第3話:繋がる心と、ミリーの秘密
前回のラスト、冷え切った異世界の食卓を前に、元・天才開発者としての僕の血(とエンジニアの炎)が思いっきり沸騰したわけですが……。
どうやらその熱すぎる想いが、僕の中に眠っていた異世界チート(?)な能力を呼び覚ましてしまったようです。
喋れないはずの子狐と、おっとり怪力看板娘。
2人だけの「ひみつの作戦会議」が始まります!
(食材をいつでもキンキンに冷やして新鮮なまま保存できる、世界初の『魔力式冷蔵庫』を作ってみせる!)
僕は冷えたスープを前に、心の中で熱くエンジニアの炎を燃え上がらせていた。
ミリーの困り顔を笑顔に変えたい。前世で孤独に死んだ僕を救ってくれた彼女のために、この知識のすべてを捧げてやる。
そう強く願った瞬間――僕の体の中で、ミリーからもらった『ルクス』という名前に呼応するように、不思議な魔力がピピッ、と大きく跳ね上がった。
その魔力は、僕の頭からミリーの頭へと、目に見えない光の線のようにスーッと繋がっていく。
(――よし、だったら僕の知識で、最高の冷蔵庫を作ってあげるよ、ミリー!)
決意を込めたそのセリフが、なぜか頭の中で響いた。
……いや、違う。僕の頭の中だけじゃない。
「ひゃぁっ!? いま頭の中に直接、可愛らしい男の子の声が……!?」
ミリーが目を丸くして、持っていたおぼんを落としそうになりながら僕を見つめている。
(えっ? あ、ミリー、僕の声聞こえるの!?)
「聞こえますわ! ルクスちゃん、あなたがお話ししてくれているのですか……!?」
(すごい、人間の言葉は話せないけど、ミリーの頭の中に直接声を届ける『念話』ができるみたいだ! 驚かせてごめんね。でもこれで、ちゃんとミリーとお話ができるよ!)
「まあ……! ルクスちゃん、とってもすごいですわ〜!」
ミリーは怖がるどころか、両手を頬に当てて「神様の贈り物ですわ〜」と大喜びしてくれた。
受け入れるのが早くて本当に助かる。
意思疎通ができるようになったところで、僕はさっそく本題を切り出した。
(ねえミリー。さっき食材が腐っちゃうって困ってたよね。このお店、お昼時なのに他にお客さんがいないのも、その暑さのせい?)
僕が尋ねると、ミリーは少し寂しそうに微笑んで、厨房のさらに奥にある扉を見つめた。
「……そうなのですわ。実は、私のお母様が原因不明の重い病気で、あの奥の部屋でずっと寝込んでしまっていまして。お父様は、お母様の病気を治す手がかりや、高いお薬を買うためのレア食材を求めて、遠くのダンジョンへ長期の遠征に出ているのです。だから、お母様の看病もありますし、夏場は食材もすぐにダメになってしまうので、この『ひだまり亭』は今、ずっと休業しているのです...。」
ミリーの口から語られた、お店の切実な秘密。
おっとり笑っているミリーが、実は一人で寝たきりのお母様を看病し、お父様の帰りを健かに待ち続けていたのだ。
(そっか……。お母様のためにも、ミリーのためにも、やっぱり新鮮なご飯は絶対に必要だよね)
「はい…。お母様に新鮮で美味しいものを食べさせてあげたいのですけれど、この暑さではどうしても…」
(任せて。僕、実は『道具作り』の天才的な知識を持ってるんだ。食材をいつでもキンキンに冷やして、絶対に腐らせない魔法の箱――『冷蔵庫』を作れるよ。それを作るための材料、どこかにないかな?)
「魔法の、冷蔵庫……? まぁ、そんなものが作れるのですか!? 材料でしたら……そうですわ! お父様が遠征のついでに拾ってきて、『何かに使えるかもしれない』って物置に放り投げてあった、珍しい石やガラクタがたくさんありますわ〜!」
(それだ!!)
凄腕の料理人兼冒険者のお父様が残した物置。そこにはきっと、地球の最新テクノロジーを異世界で再現するための、とんでもないお宝(レア素材)が眠っているはずだ。
「さあ、ルクスちゃん。物置へご案内しますわ〜!」
ミリーは僕をひょいと抱き上げると、おっとりとした足取りで、お店の裏手にある物置へと向かった。
家族を救い、思い出のお店を再開させるための、僕たちの初めての共同開発が今、幕を開ける――。
第3話をお読みいただきありがとうございました!
前回のルクスのエンジニア魂が魔力と共鳴して、ついにミリーとの『念話』が開通しました!
そして明かされる、病気のお母様と遠征中のお父様の秘密……。
次回、お父様の物置でルクスがとんでもないレア素材を発見します!お楽しみに!




