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断罪された妖精の愛し子に二度目の人生を  作者: 森永 詩


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第285話 決戦②

 大聖堂から噴水のある広間までの距離は遠くない。

 何度も通った事のある道をイザーク様と共に進んで行く。全力疾走とはいかずとも体力を温存しながら駆け足で向かって行った。


「アイリーネ様!あちらを――」

 イザーク様の指差す方へ視線を向けると暗闇の空を白い物体が旋回しているのが見えた。


「あれは……シリルの鳩?」

 

 黒い空の中、白い鳥は異質であった。

 しかし、どれだけ空が黒く染められようと自分は染まるつもりはないのだと、そう訴えるように鳩は堂々と羽ばたいていた。

 旋回していた鳩もアイリーネ達に気付いたのか真っ直ぐにこちらに向けて降下して来た。


「アイリーネ?聞こえる?」

 鳩から聞こえてくるのはシリルの声。

 鳩はアイリーネの目の高さでゆっくりと羽ばたきながら話しかけて来た。


「聞こえるわシリル。いったいどうしたの、その姿は――」

「うん、急ぎなんだ。良いかい?よく聞いてね。コンラッドが人の中に住まう闇に働きかけて闇に染めようとしているんだ」

「ええっ!シリル私はどうしたらいいの?何をすればいいの?」

「落ち着いて、アイリーネは計画通りコンラッドを倒すんだ。コンラッドがいる限り浄化しても同じ事の繰り返しだからね。ただし、空から様子を見たけれど問題が起きてるんだ」

「問題?」

「王城とジャル・ノールド教会で乱闘が起きている。コンラッドの闇に染まって暴れている人達だよ」

「王城とジャル・ノールド教会……」

「うん………」


 王城にはユーリがいる。

 ユーリは出勤だから王城に、ジャル・ノールド教会にはお父様がいる。元々、コンラッドが現れたら合流する予定だった。

 だけど……


「ユーリもお父様も合流は難しいかも知れないと言うことね?」

「うん」

 シリルの声は浮かない、シリルのせいではないのに。


「分かったわ、ありがとうシリル」

「僕はこのまま上空から見てるから何かあれば声を掛けるからね」

 わざと明るく言ってみる。シリルもそれに続いた。

 言いたい事を言い終えたから鳩は再び空へと帰って言った。白さが一段と映えていて、そこに鳩がいて見守っているのだと少し安心する。


「アイリーネ様」

「イザーク様、想定していたよりも苦しい戦いになるかも知れませんね」

 ユーリとお父様が合流出来ない。これは二人だけではなく王宮魔術師やジャル・ノールドに属する者の援護は難しいという事だ。


 予定通りいかないとしても戦わないという選択肢はない。そして、負けるつもりもない。



 アイリーネは拳に力をこめた。 


「アイリーネ様、何があろうと私が御守りします」

「イザーク様、何があろうとはダメです。皆で生存する、これが目標ですからね」

「………はい、そうですね」

 

 こうでも言わないとイザーク様は自分の命まで私に捧げてしまう。私はそんな事望んでいない、だから誰一人として失わない。それが私の望みだ。


 イザーク様はきっと納得はしていないだろう、それでも私の意志を尊重してくれた。


「では、参りましょう」

「はい、イザーク様!」


 イザーク様が先導して、後に続いて行く。


 闇の中でもイザーク様の聖騎士の白い制服がハッキリと見える。鳩と同じく闇に染まらないのだなとそう感じた。


「道しるべ……」


 私が迷わないように導いてくれる、まるで道しるべのようだと小さく呟いた。イザーク様には聞こえていないのだろう、こちらを振り返る様子はない。

 逞しい背に先導され、目的地を目指した。



 いつもなら活気がある通りは静まり返っていた。

 一般の人の姿はなく、一定間隔に配置された聖騎士や聖女、聖人の姿が見えた。聖女達の中には数は少ないものの防御壁を展開できる者が存在する。シリルやコーデリアに比べてしまうと力の差は歴然であるが、それでも小規模の防御壁なら展開する事が出来る。

 

 聖女達は噴水の広間に向けて防御壁を展開し、一般人の生活の場である家や商店などを守っている。

 以前のコンラッドであれば防御壁の突破もあり得たのだろうが、今の魔力ではその可能性は少ないだろう。

 すでに空を黒く染め王都に住む人達の心に働きかけるという大規模な魔力を使用しているのだから。



「頑張って下さい!」

「応援してます!」

「こちらは任せて下さい」

 聖騎士達にすれ違いさまに言葉を掛けられて、私は頷きながら通り過ぎて行く。

 非常事態の時のそれぞれの行動をあらかじめ決めていたから落ち着いて行動出来ていて頼もしく思う。



 見慣れた街並みに聖騎士と聖女の白い制服が日常を思い出させるものの、一般人が存在しないという非日常がどこか現実ばなれして見える。


「でも、そうではない。これは現実なのよ!」

 自分を納得させながら、しっかりしなくては、と叱責しながらようやく噴水が目に入った。



 噴水の広場が見えて来た、もちろんコンラッドの姿も。こちらから目視出来るという事はあちらからも見えていて、コンラッドは大きく両手を掲げていた。



「随分と遅いお出ましですね。お待ち申しておりました」

 

 前に見たコンラッドとは違い辛うじて人の姿を模ってはいるが、影と同化しておりその身体は宙に浮いていた。

読んでいただきありがとうございました。

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