出どころ不明な資金
中央には二つのレジ。
左には地域限定のぬいぐるみやストラップ、右側にはお菓子や特産品が並ぶお土産コーナーにて。
「――えっ?」
沙也加は、そこで固まっていた。
想像していなかったと言えば嘘になる。
けれど、まさか旅の始まりだというのに。
シゴデキたぬきだというのに、こんなことになるなんて――。
沙也加が目にした光景は――。
「クキュ♪ なかなかにいい買い物だったポン♪」
小麦色の尻尾をゆらゆら――レッサー君グッズを抱えて、足取りの軽いたぬきちであった。
(た、たぬきちぃ〜! お土産は帰りに買うんだよ〜!)
胸の内で間違いを叫ぶが、そんなこと口に出来るわけもなくて、沙也加はあとをつけることにした。
☆☆☆
「……ま、まだ買うんだ……」
後をつけたのはいいが、たぬきちのなかなか終わらないサービスエリア散策に沙也加は疲れを見せていた。
そして、ふと思った。
そういえば、なぜあんなに買い物が出来るのだろう?
一体、どこからお金が出てくるのだろう。
確かに家計のやりくりをお願いしている。
だが、だからといって、無駄遣いできるほどではない。
(たぬきちも言ってたもんね……)
思い出すは、毎年の年末恒例となっているイベント。
【江ノ上家収支報告会】であった。
収支報告会となってはいるが、要は「一年色んなことあったねー」って忘年会的なやつでもある。
が、そこでたぬきちは言っていたのだ。
『いくら余裕ができたからといっても、無駄遣いは良くないポン! 調子に乗ると国庫の予算は消えていくポン!』
(ん……? あれ? レッサー君のエンディングが流れている……?)
そういえば、たぬきちと同じようなことを、エンディングロールに合わせてテレビの中のレッサー君が口にしていたような気もして――
(いや、そんなことよりもだよ!)
大事な部分を思い出すことなく、
「た、たぬきち!」
沙也加は勢いのまま、その名前を叫んでいた。
尾行大失敗である。
けれど、どうやらたぬきち本人は、その尾行に気付いていたようで、
「ご主人、用があるなら、普通に声を掛ければいいのにポン……というか、こういう公共の面前で大きな声を出すのは良くないポン!」
TPOを弁えたお説教モードになっていた。
いつもなら、いつもの沙也加ならここで食い下がって、しょんぼり、そしてそれをたぬきちが宥めるといった流れになっていた。
が、今回は違った。
(お金のことだもんね! ちゃんとしないと!)
ちゃんとしないと……? またもや大きなブーメランが沙也加に飛んできそうな発言である。
しかし、沙也加はそれをひらりと華麗に躱して、気になっていた疑問を投げかけた。
「いや、それもそうだけど……ちょっとお金使い過ぎていない?!」
少し……いや、たぬきちのマネーロンダリングを聞き出すには、かなり弱いような気もするけれど、これが沙也加なのだ。
だが、お忘れではないだろうか?
相手はたぬき、それもただのたぬきではないということを――。
沙也加の問い掛けに、たぬきちはククッと鼻を鳴らすと、不敵な笑みを浮かべて、
「ご主人、僕がなにも考えずにお金を使うと思っているポンか……?」
たぬき型のポシェットから、レッサー君のケースに入ったスマホを沙也加に見せた。
「――へっ?」
表示されていた画面を見て固まる沙也加。
そこに映し出されていたものとは――。
「クキュ♪ 全部ポイント払いポン♪ ちゃんとポイ活して貯めていたポン!」
電子決済アプリ【ティティ】であった。
なんとこのシゴデキたぬき、クレジットに電子決済だけでなく、そのポイントまで使いこなしていたのだ。
末恐ろしいたぬきである。
ここまで異論反論の余地がないアンサーを受けてしまっては、三年間でパワーアップした沙也加でもなにも言えず、
「えっ、あ、そ、そっかー……うん!」
苦笑いを浮かべるだけであった。




