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⑧ 第一号
地毛登録届の様式が刷り上がった日の放課後、るかは控えを届けに生徒会室へ向かった。
ドアが、半分開いていた。
「——地毛登録届、持ってきました」
のんの声だった。るかはノックの手を、宙で止めた。先客がいるなら待つのが筋である。筋であって、立ち聞きではない。
「様式は正しく書けてる。訂正一箇所。日付が西暦」
「あ。直します」
ペンの音。紙の擦れる音。それから、少しの間。
「この様式、私が作らせたのよ」
「知ってます。……はんこの欄、多くないですか」
「多い方が、通った感じがするでしょう」
短い沈黙のあと、笑う息の音がした。のんの声だった。教室で聞くあざとい笑いではなく、鼻から抜けるだけの、短いやつだった。
「——以上。受理します」
「どうも」
椅子の音がして、るかは慌てて壁際に寄った。出てきたのんと、目が合った。
「先生。聞いてました?」
「聞いてないが?」
「ふうん」
のんは追及せずに、廊下を歩いていった。るかが生徒会室に入ると、鳳は受理した届の控えを、ファイルの一番前に綴じているところだった。綴じ終わってから、思い出したように言った。
「月影先生。あの様式、綴じ穴の位置がずれています。次の版で直してください」
「……検討します」
綴じ穴のずれたファイルの一番前で、第一号だけが、まっすぐ綴じられていた。




