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その19 繋がる者

(19)



 ロダンの休日の足は、暫く自分の働く図書館へと向かっている。非番の日は劇団の練習に行くが、それまでの時間はほぼ、図書館へと向かった。いやそれだけでなく、ロダンは興梠轆轤から貰ったあの資料、高山右近と地下墳墓(カタコンベ)の記事を書いた調査センターにまで足を運び、話を聞いた。

 聞けば親切に教えてくれた。調査は平成十年夏に行われた高槻城の調査だったが、その調査で木棺墳群が見つかり、その墓からロザリオが見つかったという物だった。

 ロダンは聞き終え、駅へ向かった。向かいながら聞いたことや図書館で自分が調べたことに試案を巡らす。それは大阪の北摂という土地柄の事だ。

(自分は学者じゃないけど、それでもまだ知らないことがあるものだ。やはり人が生きて歴史を紡いできた土地だからこそだろう。まさかまさかあのザビエルの絵画がこの土地の隠れキリシタンの家から見つかっていたなんて…受験であの絵を知っているけど、実際はその出所は知らなかったし、このなんちゃって大阪の北側が、キリスト教の熱心な土地――いや、正にキリシタンの国だよな。そんな土地は…やはり高山右近という人物は中々の人物だったのだな)

 駅に着くと切符を買う。それからホームで電車を待った。数分すると電車が来る。ロダンはうーんと深く頷くと、阪急電車へ乗り込んだ。

(なら…光秀と右近を結ぶものが出来た訳だ)

 ロダンは揺れ動く車窓から北摂の山並みを見る。冬の山に情感は浮かないが、ロダンには別の情感が湧く。

(敵味方に分かれても…宗教が二人を強くつないで…いる。光秀の娘ガラシャはキリシタンだ…)

 ゴトンと電車が揺れてドアが開く。淡路と言う駅に着いたのだ。そこで乗客の乗り入れがある。ロダンは此処では降りない。それは十三まで行くためだ。

 再び電車がゴトンと揺れ、動き出す。乗客に外国人が混じっている。インバウンドで最近増えてきている為だろう。電車は十三を抜ければ淀川を渡り、大阪北の中心街梅田へ向かう。自然人が増える。

 吊革を持ちながら、ロダンは思案している。

(そして明智と桔梗、薔薇も繋がる。となれば必然的にこの繋がりの線上に浮かぶ卍楼の釣鐘は、――キリスト教、ということか…)

 電車がやや斜めになる。それにつられて斜めのロダンが顔を上げた。

(ならば…薔薇騎士団の『薔薇』と、卍楼の『薔薇』は繋がる…のか…)

 …な、と思った瞬間、顔を上げたロダンの面前に黒人の顔がぬっと出てきた。

「あ、久しぶりです」

(え…!?)

 思わず驚くロダンの顔が激しく揺れた。電車が十三駅に着いた為だった。

 ロダンは驚いて顔を上げたまま、ホームに降りた。黒人も同じようにロダンの後に付いて降りる。そして降りると顔を上げたままのロダンをポンと叩いた。

 ロダンはその拍子に顔を戻すと黒人を見たまま、首を傾げる。全く記憶が無い。誰だろう、そんな目を向けた時、黒人が頭を下げた。

「いやぁ、この前、占ってくれたお陰で無事探し物が見つかりそうです」 

 とても流暢な日本語だった。外国人独特の訛りが無い。

(え?)

 と、驚くロダンを連れて黒人と共に駅を出た。しかし、ロダンには全く、この黒人を占った記憶は…、

(ん?)

 そこまで記憶を巡らすと、あるとすれば…と思った。

 そう思った瞬間、黒人がロダンとは別の方向へ声を掛けた。

「はぁい、閻魔ちゃん!」

(何、閻魔!)

 ロダンが思わず振り返る。するとそこに自分が良く知る『閻魔』が立っていた。黒人はロダンへ向き直りウィンクを送ると、ロダンへ言った。

「探し物見つけたんだよ!」

 言うなりスタスタと歩き出す。そして閻魔こと猿渡燕の肩に手をのせると卍楼の方へ向かって行った。

 ロダンは分からない。卍楼へ行かなかったこの期間に何があったのか?そう思っているとスマホが鳴った。見れば閻魔からのチャッとだった。


 ――来なよ、ロダン。ザクリーがロダンと吞みたいらしいからさ。


 ロダンはぽかんとしていたが何よりもいかなければ、事態が呑み込めないのが分かっていたから、唯、二人の後を追うしかなかった。


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