⑬ 冬の月
畳む作業は、三月までかかった。
うちの子たちには、一人ずつ会って話した。行き先の当てがある子には当てを、ない子には、あかりの連絡先を渡した。恨まれもしたし、泣かれもした。一番古くからいた子は、最後に「ずるい」と言った。始めるのも、儲けるのも、やめるのも、全部そっちが決める。ずるい。正確な言葉だったので、のんは謝らなかった。謝ったら、正確さまで消えると思った。
機材より先に、撮影データの整理を悠介に頼んだ。りあの分の扱いを訊くと、悠介は少し黙って、「消していいやつじゃない。……俺が持ってていいやつでも、ない」と言った。外付けのドライブが一つ、翌週、あかりのところへ渡った。
機材は中古屋に売った。査定は三十分で、買値の二割になった。文句はなかった。相場は知っていた。トランクルームの解約の日、空になった区画は思っていたより狭く見えた。三十七着が入っていた広さではなかった。倉庫の管理人に鍵を返すと、「またご利用ください」と言われた。定型の挨拶に、定型の礼を返した。
規約のファイルは、最後に自分で消した。
通帳の残りを、家賃で割った。十一。
最後の夜、のんは部室の鍵をサークル棟の管理室に返して、外に出た。
三月の空に、月が出ていた。満ちる途中の、欠けた月だった。
失ったものを、のんは指を折って数えた。商売。数字。フォロワーの伸び。読める、という自信。誰にも負けない、という設定。数え終わって、両手が余った。
余った手で、ポケットの中の鎖に触れた。
息が白く伸びて、消えた。のんは駅までの道を、いつもより半歩だけ遅く歩いた。
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羽根 その四
しずかな部屋。
しらない天井。実家の、客間の天井。……ちがう。しってる天井。こどものときの。
電話は、鳴らない。とりあげられたから。返された、が正しいのか。どっちでも。
母がドアの外に食事を置いていく。音でわかる。トレイの音。階段の音。呼ばれない。呼ばない。この家は、こまったことを、しずかにする家。……しずかに、される。
窓のそと、電線。すずめが二羽。
かぞえた。二羽。
かぞえられた。
ゆかに、ひかりが、みっつ。よっつめを
……
信じる
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