●(44)連火(れんか)
また冬が来て、もう外に出るにはコートかジャンパーが手離せない。
特に夜は木枯らしの音が耳に入る。もう雪も降った。
去年のことを思い出す。威咲ははしゃぎ過ぎて風邪をひいたのだ。
ねえ見て一夜、雪だよ、雪が降ってる!わぁー…
ろくに上着も着ずに外で遊んで、熱を出したのを看病して…。懐かしい。無邪気だったのにな。
すっかり葉の落ちた街路樹を見て職場に向かう。
別に垂華に威咲の様子を聞いたりはしない。垂華の方も、たまに今日はこんなことがあったとか話すが特に何も教えてはこない。
当たり前か。
自分の心に足りないもの、心の隙間が威咲のことを考える時埋まる気がした。
あいつは俺の話すことを何でも聞いたし、あいつも何でも話した。
それに、素直でまっすぐで。
だから、一緒にいると気持ちが楽で、安らげた。
威咲のことを思い出すと心が温かくなる。威咲は俺の心に消えない火を付けた。そして心を温めてくれた。
その火は俺が死ぬまで消えないんだよ。
ずっと俺の中にあって、この心を温め続ける。
好きだとか恋だとか、そんなのじゃない、もっと違う、大事な…俺の心を埋めるもの。
「ハッピーバースデー一夜~」
手をシャラシャラ~とさせてケーキをアピールする。
「ありがとう」
少しだけ恥ずかしかった。
ショートケーキ2つにろうそくを1本ずつ立てて、部屋の明かりを消す。
「いくつになったんだ?」
「25」
「そうか、大人になったんだなあ」
まず酒で乾杯する。
2月10日は一夜の誕生日だ。オッサンがサプライズでケーキを買ってきてくれた。
実はかなり嬉しい。誕生日を祝って貰うなんて今までなかった。
仕事仲間にも教えなかったり、誕生日前に引っ越したりしてきた。
「お前いい顔するようになったよ。前より優しくなった」
酒を舐めながらオッサンが言った。
ポツポツ話すうちにろうそくが減った。
「吹き消してみな」
笑顔でオッサンが促す。かなり照れくさかったが、息を吸い込み一息でろうそくを吹き消した。
「これからの一夜に祝福を」
そう言ってオッサンは手を叩いた。
威咲は暗い部屋で自分の手を眺めた。
また夢を見て夜中に目を覚ました。
直接触れはしないが力で人を握り潰す感覚。
多分あれが魔物に憑かれた人なのだろう。ならば退治していたのだ。それが私が生まれ変わる度にしてきたこと。
私は、きっと沢山の人をこの手で殺したんだね。その罪はきっと何事にも変えられないほど重い。どんな理由でも。
でもそうするしかなかったの。そうしなければならなかったの。
それが私の責任で逃れられない。逃れてはいけないの。
手が小刻みに震えて、威咲は手をぎゅっと握った。
お父さんはきっと、私にそんな目に合わせない為に封じの呪いをかけた。お父さん…
「…ぅして、どうして死んでしまったの…」
嗚咽が漏れないようにかみ殺す。垂華や多摩にこんな所は見せられない。
前半の一夜の心の部分、とても好きな文です☆この文は○年前キャラが生まれた頃からあった。
サブタイトルの火はその火なんです。
一夜25歳。最初23だったのに。誕生日が2月10日ということで、(31)の時は2月頭だったんです☆
威咲もあと2か月で20歳かぁ。




