あとがき
平成元年に生まれた。物心つく頃には、テレビでも、友だちの家のゲーム機でも、女の子が変身して戦っていた。私はその世界が好きだった。魔法の杖も、終わらないRPGの夜も、放課後の長すぎる時間も、本当に好きだった。好きだったことは、いまも取り消せない。
あれから三十年が過ぎて、私には子どもが二人いる。上は中学生、下は小学生。二人が画面の中で出会っているものは、私が好きだったものの、少し先の姿だ。同じ光が、もっと速く、もっと途切れずに流れている。かわいいと思う気持ちと、お金を払う指の動きが、昔よりずっと近い場所にある。
この物語は、その近さのことを書いた。外から裁くためではない。私はずっと内側にいたし、たぶん、いまもいる。好きだったものが、いつのまにか誰かを値踏みする道具にもなっていた——その一続きを、遠くからではなく、手の届く距離で見てみたかった。踏み出したのは半歩だけで、残りの半歩は書かなかった。書かないことが、この本の書き方でした。
昼間は薬局にいる。処方のとおりに薬を数えて、窓口で手渡す。数を合わせる仕事をしていると、合わない数のことばかり考える夜がある。この話は、たぶんその隙間から出てきた。
いま、苦しさの渦中にいる方へ。相談できる窓口は、実在します。連絡するための一回分の力を、どうか手元に残しておいてください。
名前は挙げませんが、私を育ててくれた物語たちに、そして二人の子どもに、ありがとう。
仕掛けについては、何も言わないことにします。
沓沢朱理




