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③ 円滑
写しを渡した週も、商売は完璧に回った。
土曜の枠は埋まり、場代は安いままで、揉め事は一つもなかった。新しく入った着る側の子の初仕事も、つつがなく終わった。何もかもが、いつも通りに滑らかだった。
滑らかさの見え方だけが、変わっていた。
水曜、スタジオのオーナーが世間話のついでに言った。
「のんちゃんとこは、ほんと手がかからなくて助かるよ」
「どうも」
「うちに来る子たちの中で、一番しっかりしてる」
前は、この言葉を営業の成果として受け取っていた。しっかりしている、手がかからない。管理する側から見て、燃費のいい歯車の別名だ。褒め言葉の形をした査定を、のんは笑顔で受け取って、駐車場の伝票にサインした。サインの手は、止まらなかった。
夜、帳簿をつけた。入金も出金も、一円まで合った。合っている、ということだけが、その夜は、少しも安心にならなかった。
寝る前に、ドアノブを引いた。三歩歩いて、戻って、もう一度引いた。
翌朝も、商売は円滑だった。




