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江ノ上さんの同居人は、犬でも猫でもなくて、シゴデキたぬきです!  作者: ほしのしずく


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95/100

出どころ不明な資金


 中央には二つのレジ。

 左には地域限定のぬいぐるみやストラップ、右側にはお菓子や特産品が並ぶお土産コーナーにて。


「――えっ?」


 沙也加は、そこで固まっていた。


 想像していなかったと言えば嘘になる。

 けれど、まさか旅の始まりだというのに。

 シゴデキたぬきだというのに、こんなことになるなんて――。

 沙也加が目にした光景は――。

 

「クキュ♪ なかなかにいい買い物だったポン♪」


 小麦色の尻尾をゆらゆら――レッサー君グッズを抱えて、足取りの軽いたぬきちであった。


(た、たぬきちぃ〜! お土産は帰りに買うんだよ〜!)


 胸の内で間違いを叫ぶが、そんなこと口に出来るわけもなくて、沙也加はあとをつけることにした。



 ☆☆☆



「……ま、まだ買うんだ……」


 後をつけたのはいいが、たぬきちのなかなか終わらないサービスエリア散策に沙也加は疲れを見せていた。


 そして、ふと思った。

 そういえば、なぜあんなに買い物が出来るのだろう?

 一体、どこからお金が出てくるのだろう。


 確かに家計のやりくりをお願いしている。

 だが、だからといって、無駄遣いできるほどではない。


(たぬきちも言ってたもんね……)


 思い出すは、毎年の年末恒例となっているイベント。

 【江ノ上家収支報告会】であった。


 収支報告会となってはいるが、要は「一年色んなことあったねー」って忘年会的なやつでもある。


 が、そこでたぬきちは言っていたのだ。


『いくら余裕ができたからといっても、無駄遣いは良くないポン! 調子に乗ると国庫の予算は消えていくポン!』


(ん……? あれ? レッサー君のエンディングが流れている……?)


 そういえば、たぬきちと同じようなことを、エンディングロールに合わせてテレビの中のレッサー君が口にしていたような気もして――


(いや、そんなことよりもだよ!)


 大事な部分を思い出すことなく、

 

「た、たぬきち!」


 沙也加は勢いのまま、その名前を叫んでいた。


 尾行大失敗である。


 けれど、どうやらたぬきち本人は、その尾行に気付いていたようで、


「ご主人、用があるなら、普通に声を掛ければいいのにポン……というか、こういう公共の面前で大きな声を出すのは良くないポン!」


 TPOを弁えたお説教モードになっていた。


 いつもなら、いつもの沙也加ならここで食い下がって、しょんぼり、そしてそれをたぬきちが宥めるといった流れになっていた。


 が、今回は違った。


(お金のことだもんね! ちゃんとしないと!)


 ちゃんとしないと……? またもや大きなブーメランが沙也加に飛んできそうな発言である。


 しかし、沙也加はそれをひらりと華麗に躱して、気になっていた疑問を投げかけた。


「いや、それもそうだけど……ちょっとお金使い過ぎていない?!」


 少し……いや、たぬきちのマネーロンダリングを聞き出すには、かなり弱いような気もするけれど、これが沙也加なのだ。


 だが、お忘れではないだろうか?

 相手はたぬき、それもただのたぬきではないということを――。


 沙也加の問い掛けに、たぬきちはククッと鼻を鳴らすと、不敵な笑みを浮かべて、


「ご主人、僕がなにも考えずにお金を使うと思っているポンか……?」


 たぬき型のポシェットから、レッサー君のケースに入ったスマホを沙也加に見せた。


「――へっ?」


 表示されていた画面を見て固まる沙也加。


 そこに映し出されていたものとは――。


「クキュ♪ 全部ポイント払いポン♪ ちゃんとポイ活して貯めていたポン!」


 電子決済アプリ【ティティ】であった。

 なんとこのシゴデキたぬき、クレジットに電子決済だけでなく、そのポイントまで使いこなしていたのだ。


 末恐ろしいたぬきである。


 ここまで異論反論の余地がないアンサーを受けてしまっては、三年間でパワーアップした沙也加でもなにも言えず、


「えっ、あ、そ、そっかー……うん!」


 苦笑いを浮かべるだけであった。

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