↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/55

解説

値付けの機構と、手渡しの系譜


批評家という仕事は、煎じ詰めれば、値をつけることだ。読んで、測って、系譜の中に置き、読みやすい形に整えて、差し出す。私はそれを長く生業にしてきた。この解説も、いつもの手つきで書き始めている。


愛することと消費することの区別を、私たちはいつ失ったのだろうか。この小説は「何が起きる話か」を明かすことを拒む作りなので、筋の代わりに、遠回りの補助線を一本だけ引く。少女という像をめぐって、戦後のポピュラー文化が半世紀かけて組み上げた、大きな経済のことだ。


はじめに、少女に物語の主語と力を与えた達成があった。観賞物ではなく、世界を救い、働き、飛ぶ主体として設計された少女たち。けれど主体として作られたその像は、同じ瞬間から切り出され、観賞物へ移し替えられていく。少女たち自身のための、変身と力と友情の物語すら、やがて大人のファンダムと経済に取り込まれた。内側から放たれた最大の自己批評——消費のまなざしそのものへ向けた刃でさえ、告発ごと消化され、最も複製される商品になった。鏡を見せられた文化は、鏡を愛でて、売る。その先の道行きは、たぶん、あなたも知っている。だから、これ以上は並べない。


批評は、食われる。どんな告発も、十分に魅力的な形で差し出された瞬間、内容ではなく形が消費される。見世物の形で届いた批評は、見世物として消費される。


やがて採点の文法は、フィクションを出て、生身に適用される。苦しみそのものが注目の通貨になり、助けの要る人ほど市場から見捨てられる転倒が起きる。誰が悪いのか——この歴史は、拍子抜けするほど平坦な答えを返す。誰かが設計したのではない。ありふれた部品が、特定の配管でつながれたとき、この機械になる。部品は、どこにでもある。


——さて、ようやく本書の話ができる。と、私はいつもの手つきで書こうとして、ここで、手が止まる。


この小説について、私が整理して差し出せることは、多くない。先の半世紀を、私はよどみなく並べてみせた。よどみなく並べられるものは、私がすでに一度、読んで、測って、消費し終えたものだ。だが、この本は、その手つきを、最後で滑らせる。読み終えても、要約が手のなかに残らない。値が、つけられない。


半世紀の系譜が敗北の記録だとして、その全期間を通じて、細い伏流が一本、流れていた。ファンが作り手になる場所の、最初の贈与。少女たち自身の歌。誰のものでもない声。毒は、配管で運ばれる。だが、それは、配管を流れない。——それが本書のなかで何の形をとるのかを、私はここに書かない。書けば、それも一項目になり、私の整理のなかで、消費し終えたものになる。書かずにおくことだけが、この本に対して私にできる敬意である。


最後に、白状する。私はこの解説を、読みやすく、整えて、差し出した。系譜を要約し、命題を並べ、あなたが「分かった」と思える形にした。それはこの半世紀、私たちが本に対して繰り返してきた動作そのものだ。著者は、あとがきで「仕掛けについては、何も言わないことにします」と書いた。私は、言わないでいられなかった。どちらが、この本を受け取っていたのか——私には、もう、わからない。


正直に言えば、私はこの本を、面白いと思った。面白い、という言葉が、すでに一つの値付けであることを、承知のうえで。


この解説もまた、消費されるだろうか。それとも。


解説執筆者不詳

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。