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『フールの大冒険 ~本の世界に消えた両親を探していたら、聖なるマップに選ばれました~』  作者: ☆☆アダム☆☆


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32/71

第32話 即席の舎弟と《ROYAL JACKPOT》

「まず、あれを獲る」

オラクルが指差した先。

カジノ中央の吹き抜け、その最上部にある金色の扉には、巨大な魔法文字が浮かんでいた。

【ROYAL JACKPOT】

【優勝賞金――500,000 CHIP】

五十万枚。

☆5《幻獣種召喚の本》との交換に必要なのは百万枚。

一度勝つだけで、一気に半分まで届く。

「でもオラクル」

私は金色の扉を見上げた。

「こういうのって、簡単には勝てないよね?」

「当たり前だ」

「じゃあ何でそんな自信満々なの?」

「自信がない顔で賭け事する奴は、始める前から負けてんだよ」

「かっこいいこと言ってるけど、カジノでいっぱい負けた人だよね?」

《真実のカード》が淡く光った。

【TRUE】

「今それ出すな!」

横で布団のゴブリンが笑っていた。

「面白い兄ちゃんでぷ」

オラクルの耳がぴくりと動く。

「おい」

「何でぷ?」

オラクルは布団ゴブリンの肩へ腕を回した。

妙に優しい笑顔。

嫌な予感がする。

「お前、名前は?」

「え?」

「さっき情報料もらっただろ」

「もらったでぷ」

「もっと欲しいか?」

布団ゴブリンの目が光った。

「欲しいでぷ!」

即答。

オラクルがニヤリとする。

「俺が勝ったら、たくさんコインやる」

「本当でぷ!?」

「その代わり――」

オラクルが男の肩を強く抱く。

「俺のそばを離れるな」

「……」

布団ゴブリンが固まった。

私は二人を見比べる。

「それ、どういう契約?」

オラクルは胸を張った。

「舎弟だ」

「急に!?」

「情報屋は手元に置いといた方が便利だからな」

「人を道具みたいに!」

布団ゴブリン本人は真剣に考えていた。

「勝ったら……コインいっぱいでぷ?」

「ああ」

「どれくらい?」

「気分次第」

「信用できないでぷ」

「お前に言われたくねぇ!」

私は吹き出した。

数秒後。

布団ゴブリンが右手を差し出した。

「分かったでぷ!」

オラクルも握る。

ガシッ。

「今日から兄貴についていくでぷ!」

「よし!」

こうして。

カジノに布団を敷いて住んでいた謎のゴブリンが――。

オラクルの即席の舎弟になった。

「……大丈夫かな」

私が呟く。

メリーがパンをかじりながら答える。

「似た者同士」

「俺はあそこまで落ちてねぇ!」

「カジノで借金したことある」

《真実のカード》。

【TRUE】

「メリー! 余計なこと覚えんな!」

ROYAL JACKPOTの受付開始まで、あと一時間。

私たちは新しく増えた舎弟を連れ、カジノの奥へ移動した。

「兄貴」

「なんだ」

「まず参加条件を確認した方がいいでぷ」

「ほう」

オラクルが感心する。

「もう舎弟らしくなってきたな」

「さっき聞いてきたでぷ」

「情報屋として優秀じゃん」

私はちょっと見直した。

「参加するには、最低一万チップ必要でぷ」

「一万!?」

メリーが最初に当てて増やしたチップ。

そこから情報料として半分を渡している。

手持ちを数える。

「……足りる?」

オラクルが袋を確認する。

「ギリギリな」

「全部使うの?」

「参加料じゃない。持ってればいい」

「なくなったら?」

舎弟が答える。

「その時点で失格でぷ」

私は嫌な予感しかしなかった。

「どういう大会なの?」

「複数のゲームで勝ち残るでぷ」

「一発勝負じゃないんだ」

「毎回ルールが変わるでぷ」

オラクルの表情が真剣になる。

「なるほどな」

カード。

ダイス。

ルーレット。

読み合い。

運。

知識。

全部必要になる可能性がある。

「それと」

舎弟が声を落とした。

「一番気をつけた方がいい奴がいるでぷ」

「誰?」

ゴブリンが顎でフロアの奥を示した。

そこ。

大勢の客に囲まれている、一人の大柄なゴブリン。

紫色の派手なスーツ。

首には太い金の鎖。

指という指に宝石の指輪。

テーブルには、山のようなチップが積まれている。

「《金喰いのバルジャン》でぷ」

「名前から嫌な予感する」

「ROYAL JACKPOT、前回優勝者でぷ」

オラクルの目が細くなった。

「強いのか?」

「このカジノで十年近く勝ち続けてるでぷ」

「十年!?」

「でも」

布団ゴブリンがさらに声を小さくした。

「イカサマしてるって噂もあるでぷ」

「噂?」

「証拠はないでぷ」

バルジャンを見る。

ちょうどカード勝負が終わったところだった。

対戦相手のゴブリンが、頭を抱える。

「また負けたでぷぅぅぅ!」

バルジャンは豪快に笑った。

「運が悪かったな!」

対戦相手が去る。

その瞬間。

私は見た。

バルジャンの袖口。

ほんの少しだけ。

カードの角のようなものが見えた。

「……オラクル」

「見た」

盗賊の目も誤魔化せなかったらしい。

「怪しいな」

メリーが言う。

「捕まえる?」

「まだ」

オラクルが止めた。

「ここはカジノだ。証拠なしで騒いだら、こっちが追い出される」

「じゃあどうする?」

オラクルが笑った。

「勝負中に尻尾を掴む」

「ゴブリンに尻尾ないけど」

「そういう意味じゃねぇよ!」

一時間後。

ゴォォォン――!

カジノ全体に巨大な鐘が響いた。

「始まるでぷ!」

舎弟が飛び上がる。

金色の扉がゆっくりと開く。

その瞬間。

カジノ中から歓声が上がった。

「ROYAL JACKPOTでぷー!」

「今年こそ勝つでぷ!」

「全財産持ってこいでぷ!」

「それはやめた方がいいよ!」

誰に言っているのか分からないけれど、私は思わず叫んだ。

参加者たちが、次々と金色の階段を上っていく。

人間。

獣人。

ゴブリン。

ドワーフ。

見るからに金持ちそうな者。

見るからに借金しかなさそうな者。

本当に色々いる。

オラクルも階段へ向かう。

私は慌てて追った。

「待って。誰が参加するの?」

「俺」

「一人?」

「一人一枠だからな」

メリーが手を上げる。

「メリーも」

「お前はダメだ」

「なんで」

「師匠は最後の切り札だ」

「意味分かんない」

舎弟が胸を張った。

「兄貴なら勝てるでぷ!」

「お前、さっき会ったばっかりだろ」

「勝たないとコインもらえないでぷ」

「応援する理由が最低!」

金色の扉を通る。

その先にあったのは――。

巨大な円形ホールだった。

何百人もの観客席。

中央には、一つだけ大きなテーブル。

天井には巨大な王冠型の照明。

そして。

司会者らしいゴブリンが、金色のマイクを握っている。

真っ赤な燕尾服。

頭にはシルクハット。

笑顔だけで胡散臭い。

「皆様ぁぁぁぁ!」

声が会場中へ響く。

「お待たせしましたでぷ!」

歓声。

「今夜も始まります!」

さらに歓声。

「金を持って帰るのは一人!」

「夢を失って帰るのは――」

司会者が客席を見渡す。

「それ以外全部でぷぅぅぅ!!」

「言い方ひどい!」

でも。

観客は大喜び。

「第一ゲーム!」

中央のテーブルが動く。

ガコン!

床から。

巨大なカード台が現れた。

「《天国か地獄か! HIGH&LOW》でぷ!」

オラクルが笑った。

「最初はカードか」

司会者が説明する。

一枚目のカードが開かれる。

その次に出るカードが。

高いか。

低いか。

当てるだけ。

ただし。

「連続正解するほど、獲得チップは倍増!」

観客が沸く。

「一度でも外せば――」

司会者がニヤリ。

「そのゲームで稼いだ分は全部ゼロでぷ!」

「怖っ!」

オラクルは。

楽しそうだった。

「単純でいい」

「オラクル」

「何だ?」

「調子乗らないでね」

「任せろ」

《真実のカード》。

【FALSE】

「一番任せられない!」

司会者の声が響く。

「挑戦者、前へ!」

オラクルがテーブルへ歩いていく。

途中。

大柄な紫スーツのゴブリン。

前回王者――バルジャンとすれ違った。

バルジャンがオラクルを見る。

「見ない顔だな」

「今日来た」

「なら覚えておけ」

バルジャンが山のようなチップを見せる。

「ここじゃ、運のない奴から消えていく」

オラクルが笑った。

「奇遇だな」

「何?」

「俺、運が悪いんだ」

私は頭を抱えた。

「自分で言っちゃった!」

でも。

オラクルは続けた。

「だから――運だけじゃ勝たねぇ」

バルジャンの笑顔が。

ほんの少し消えた。

カードが配られる。

一枚目。

【7】

司会者が叫ぶ。

「次はHIGHか! LOWか!」

オラクルはカードを見る。

ディーラー。

山札。

観客。

バルジャン。

一瞬だけ。

全部に目を走らせた。

そして。

「HIGH」

カードがめくられる。

【J】

歓声。

「正解でぷぅぅぅ!」

チップが倍。

次。

【3】

「HIGH」

【9】

正解。

さらに倍。

次。

【Q】

「LOW」

【5】

また正解。

「三連続!」

客席がざわつく。

私は拳を握った。

「すごい!」

舎弟は両手を上げる。

「兄貴ぃぃぃ! 俺のコインのために頑張るでぷぅぅ!」

「応援の仕方最低!」

オラクルが次のカードを見る。

【6】

「……」

ほんの少し。

止まった。

私は気づいた。

オラクルの視線が。

カードではなく。

ディーラーの指を見ている。

そして。

観客席。

バルジャン。

バルジャンの口元に。

笑み。

オラクルが呟いた。

「なるほど」

「?」

次を宣言する。

「LOW」

会場がざわつく。

六より低い。

確率は高くない。

司会者も驚く。

「本当にLOWでぷか!?」

「ああ」

カードが。

ゆっくり。

めくられる。

【2】

一瞬。

静寂。

そして。

「正解でぷううううう!!」

大歓声。

オラクルの獲得チップが。

一気に積み上がった。

私は笑った。

でも。

オラクルだけは。

バルジャンを見ていた。

そして。

小さく呟いた。

「やっぱりな」

何かに。

気づいた顔だった。

ROYAL JACKPOT。

まだ。

始まったばかり。

そしてどうやら。

このカジノには――。

ただ運がいいだけでは説明できない奴がいる。

あとがき

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

今回はオラクルが、布団で生活していた情報屋ゴブリンをまさかの即席の舎弟にしました。

「勝ったらコインをやるから、俺のそばを離れるな」

報酬目当てとはいえ、意外と役に立ちそうです。

そしてついに《ROYAL JACKPOT》が開幕。

前回王者《金喰いのバルジャン》には、どうやら少し怪しいところも……。

まずはカードゲーム《HIGH&LOW》。

オラクルは順調に勝っていますが、早くも何かに気づいたようです。

☆5《幻獣種召喚の本》まで、まだまだ勝負は続きます。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

今回はオラクルが、布団で生活していた情報屋ゴブリンをまさかの即席の舎弟にしました。

「勝ったらコインをやるから、俺のそばを離れるな」

報酬目当てとはいえ、意外と役に立ちそうです。

そしてついに《ROYAL JACKPOT》が開幕。

前回王者《金喰いのバルジャン》には、どうやら少し怪しいところも……。

まずはカードゲーム《HIGH&LOW》。

オラクルは順調に勝っていますが、早くも何かに気づいたようです。

☆5《幻獣種召喚の本》まで、まだまだ勝負は続きます。

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