ルーレット操作用干渉盤】

「操作用……」

会場がざわめく。

「イカサマでぷ?」

「バルジャンが?」

「十年間ずっと勝ってたでぷ!」

バルジャンが立ち上がる。

「違う!」

私は。

《真実のカード》を出した。

「バルジャンは、この道具を使ってルーレットの結果を操作した?」

「してない!」

カードが光る。

【FALSE】

静寂。

次の瞬間。

「やっぱりイカサマでぷぅぅぅぅ!!」

会場が爆発した。

「逃げろ!」

バルジャンが走る。

でも。

遅かった。

屈強なカジノ警備ゴブリンが、四方から飛びかかる。

「捕まえろでぷ!」

「俺は前回王者だぞ!」

「前回王者だから問題なんでぷ!」

ズルズルと引きずられていく。

バルジャンの叫びだけが遠ざかった。

「離せえええ! 俺のチップがああああ!」

舎弟が。

ゆっくり。

オラクルの隣へ立った。

「兄貴」

「何だ?」

「惚れたでぷ」

「やめろ」

「一生ついていくでぷ!」

「今日だけって言ってんだろ!」

数分後。

カジノ側から正式な発表が出た。

バルジャン失格。

さらに。

過去の不正についても調査。

そして。

「イカサマ発見に貢献したオラクル選手には――」

司会者が叫ぶ。

「特別賞として十万チップを進呈するでぷ!」

ジャラララララララッ!!

大量のチップ。

「十万!?」

私は目を輝かせた。

オラクルも。

「よっしゃ!」

舎弟が両腕を上げる。

「兄貴ぃぃぃ! 俺の取り分増えたでぷぅぅ!」

「まだお前のじゃねぇ!」

メリーも。

「パン」

「もう全部パンに変換しないで!」

獲得チップ。

一気に増えた。

でも。

百万には。

まだ届かない。

そして。

ROYAL JACKPOTも。

まだ終わっていなかった。

司会者が叫ぶ。

「それでは第三ゲーム!」

会場中央。

床が大きく開く。

そこから。

巨大な透明箱がせり上がってきた。

中には。

大量の金貨。

そして。

一匹の――。

巨大な黄金色のカエル。

「……」

私は黙った。

オラクルも。

メリーも。

舎弟も。

全員。

黙った。

黄金のカエルが。

「ゲコ」

司会者が満面の笑み。

「第三ゲーム!」

「《黄金ガエルを笑わせろ!》でぷ!」

私は思わず叫んだ。

「急に勝負の種類変わりすぎでしょ!!」

カジノ中が。

大歓声に包まれた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

今回は《ROYAL JACKPOT》第二ゲーム。

前回王者バルジャンがなぜ長年勝ち続けていたのか、その秘密が明らかになりました。

オラクルらしく、カードの強さではなく「怪しい動きを見抜く盗賊の目」でイカサマを発見。

その功績で特別賞の十万チップも獲得しました。

そして即席の舎弟は、ますますオラクルから離れる気がなくなっています。

次の勝負は――黄金ガエルを笑わせろ。

カジノなので、何でもありです。

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