第6話 海老フライ記念日
『今日の晩御飯は何?』
息子が尋ねる。
『今日は海老フライだよ〜』
物価高のためか、近頃は何もかも高く感じる。
海老もフライ用の海老を買うより、冷凍の海老フライを買った方が安上がりな上に楽だ。
これまでの私は可能な限り手作りを掲げ、できるだけそれに沿うよう自家製パンを焼き、出汁も自分で取っている。
もちろん海老フライも例外ではない。
海老の殻をむき、背わたを取り、衣を付ける。
そのひと手間が美味しさにつながると信じていた。
いや、今でもそう信じている。
しかも、手作りの良さはそれだけではない。
大量調理ができるし、冷凍保存もできる。
工夫次第では節約にもつながる。
我が家はお小遣い制ではない。
妻と私にはそれぞれ担当業務があり、その費用は各自の財布から支払う仕組みになっている。
食事担当は私だ。
食費が上がると私の小遣いが減る。
だから手作りにこだわる。
節約のためだけではない。
おふくろの味ではないが、おとっつぁんの味を子供達に伝えたいのだ。
決して豪華ではないが、手間暇はかけている。
そんな私の思いを知らず息子は言う。
『海老フライ嫌い』
『好きになるかもしれないよ』
晩御飯のおかずを知り、テンションの下がった息子を見ながら、申し訳ない気持ちになった。
(ごめんね。今日のは冷凍だからあまり美味しくないんだー)
夕食の準備が終わり、家族で食卓を囲んだ。
出来合いの海老フライを食べる。
衣はサクサク、海老感なし。
『やっぱり冷凍は美味しくないね』
『衣が厚いね』
妻も同じ意見だ。
食事を終え、胸焼けを感じつつも息子を見ると、海老フライを頬張っている。
『海老フライ美味しい!』
『食べれる?』
『もっと欲しい』
私は内心ショックを受けた。
なんで?美味しくないし、脂っこいやん!
その日以来、息子は時々私におねだりをする。
『お父さんの海老フライが食べたい。作って』
息子よ。それ以上は言わないで……
それはお父さん作ってないんだ……
それでも、あの日は記念日にしよう。
海老フライが好きになった。
君が美味しいと言ったから、5月7日は海老フライ記念日。




