↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/55

⑩ 止めた針

日曜の予約は、三件とも普通に終わった。


月曜、大学。語学の小テスト。火曜、顔合わせ一件、通した。水曜、雨で屋外の下見が流れて、部屋で衣装の検品をした。検品は、いつもより時間がかかった。針を持つ手を、途中で三回、止めていたからだ。止めた理由は数えなかった。数えると、増える。


例の客の枠は、空けたままにしてある。空けた枠は予約表の上で白く、白いままの四角を、のんは毎朝一度だけ見た。見て、閉じた。


木曜、着る側の子から相談が来た。別の斡旋の話が来ているが、条件を見てほしいという。条件は悪くなかった。悪くない条件の裏を三十分調べて、仲介者の評判の悪さを見つけて、やめとき、と返した。


《のんさんに聞いてよかったです。ほんと、のんさんって親切》


親切。画面の中の三文字を、のんはしばらく見た。親切でやっているのではない。よその管理の粗さは、まわりまわってこっちの相場を下げる。それだけの話だ。それだけの話に、礼を言われる。礼は受け取っておいた。受け取っておくのも、仕事のうちだった。


金曜の夜、シャワーの後で、手首を見た。何もない。何もないことを確認する回数が、今週は多かった。確認は、一秒で終わる。終わった一秒の分だけ、何かが減った。減っているものの名前を、のんは探さなかった。名前をつけると、在庫になる。


土曜の朝、七時に起きた。機材の充電を確認して、予約表を紙に書き出した。書き出した紙の、白い四角は今週もそのままで、その隣の枠から、順番に埋まっていた。埋まっている方から、順番にやった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。