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初めてのホストクラブ――三人の彼に、それぞれ違う私を見てもらいました

MISSION 4-3 計画


翌日の夜、莉央のスマートフォンに蓮からメッセージが届いた。


《次のミッション》


《三人の男性に、それぞれ別の場所を見てもらう》


《乳首》


《お尻の穴》


《あそこ》


《一人につき一か所》


《同じ相手は不可》


《医療機関の利用は禁止》


《有料の性的サービスの利用は禁止》


《方法は任せる》


莉央は最後の一行を見たまま、しばらく動かなかった。


「……任せる、って」


またこれだ。


高瀬のときより、面倒だった。


一人ならまだいい。今度は三人。しかも、別々。


「じゃあ、どこで……」


スマートフォンを手に取る。


――写真、なら?


「男性カメラマン 個人撮影 女性」


検索すると、ポートレート、私服、水着、アートヌード。個人撮影を受ける男性カメラマンはいくらでも出てきた。


三人のカメラマンを別々の日に予約すれば、三人という条件も満たせる。


さらに調べる。


通常のポートレートなら数万円。水着やヌード、個人向けの特殊な撮影になると十万円台。条件次第では一回二十万円近いものもある。


三人なら、六十万円ほどになる可能性もある。


「さすがに高いな……」


それでも、ページは閉じなかった。


六十万円。


払えない金額ではない。


乳首なら問題ないだろう。


あそこも、アートヌードとしてなら相談できるかもしれない。


けれど――お尻の穴。


莉央の指が止まった。


それを、男性カメラマンにどう頼む。


自分からおしりを開く自分が浮かんだ。


カメラの前で姿勢を変え、相手の顔を見ながら確認する。


「……これで、見えますか?」


そこまで浮かんだところで、莉央は一度スマートフォンを伏せた。


「……私、そこまで言うんだ」


少しして、また表に返した。


撮影データ。


納品形式。


元データ。


RAWデータ。


保存期間。


バックアップ。


クラウド。


調べれば調べるほど、撮った写真が自分の手元だけに残るとは限らないことが分かってくる。


以前、画像や記録が自分を追い込む材料になったことを思い出す。


相手が削除したと言っても、本当に全部消えたかは確認できない。


「……だめ」


莉央はページを閉じた。


写真が残る。


それだけは、もう嫌だった。


それでも頭には、カメラを向けられながら、自分からおしりを開いている自分が残っていた。


「……次」


次に浮かんだのは、試着室だった。


男性店員に何かを確認してもらう。


カーテンの外で待っている相手を想像する。


何も知らずに待っていた男性の視線が、裸になった自分のあそこで止まる。


一瞬だけ、現実になったような映像が頭に浮かんだ。


けれど、検索するとすぐに無理が見えた。


女性の着替えや下着の試着に男性店員が対応する状況自体がほとんどない。必要なら女性スタッフへ交代される。


そもそも、業務中の店員に意図的に身体を見せれば、ただの迷惑行為になる。


「……普通に迷惑客だよね」


店側が問題にすれば、警察を呼ばれてもおかしくない。


「警察まで呼ばれたら、さすがに笑えない」


試着室は、あっさり消えた。


でも、自分でカーテンを開けた瞬間の想像だけは、少し残った。


次に検索したのは、男性施術者のオイルマッサージだった。


匿名の体験談をいくつか読んでいく。


『紙ショーツが小さくて、施術中ずっと落ち着かなかった』


『太ももの内側までかなり丁寧。きわどいところまで手が来るたびに、見られてるんじゃないかって気になった』


『うつ伏せから仰向けになるとき、タオルがずれて、一瞬かなり見えてたと思う。先生は何も言わなかったけど、こっちは恥ずかしくて仕方なかった』


『紙ショーツが途中でずれて、たぶん結構見えてた。向こうは普通に施術してたけど、それが逆に恥ずかしかった』


莉央は画面をスクロールする指を止めた。


施術台にうつ伏せになっている自分。


背中を、男性の手が滑っていく。


自分からショーツを下までおろす。


少し腰を上げて、お尻の穴が見えるようにする。


――どんな反応するんだろう。


さらに読む。


『男性に見られるのが好きな人は、ちょっとハマるかも』


「……分かるかも」


今度は店の公式サイトを探した。


だが、出てくるのは紙ショーツやタオルの使用、露出を最小限にする配慮、施術範囲の説明、性的サービスではないという注意書きばかりだった。


匿名の体験談で想像したような店は、普通に検索しても見つからない。


「口コミみたいな店、全然出てこない……」


「どこなの、その店」


莉央は諦めて検索画面を戻した。


そのとき、検索候補の中に見慣れない言葉が出た。


ハプニングバー。


名前だけは聞いたことがある。


けれど、実際にどういう場所なのかは知らなかった。


莉央は検索する。


会員制。


身分証の確認。


女性一人で入れる店もある。


店内での撮影は禁止。連絡先交換を禁止するところもある。


何をするかは当人同士の合意が前提で、嫌なことは断れる。店ごとのルールも細かい。


体験談を読んでいくうちに、莉央の姿勢が少しずつ前のめりになった。


知らない男性と話す。


その場で気が合えば、もっと近いこともする。


複数の男性に囲まれることだってある。


公園では、蓮たちの前で、あそこまで晒してしまった。


高瀬課長には、自分から身体を見せた。


最後には、お尻に触れさせた。


そこまで思い出したところで、身体の芯がじわりと熱くなった。


――こういう場所に行けば、最初からそれが普通なんだ。


自分が思っていたより、もうこちら側に近づいているのかもしれない。


しばらく読み続けてから、ようやく蓮の条件を思い出した。


《有料の性的サービスの利用は禁止》


莉央は画面を見たまま、少し考えた。


「……これは、さすがにそっちだよね」


それでも、すぐにはページを閉じなかった。


ハプニングバー。


知らない男性と、そういうことをするために自分から行く場所。


その言葉と、そこで見た体験談だけは、妙に強く残った。


「……お酒」


そこから連想して、別の場所が浮かんだ。


ホストクラブ。


莉央はすぐに検索した。


「ホストクラブ 初回 システム」


初回は、何人ものホストが順番に席へつく。


一人ずつ話せる。


距離も近い。


酒もある。


相手は接客に慣れている。


写真も残らない。


――これは、性的サービスじゃない。


そこは大丈夫。


料金も、初回なら思っていたほど高くない。


「……これ、いけるかも」


次は、どう見せるか。


乳首。


お尻の穴。


あそこ。


莉央は三つを順番に見ながら考えた。


乳首。


少し酔った女なら、距離が近くても不自然ではない。


普段より少し大きめのブラジャーにしておけば、上から見たときに乳首まで見えやすい。


ホストの腕に絡む。


肩にもたれる。


少し前かがみになる。


「あ、ごめん。ちょっと酔ってるかも」


そう言いながら、離れない。


相手の視線が胸元に落ちる。


――これなら、ちゃんと見せられる。


お尻の穴。


今度は、もっと話の内容を変える。


「彼氏がそういうの好きで。私も結構好きなんです」


「昨日もちょっとやりすぎちゃって」


「まだ痕、残ってるんですよ」


「……見ます?」


そこまで想像して、莉央は少し黙った。


Tバックの細い紐を、自分の指でずらす。


――そこまで、やるんだ。


そう思うと、さすがに少し恥ずかしかった。


あそこ。


下着。脱毛。VIO。


――VIOの話なら。


「私、結構ちゃんと処理してるんですよ」


「かなりツルツルなんです」


「ほんとに。結構きれいですよ」


「……見ます?」


酔っぱらった女。


SMが好きな女。


VIO処理したあそこを見せたがる女。


莉央は三つの役を頭の中で順番に動かしてみた。


問題は下着だった。


Tバックの紐をずらせばお尻の穴は見せられる。


でも、もっと自然にできるものはないか。


莉央は検索欄に打ち込んだ。


「履いたまま 見える ショーツ」


検索結果に、見慣れない名前が並んだ。


オープンクロッチ。


画面には、レースや細いストラップで作られた下着が並んでいる。


「履いたままOK」「大胆オープン」といった説明もある。


莉央は何枚も見比べた。


前だけ開いているもの。後ろだけのもの。前後とも大きく開いているもの。


「……便利すぎるでしょ、これ」


黒のレース地で、前後が大きく開いたものを選んだ。


サイズを確認する。


カートに入れる。


注文確定。


《ご注文ありがとうございました》


――私、これ履いてホストクラブ行くんだ。


大きめのブラジャーと、この下着。


――同じ格好のまま、三人いける。


挿絵(By みてみん)


最後に、店を選んだ。


ソファ。低いテーブル。グラス。笑っている男たち。


写真を眺めているうちに、莉央の頭の中で三人の顔だけがまだ空白のまま浮かんだ。


――誰が、私の身体を見てくれるんだろう。


莉央は、そのまま予約ページを開いた。


日時を選び、必要事項を入力する。


最後に一度だけ指が止まった。


予約ボタンを押す。


《ご予約を受け付けました》


「……予約しちゃった」


MISSION 4-3 実行


予約した日の夜。


店の入ったビルを見上げながら、莉央は一度だけ息を吐いた。


計画している間は、もっと緊張すると思っていた。


けれど、ここまで来てみると、不思議なくらい怖くない。


莉央はブラウスの上から、胸元をそっと押さえた。


普段より少し大きめのブラジャー。


スカートの下には、黒いオープンクロッチ。


どちらも、自分で選んだ。


「……ほんとに来ちゃった」


少し笑って、莉央はビルに入った。


エレベーターを降り、受付で予約名を告げ、身分証を見せる。


店内へ通された瞬間、莉央は思わず目を上げた。


天井には大きなシャンデリア。


壁際には黒いソファが並び、低いテーブルの上でグラスが光っている。


奥にはシャンパンボトルがずらりと並び、その向こうでタワーのグラスが照明を反射していた。


青や紫のライトがゆっくり色を変えるたび、店全体がきらきらと表情を変える。


「……すご」


思っていた以上に、別世界だった。


挿絵(By みてみん)


莉央はスタッフに促され、ソファ席へ向かった。


最初の一杯を頼み、バッグの中のスマートフォンを確認した。


録音は、もう始まっている。


――あとで、蓮が全部聞く。


そう思うと、急に自分の声まで意識してしまう。


「お待たせしました」


顔を上げる。


立っていたのは、少し小柄な若い男だった。


色白で、輪郭もまだどこかあどけない。


女の子みたいにまつ毛が長く、目元だけ見ると妙に可愛らしい。


莉央と目が合った瞬間、その大きな目がわずかに見開かれた。


「……こんばんは」


声まで少し上ずっている。


――この子、慣れてない。


若い男は、莉央の隣に腰を下ろした。


「俺、悠真っていいます」


差し出された名刺を受け取る。


「悠真くん?」


「はい」


「何歳?」


「二十二です」


「若いね」


莉央が笑うと、悠真もつられて笑った。けれど、その笑顔はまだ少しぎこちない。


「入って長いの?」


「いや、まだ四日目なんです」


「四日目?」


「はい。だから、まだ全然で」


正直すぎる答えに、莉央はまた笑った。


それから少し話すうちに、悠真がこちらを見るたび、視線が妙に定まらないことにも気づいた。


顔を見る。


すぐ逸らす。


また見る。


――かわいい。


莉央はグラスを持ち上げた。


「じゃあ、四日目のお祝いしよっか」


「え、いいんですか?」


グラスが軽く触れる。


挿絵(By みてみん)


悠真の横顔を見ながら、莉央はもう一口飲んだ。


近くで見ると、本当に可愛い。


長いまつ毛。白い頬。緊張すると、すぐ視線が泳ぐ。


――この子に、見せるんだ。


そう思った瞬間、さっきまでとは違う熱が、身体の内側に灯った。


ミッションだからじゃない。


見せたとき、この子がどんな顔をするのか見たい。


莉央はグラスをテーブルに置いた。


「悠真くん、緊張してる?」


「えっ。分かります?」


「分かるよ」


笑いながら、もう少し近づく。


肩が触れそうな距離。


悠真がまた莉央の顔を見る。


莉央はその視線を受けたまま、さらに顔を近づけ、そのまま耳元へ唇を寄せた。


「……乳首、見えるでしょ」


悠真の肩がぴくっと動く。


莉央は少しだけ前かがみになった。


大きめのブラジャーの内側に隙間ができる。


耳元で、もう一度。


「見て」


悠真の視線が、ゆっくり胸元へ落ちた。


莉央は、そのまま耳元で囁く。


「見えたら、乳首見えましたって言って」


「え……」


悠真の顔が一気に赤くなる。


少し間があって。


「……乳首、見えました」


莉央の口元が、ふっと緩んだ。


――一人目、成功。


でも、そこで終わる気にはならなかった。


「悠真くん」


「はい?」


「興奮しちゃった?」


「え、いや、その……」


顔がまた赤くなる。


その反応を見ていると、もっと困らせたくなった。


「乳首、触ってもいいよ」


「えっ」


悠真が完全に固まった。


「ほんとに」


「いや……それは、お店のルールでダメなんです」


「そっか」


莉央が笑った、その瞬間。


「お時間でーす。チェンジ入りまーす」


「あ……」


悠真が名残惜しそうに立ち上がる。


莉央はグラスを持ち上げながら、その背中を見送った。


口元には、まだ笑みが残っていた。


「失礼しまーす」


次に来た男は、悠真とはまるで違った。


少し年上に見える。


髪は短く整えられ、目つきに妙な余裕がある。


座るなり莉央を見て、にやっと笑った。


「こんばんは。玲司です」


「莉央です。ホストクラブデビューです、今日」


「今日?」


「うん。ほんとの初回」


「へえ、全然そう見えない」


「さっきの子、めっちゃ緊張してたでしょ」


「かわいかった」


「あいつ、まだ新人だから」


「玲司くんは?」


「俺は三年目」


「じゃあ、慣れてるんだ」


「まあね。初回の子と話すの好きだし」


「何話すの?」


「その人次第。恋愛とか、彼氏とか。たまに性癖まで」


「性癖まで聞くんだ」


「そこまで話してくれる子、結構好き」


「じゃあ、聞いてみて」


「じゃあ……好きな体位は?」


「いきなりそこ?」


「だって、聞いていいって言ったじゃん」


「じゃあ玲司くんは?」


「俺は後ろからが好き」


「即答なんだ」


「莉央さんは?」


「私は……相手に任せるのが多いけど、上に乗って自分から動くのも好き」


「へえ。それ、意外。もっと完全に任せるタイプかと思った」


「見た目で決めつけてるでしょ」


「してる」


莉央が笑う。


「じゃあ俺は、相手が恥ずかしがるの見るの好き」


「あ、それは分かる。自分が恥ずかしいのも、嫌いじゃないし」


「莉央ちゃん、自分でやるのも好きって言ってたけど」


「うん」


「本当は、やらされる方が好きでしょ」


莉央の指が、グラスの途中で止まった。


「……なんで?」


「だって今、“恥ずかしいのも嫌いじゃない”って言ったとき、一番嬉しそうな顔した」


「してないよ」


「してた」


「Mなんでしょ、莉央ちゃん」


その言い方に、身体の内側がぞくっとした。


さっきまで対等に話していたはずなのに、急に見透かされた気がした。


挿絵(By みてみん)


「……分かっちゃうんだ」


「分かるよ」


「そうなんだよね。縛られたり、叩かれたりすると、すごく興奮しちゃう」


「やっぱり」


「何、その“やっぱり”」


「いや、莉央ちゃん絶対そっちだと思った」


莉央は笑った。


「昨日も、ちょっとやりすぎちゃって」


「何されたの?」


「まだ痕、残ってる」


「どこ?」


「……見たい?」


「見たい」


返事が早くて、莉央は笑った。


莉央は玲司に背を向けると、スカートの後ろだけを腰まで捲り上げた。


そのまま、落としたハンカチを拾うふりをして上半身を折り曲げる。


「ほら。昨日の痕、まだ残ってるでしょ」


「うわ……ほんとだ」


玲司の声が一度止まった。


「ていうか、その下着なに」


莉央は振り返らずに笑う。


「気になる?」


「いや、気になるでしょ。普通そこ開いてないじゃん」


「オープンクロッチっていうの」


「へえ……そんなのあるんだ」


「……お尻の穴も見えちゃってる?」


「莉央ちゃんの可愛いお尻の穴、見えちゃいました」


莉央は振り返らないまま、口元を緩めた。


「ちゃんと見たんだ」


「そりゃ見るでしょ。がっつり丸見えだったし」


莉央はようやく身体を起こし、スカートを戻した。


席に座り直してからも、玲司は楽しそうにこちらを見ている。


「莉央ちゃん、思ってたよりずっとエロいね」


「思ってたよりって何」


「最初、もっと真面目な人かと思った」


莉央はグラスを持ち上げた。


「真面目だよ」


「その下着で?」


「今日は特別」


二人で笑ったところで、スタッフの声が入った。


「お時間です。チェンジ入りまーす」


「もう?」


玲司が少し残念そうな顔をする。


「莉央ちゃん、また話そうね」


「うん」


莉央は笑って手を振った。


「失礼しまーす」


三人目は、最初の二人ともまた雰囲気が違った。


肌がきれいだった。


髪も爪も整っていて、近くで見ると男性というより、美容にかなり手をかけている人だと分かる。


「こんばんは。蒼です」


「莉央です」


「肌、きれいですね」


「そっちこそ。何してるの?」


「結構いろいろ。スキンケアもするし、脱毛もしてる」


莉央は蒼の腕を見た。


「ほんとだ。すごいきれい」


そう言って、指先で前腕を軽くなぞる。


「つるつる」


「でしょ」


蒼が少し得意そうに笑う。


挿絵(By みてみん)


莉央は今度は顔を覗き込み、その頬にそっと触れた。


「顔もきれい。毛穴ほとんど見えないね」


「そこ結構頑張ってるんですよ」


「何してるの?」


「美容液とかピーリングとか。あと脱毛も」


「顔も?」


「うん。全身やってる」


「全身?」


「ほんとに全部」


「へえ……かなり美容好きなんだ」


「私も脱毛は結構ちゃんとしてる」


「どこまで?」


「腕、脚、脇……」


そこで少しだけ間を置く。


蒼が笑った。


「その間はなに」


「……VIOも」


「ああ、そこもやってるんだ」


返しがあまりに普通で、莉央の方が少し拍子抜けした。


「蒼くんも?」


「もちろん」


「私、結構きれいにしてるよ」


「ほんと?」


「うん。かなりちゃんと」


蒼が少し笑った。


「俺、いろんな女性のVIO処理後、見てるからね」


「……そんなに?」


「美容の話になると、見せてもらうこと結構あるよ」


莉央はそこで、少し黙った。


自分から話を振ったくせに、急に恥ずかしくなる。


「じゃあ……見れば、分かるんだ」


「たぶんね」


「きれいかどうか」


「うん」


「……私のも?」


「見せてくれるなら」


「……恥ずかしいな、それ」


そう言いながらも、断らなかった。


「ほんとに、ちゃんとチェックしてくれるんだよね」


「見るよ。見るって言ったじゃん」


莉央は小さく息を吐いて、もう一度だけ周囲を確認した。


「……なんか、急に恥ずかしくなってきた」


「今さら?」


「今さらなの」


莉央も笑った。けれど、頬は少し熱い。


「じゃあ……ちゃんと見てね」


莉央はスカートの裾に両手をかけた。


少し迷ってから、ゆっくり太腿の上まで持ち上げる。


それから、膝を少しずつ開いた。


蒼の視線が下がる。


「……その下着、すごいね」


「オープンクロッチ」


蒼は少し笑った。


「なるほど。しっかり見せてくれるために履いてきたんだね」


その一言で、莉央の頬がまた熱くなる。


蒼は「うん」と答えると、莉央の前にしゃがんだ。


莉央はソファに座ったまま、身体を少しだけ蒼の方へ斜めに向ける。


膝から蒼の顔まで、三十センチほど。


「……近いね」


言ってから、自分で余計に恥ずかしくなった。


蒼は笑った。


「ちゃんと見るんでしょ?」


「そうだね」


莉央は小さく息を吐いて、もう少しだけ脚を開いた。


挿絵(By みてみん)


「じゃ、まずVから見るね」


蒼が少し身を寄せた。


蒼の息が、内腿のあたりにかすかに触れる。


莉央の身体が、ほんの少し強張った。


――近い。


視線だけじゃない。


息まで感じる距離で、見られている。


蒼は本当にチェックするように、視線をゆっくり動かしている。


「うん。かなりきれい。左右も揃ってるし、剃り残しもほとんどない」


褒められると、妙に嬉しい。


「じゃあ、次はIね」


その一言で、莉央の表情が少し変わった。


Vまでは、まだ美容の話だった。


でも、Iは違う。


蒼が少し身体を低くする。


さっきより視線の位置が下がった。


莉央は腰の角度を少し変えた。


膝を開く。


すると、自分でも分かった。


さっきまで重なっていたビラビラが、少しずつ左右へ開いていく。


蒼の視線が、さらに奥へ入った。


――私、中まで見られちゃってるんだ。


顔が一気に熱くなった。


閉じたい。


なのに、閉じなかった。


むしろ蒼が見やすいように、もう少しだけ腰を前へ出した。


内腿に、蒼の息がかすかに触れる。


莉央は唇を噛んだ。


蒼はしばらくIラインを目で追った。


「Iも、すごくきれいに処理できてる。剃り残し、ほとんどないよ」


莉央はほっとしかけた。


でも、蒼はまだ視線を外さなかった。


「それと……」


「なに?」


「色も形も、すごいきれいだよ」


その一言で、莉央の顔がカァっと熱くなった。


――だって私のあそこ、たくさんの女性のあそこと比較されて、品評されてるんだ。


ふいに、妙な想像が浮かんだ。


ずらりと並んだ鮑を前に、蒼が一つずつ顔を近づけて、じっと観察している。


色。形。処理の具合。


そして、その列の中に、自分まで混じっている。


莉央は思わず目を伏せた。


恥ずかしい。


なのに、その想像から逃げられなかった。


「……なんか、すごく恥ずかしい」


「何が?」


「だって私、たくさんの女性のあそこと比較されて、品評されてるんだよね」


蒼が少し笑った。


「まあ、そう言われるとそうかも」


莉央は目を逸らしたまま、脚は閉じなかった。


蒼は最後にもう一度だけ莉央を見て、ゆっくり顔を上げた。


「うん。VもIも、すごくきれい。処理も丁寧だし、かなり整ってる」


莉央はまだ頬を熱くしたまま、小さく笑った。


「……合格?」


「余裕で」


莉央はそこでようやくスカートを戻した。


「こんな評価されると思わなかった」


「見てって言ったの、莉央ちゃんでしょ」


「そうだけど」


二人で笑ったところで、スタッフの声が入った。


「お時間です」


蒼は立ち上がりながら、莉央を見て笑った。


「また美容の話しよ」


「うん。次は普通の美容の話ね」


「それはそれで寂しいな」


莉央は思わず吹き出した。


そのまま会計を済ませ、店を出た。


夜の空気が少し冷たかった。


莉央は歩きながらバッグの中のスマートフォンを取り出し、録音を止めた。


ファイルを確認し、そのまま蓮へ送った。


数分後。


スマートフォンが震えた。


《3項目、確認》


《100点》


《自分から、見てもらう事を楽しめていた》


《ボーナス +10点》


《合計 110点》


莉央は画面を見たまま、小さく息を吐いた。


挿絵(By みてみん)

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