(45)会いたい
垂華は外のある場所で金髪ショートヘアの女と向かい合っていた。
黒い服の二人の間を夜風が渡る。乾いた冷たい風が肌を刺す。
垂華が低い声で沈黙を破る。
「3ヶ月前一夜を撃ったのはお前らだろう」
吐く息は白く月光に照らされる。
横を向いて女が答える。
「…そうよ殺そうとしたの、寧ろ垂華をね」
垂華の目付きが厳しくなる。
「冗談よ殺そうとしたのは威咲。器は死ねばただの殺害された死体、魂が死によって剥離するかと思ったの。
私は器になんか興味無いわ。我々にとって器はただの物、そんなのどうだっていいじゃない。あなた器の何?」
垂華は無言で女を見た。
「あはは…情でもわいたの。結局あの時も情に流されてしくじったものね。愛とか持ち出すからよ。完全に物として扱えばいいのに。
あー…器をよこしなさい。我々は組織よ。個人の私利私欲じゃなくて」
「断る。まだ完全に引き出してないし、情緒不安定だ。我々以外の人間が扱えばしくじりかねない」
「だからただのエネルギー体よ。あんた個人が何にするっていうのよ。
…今日はもう駄目ねまた来るわ」
「来ても渡すつもりはないから」
女は垂華の胸ぐらをつかんだ。
離すと、ふん、と言って踵を返した。
脳裏に一夜の顔が浮かんだ。
一夜に会いたい。手を掴んで歩き出した時の背中が浮かんだ。
少し顔がほころんで威咲は泣き笑いみたいな表情になった。
私は、きっとそのうち意識が消える。できれば魔物じゃなく巫女になって魔物を退治して欲しい。
両手で顔を覆った。声を殺して泣いた。
大雪がやんで、沢山雪が積もった。
「多摩ちゃん雪だるま作らない?」
威咲が誘う。
「いいわよ」
二つ返事だ。
「おっきいのにしよー」
一番下の大玉は二人で転がして作り、中玉と小玉はそれぞれに作り、二人で力を合わせて重ねた。
「よいしょ、っと!」
「できた!」
人の背丈近くの高さに出来た。
二人で顔をつける。
「完成」
「友達も作ろっか」
やや小ぶりな二個目を作っている最中、威咲は不意に眩暈を感じてしゃがみこんでしまった。
「威咲ちゃん?」
多摩がじっと威咲を見ると、呪文を唱えて威咲の背中を軽く平手で打ち始めた。
すると、スッと楽になり眩暈はおさまった。
「魔物の拍動よ。あたしの気を送り込んで鎮めてやったわ」
「ありがとう」
「何かおかしいなと思ったらすぐ言ってね?どんな些細なことでも」
「うん、分かった」
もう、あまり時がないのだろうか。
多摩は威咲が落ち着いているのが意外だった。
普段から落ち着いていて、まるで全て受け入れたように見えた。
巫女のことを受け入れたのだと思っている。同時に、どうにか威咲のままでいさせてやりたいと思うのだった。
何物かが、身体の奥の深い所で拍動を始めている。分かる。
私の拍動とは違う、何かの拍動を感じる。この皮膚の下に。ざわざわして、さまようように。
ちゃんと負けないようにしなきゃ。
その夜、垂華は真面目な声で言った。
――――一夜、威咲ちゃんの中で魔物の拍動が始まった。一夜にもいつ何があるか分からないから、俺達と一緒にいた方がいい。いつでもいいから早くこっちに来い。
――――本当か?
――――本当だよ。
一夜は一晩迷って、垂華達の所に戻ることに決めた。
オッサンと離れるのは悲しかったが仕方ない。
「次は知り合いの所に行くことにしたから」
「なんだ、まだ居ても良かったけどな。…約1年、か。おかげで楽しかったよ。良かったらいつかまた居候しに来いよ」
そう言ってハグした。
一夜も本当はまだ居たかったが、カバンに荷物を詰めてオッサンの家を出た。
離れてた主役二人がまた一緒にいられることになりそうです☆
なんだか今日は疲れた感じがしてて、目がショボショボして打ち込みも疲れた…眠いし。




