その9 儂の持論
(9)
…長かった。
店の外へ出た時は既に日が暮れていた。そんな疲れた感のあるロダンの去り際に轆轤は言葉を掛けた。
「長話の内容は儂の持論だ。所々無理な論点もあるが、しかし今渡した資料と共に西願寺の事と共に調べてゆけば探している『薔薇』に当たる可能性があるかもしれない。ロダン、ええか?歴史は小説よりも『奇』なるものを含んだ大いなるミステリーだ。何も文学だけが永遠に独占して抱きしめ続けるものではない。さて、じゃぁ、また会おう、ロダン。儂は話したりていないことがまだ沢山あるからな、ふぇふぇふぇ」
奇美な笑い声を聞き終えるとロダンは後ろ手に木戸を閉めた。
閉めるとぶるっと身震いした。
それは冬の外気に触れたせいか、それとも、もしかするともう一度、この古書店を訪れないといけないかもしれないという予感の所為か。だが、ロダンはランドナーのハンドルを押しながら思った。
(でも意外と収穫があった、…地下墓地に高山右近…、そして…)
ロダンは思考を切った。
何故ならこれからペダルを踏み込んで、夜の街へ駆けださなければならないからだ。
強くペダルを踏み込み、自転車を漕ぎ出すロダン。
(ここからは銭湯の湯船に浸かりながら、その事は考えよう…暗い夜道で考えながら走ると危ないし、事故の元やからな)
だが、そう心で思いながらも、街の中へ漕ぎ出したロダンは大きく首を傾げた。
――しかし、そんなことがあるのだろうか、と。




